私は何でもないフリをするのが
下手くそだ。
窓口でお客さんに理不尽なことを
言われてはへこむ。
何よ こんなの日常茶飯事よ。
気にしない。
って言って平静を装っているが
動揺してる。
家で落ち込むことがあったら
家族にばれる。
「どうしたの?何かあった?」
聞こえないフリをして家事をするが、
顔は語っている。
私は何でもないフリができない。
正直者だから。
それを長所だと思うことにする。
#277
子供は気まぐれです。
今日一緒に遊んだかと思うと、
次の日は別のお友達と遊んでいる。
今日は美奈子先生が
好きって言ってるけど、
明日はさゆり先生が
好きって言うかも。
昨日ブロックで遊んだでしょう
昨日の続きをしようよ。
そう言っても今日は絵を描いて
私の声は聞こえない。
私のことを仲間だと言っていたのに。
しょうがないな。
期待されて裏切られて
子供の心は七変化。
#262
あっくんの弟は2歳です。
生まれた頃はちっちゃくて、こわれそうで、ふれるのも怖かったけど、
今では、あっくんといっしょに遊びます。
今もお昼ごはんを食べ終ったので
お着替えをします。
「あっくん、こうちゃんの
お着替え、手伝ってあげて」
お母さんが食事の片付けをしながら
言いました。
あっくんは、お口をタオルでふいて、急いでこうちゃんのところにかけつけました。
こうちゃんは、ケチャップで汚れたズボンをぬいでいます。
最近は両手でゴムのところをつかんで
下に下げるのが上手になりました。
今度はウサギの絵がかいたズボンを
はきます。
「それじゃあ 逆さまだよ」
こうちゃんは足が出るところからはこうとしていました。
あっくんは違うと言って引っ張りました。
こうちゃんは怒り、そして泣いてしまいました。
お母さんがかけつけます。
「あっくんありがとう
教えようとしたよね」
お母さんが正しくはかせて今は
おもちゃに夢中です。
「今度はあっくんのお着替えしましょうね。あら、肌着の袖の部分が中で
くるんくるんってなってる」
お母さんはあっくんの腕をまくりあげ
肌着をつかみ引っ張ります。
あっくんはこれが大好きです。
この時だけはお母さんはあっくんだけを見てくれます。こうちゃんもいません。あっくんだけのお母さんです。喜んでもう片方の腕も出します。
「これで寒くないね」
大人になったあっくんは片方の袖を
自分で引っ張ります。
引っ張る度に思い出す
寒い日の遠い思い出です。
#254
明日は楽しい遠足。
ワクワクしてる。
300円分のお菓子も準備した。
「お母さん、明日は早く起こしてね」
夕飯の片付けをしているお母さんに
大きな声で言った。
「一番に学校に行くんだ」
張り切っていることを
友達にも伝えよう。
お風呂も入り、歯磨きも終わった。
猫のマヤとも今日は遊ばない。
まっすぐ布団にもぐり込んだ。
布団の中でバスのことを考えた。
窓側だったらいいな。
出席番号だと奇数が窓側。
私は4だから通路側かな。
どっちでもいいかなと思ったけど
やっぱり大事なことだ。
色々考えて眠れなくなっちゃった。
布団の中で何度も姿勢を変えた。
いい姿勢で天井見たり、横向きになったり。そのうちお母さんの声も聞こえてきた。
「明日の天気は曇り。半袖着せたら
寒いかしら」
あぁ曇りなんだ。雨が降ったらどうしようかな…
「起きなさい みんなもう登校しているよ」
お母さんの声で目が覚めた。
ガバッと起きた。あわてて窓から外を見ると
みんなを乗せたバスが家の前を通って
いった。バスの中の友達と目が合った。
え 間に合わなかった? どうしよう
泣きたい気持ちと恥ずかしさがいっぺんにきて大声でお母さんに言った。
「どうして起こしてくれなかったの!」
そう言ったあと本当の目が覚めた。
空は青空。
2番目に登校した。
座る順番に先生が加わった
ことで窓際の席が偶数になった。
窓際に座って空を眺めた。
遠足は楽しい。
#241
どうして泣いているの
眠いの?
そう 私も眠いわ。
どうして泣いているの
お腹空いたの?
待っててね 今作っているから。
どうして泣いているの
やらかしたの?
大丈夫 着替えようね。
どうして泣いているの
さみしいの?
側にいるよ。みんないるよ。
泣かないで。
何を見て何を感じているのか
あなたの目線になって考える。
あなたの笑顔を見たいから
今日もあなたの泣きに付き合う。
大丈夫だよ。
#237