「○○っていっつも能天気だよね」
「それな、絶対嫌なこととかなさそー」
「え、わかる、泣かなそう」
「私が泣くわけないじゃん、泣かないよー」
友達の前では平然とそんなこと言ってるけど、本当はめっちゃ泣きます。泣き虫です。ああでもしないと私のキャラが保てないんです。みんなの前では能天気で何も考えていないおバカキャラを演じてます。本当はそんなことしたくない。でも、演じないと友達がいなくなります。
「そんな友達、ほんとに友達って言える?」
そんなこと言わないでください。もう泣きたくないので。
死ぬのが怖いのは当たり前。それなのにこいつは、
「お前は怖がりだ」
ってバカにしてくる。
「じゃあ何が怖いの?」
と私が聞くと、笑いながら答えた
「お前がいなくなることかな」
その目には涙が浮かんでいた。
「お前がいなくなったら俺、これからどうしていけば…」
「あんたが泣いてどうすんのよ。てゆうか、あんたに怖いものなんてないと思ってた」
そう私が笑いながら言うと
「うるさいな、好きなんだからしょうがないだろ」
と言われた。私の旦那さんは不器用すぎる。
これじゃあ、死んでも死にきれないじゃん。
「神様がいらない星を捨てるから流れ星になるんだよ」
「でもさ、お星様は亡くなった人の産まれ代わりじゃないの?」
「うっ…」
妹をちょっとからかってやろうと思っただけなのに反論されてしまった。
「じゃあさ、私も死んじゃったらお星様になって神様に捨てられちゃうの?」
妹は泣き出してしまった。これじゃあ俺が泣かしたみたいじゃん。すると母さんが、
「たしかに亡くなった人はお星様になるよ。でもね流れ星は捨てられてるんじゃないの。神様が綺麗で美しいお星様を大事に宝箱の中にしまっていたら、宝箱の中に入り切らなくなってお星様が溢れたからなんだよ。だから、いらないお星様なんてないの。」
母さんがそう言うと妹はニコニコしていた。
それは安らかな瞳だった。
3ヶ月前まではあんなに元気で、毎朝元気に「いってらっしゃい」。帰ってくるとにこやかな表情で「おかえり」。でも俺は反抗期だったから必要最低限の会話しかしなかった。
でも、3ヶ月前のあの日、俺がいつも通り帰ってくるとお袋が倒れてた。末期癌だった。
俺は自分に腹が立った。俺がもっとお袋のそばにいてあげてれば、お袋ともっと会話してあげてれば、お袋の変化に気づけてたかもしれない。でも、そんなタラレバ今更遅いんだよ。
今まで女手一つで俺の事を育ててくれたお袋に恩を仇で返すような真似をした。お袋はこんな薄情な息子で幻滅してるだろうな。
ベッドに寝ているお袋の手は俺よりも小さく、細く、青白かった。こんなになるまで俺は気づけなかった。そう思うと自然と涙が流れた。やっぱり俺にはお袋しかいなかったんだ。お袋の小さな手を強く握りしめるとお袋は目をゆっくりと開けた。
「なに泣いてんのよ」と言いながら優しく微笑んだ。そう言うとお袋は静かにまた眠りについた。
俺が最後に見たのはお袋の安らかな瞳だった。
寝る時も
オムツを変える時も
ご飯を食べる時も
写真を撮られる時も
登下校の時も
どんな時も
双子だから隣にいるのが当たり前
だからさ
彼氏が出来て
結婚して
子供が生まれて
歳をとっても
最後まで隣にいるのは自分の片割れだと思ってた
なのに
なんで先に行っちゃうの
私を置いていかないでよ
ずっと一緒って言ったじゃん