黒瀬くらげ

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願いごと




「はぁ...疲れた」

私は今、学校帰りに神社で休憩してる。
こんな場所に神社があったのは知らなかった。
放課後はいつも友達と遊びに行ってたから
知らなかったんだと思う。
この神社...日陰もあるし、今日は風が気持ちいいし
割と好きかも。
学校からも家からもそこまで遠くないし。

「おねぇちゃん」

この神社、これからも来ようかな。
人も少ないし。

「おねぇちゃん」

そういえば明日数学のテストじゃん。
えーだるいな。

「おねぇちゃん!!」

「え!?」
誰?女の子?
さっきからいたっけこんな子。
でも...着物?服装がなんか和って感じ。

「えっ...と......迷子?大丈夫?」
「何言ってんの?」
「へ?」
「おねぇちゃんが迷子じゃないの?」
「え?私はただ休憩しに来ただけで...」
「!...じゃあ僕と遊んでくれるの!?」
「え...僕?男の子?てか遊ぶって何―」
「僕は女の子だよ」
「そっか...変な子だね」
「僕に向かって変な子とか失礼だぞ」
「あー、うん」
やっぱり変な子だな。なんでそんな服きてんだろ。
いや、その前に名前とかまだ知らなかった。
「ねぇ、君の名前は?」
「僕の名前だって?」
「え、そう...だけど」
「うーん...わかんないなぁ」
「え?どういうこと?」
「あー、わかった!!「神様」ちゃんって呼んで!!!」
「神様...ちゃん?」
「うん!!」
「え...何?え?どういう...」
いや、子供だし...遊びに過ぎない。
さっき言ってた 遊ぶ ってこれのことなんかな。
「あー...おけ、神様ちゃん」
「なぁに?」
「さっき言ってた遊ぶってどーゆーのなの?」
「あー...僕、暇だったんだよね」
「そーなんだ」
「この神社...人が来なくてさ、すごい暇だった」
「あー、なんかして遊ぶ?」
どうせ鬼ごっことかで満足するっしょ。
まぁ色々気になるところはあるけど、
この子なりの設定とかなんかな。
まぁいい。
「ねーねー神様ちゃん」
「んー?」
「暇ならさ...お姉ちゃんと遊ぶ?」
「え!遊んでくれるの!?」
「もちろん」
「やったー!!」
「じゃあ、鬼ごっこか隠れんぼどっちが――」
「じゃあおねぇちゃんの名前聞いてもいい?」
「え?」
「名前」
「あ...あぁ、私は 水谷 凛 」
「みず......えーと」
「凛」
「りんちゃんね!!」
「そーそー」
「僕は神様ちゃんだよ!」
「うん、それさっき聞いた」
「じゃあ遊ぼう!」
「んじゃあ鬼ごっこか隠れん―――」
「りんちゃん」
「へ?」
「りんちゃんは...何か「願いごと」ある?」
「え...っと、まぁ一応あるけど」
「じゃあそれ、僕に教えて」
「なんで」
「だって...遊んでくれるって言ったじゃん」
「私の願いごとをバカにする気?」
「願いごとを叶えてあげる」
何言ってんのこの子。
いや、でもただの子供。
適当にあしらっとけば別に問題はない。
「あー、えーと...私の願いごとは......」
願いごと なんだろう?
あんまり考えたことなかった。
友達とは上手くやっていけてるし、
家族とも仲は良いし。
勉強も意外と出来てるし。
なんだろ。
あ、あれかも。
「あー、彼氏が...欲しい」
「かれし?」
「うん」
「えー、そんなのいる?」
「いるよ、てかめちゃ大切でしょ」
「なんで?」
「イチャイチャとかしたいじゃん」
「はぁ...えー、誰でもいい?」
「ダメに決まってんだろーが」
「えー?ダメなの?」
「ダメだよ」
「じゃあどんな彼氏が欲しいの」
「高身長でイケメンで優しくて、私のこと―――」
「そんなのいなくない?」
「えー...神様なんだから、どーかお願いしまーす」
「...もう、願い叶えないよ?」
「あ、別に良いよ」
「僕怒った」
「あーあ怒っちゃった」
「りんちゃん、神社の中...1回見直してきて」
「え?神社の中?なんで」
「色々書いてあるから探してきて」
「何を?」
「自分で考えて」
あーあ、神様怒っちゃったよ。
しゃーない、めんどいけど探すか。


一通り神社の中を探してみた。
そしたら、木でできた看板みたいなものに
書いてあった。


叶神(かなえがみ)

叶神は人の願いごとを叶える
願いごとが叶うのは
叶神が認めた者だけ
叶神を信じない者は願いごとが
叶えられない
叶神に認められた者はいるが
そう簡単に願いは叶わないと言われていた


スマホでも調べてみた。
そしたら、大切な情報が出てきた。

叶神に願いごとを聞かれたら、まず素直に答える。
願いごとの前に名前を聞かれたらしっかり答える。
(苗字か名前どっちかが伝わっていれば問題ない)
願いごとを叶えてあげる と言われたら。
叶うまで叶神に付き合わなくてはいけない。
願いごとは叶神に認められた人のみ叶う。
叶神に認めれるにはまず叶神を信じること。
稀に、叶神に嫌われることもある。
嫌われたら願いごとは叶わず、
叶神が怒っている状態だとその者に災いが起きる。
叶神に嫌われても大丈夫なのは1回目のみ。
2回嫌われたら、叶神はその者に災いを起こす。
1回嫌われたらまず自分の情報を叶神に話すべき。
大体は満足して機嫌をなおすと言われている。

これから、色々わかったことがあった。
とりあえず、もう叶神の機嫌をそこねないように。
満足するまで私の情報を話そう。


「神様ちゃーん」
「......」
まだ怒ってる。
「ねーねー話そうよ神様ちゃん」
「何を」
「私のことについて」
「!?...いいの?」
「うん」


それから私の家族のこと、友達のこと、
学校のこととか街のことをいっぱい話した。
叶神の機嫌は戻ったみたい。
でも、未だによくわからない。
本当にこの子が叶神なのか。
ただの子供じゃないのか。


あれから1週間ぐらい
神社に行って叶神と話してた。
学校帰りに神社に行くといつも待ってる。
そういえば、どうやったら願いが叶うのか
具体的な内容、知らなかった。
私は、そもそも叶神に認められてるのか。
認められたあと、どうやって願いが叶うのか。
知らないことが多すぎた。


いつものように学校帰りに神社に寄った。
いつも通り鳥居をくぐり抜けて
いつも座ってる石の方に歩いた。
そこにはいつも通り叶神が...

そこに叶神はいなかった。
どこを探しても、叶神どころか
人っ子一人いなかった。

私は認められなかったの?だったら災いが起きる。
早く叶神を見つけなきゃ。

私は神社以外も探すことにした。
神社から街への階段を駆け降りて、
走って街に.........

目の前が真っ暗になった。
何も見えない。
体が痛い。何これ。
私...ひかれたの?
最後、クラクションが聴こえた。
急いでて信号無視しちゃったのかな。
痛いなぁ。私...何を間違えたんだろ。
あ...死ぬな。これ。


叶神に認められるにはまず叶神を信じること



「僕を信じないからだよ」

りんちゃん。1回目は嫌われちゃったね。










あーあ。暇だなぁ。
誰か、遊びに来ないかなぁ。

あれ...学生かな?
ちょっと近く行こーっと。

「はぁ...疲れた」

あはは。なんだか懐かしいな。

「おねぇちゃん」
「...」
「おねぇちゃん」
「...」
「おねぇちゃん!!」
「え!?」
あはは。面白いなぁ。
「えっ...と......迷子?大丈夫?」
「何言ってんの?」
「へ?」

「君が迷子なんだよ 水谷 凛ちゃん」

「なんで私の名前......なんで...」
「僕神様だからねぇ」
「神様...?」
「そう」
「凛ちゃん」

願いごとを叶えてあげる













END

5/4/2023, 10:57:20 PM