田中 うろこ

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2/22/2025, 6:55:22 AM

ローラースケートを履いてる俺らが好き。駆け抜けて初めて見える、流星みたいなペンライトが好き。仲間が好き、歌が好き。声が重なる瞬間が好き。モニターに移る俺たちの、動きがあってる瞬間が好き。夜空を照らす北斗七星が俺たちだった。いつまでも続くものだと思っていた。

いつからだろう、声の重なりが邪魔に聞こえてきたのは。いつからだったろうか、一人でどこまで行けるのかを試したくなったのは。

いつからだったか。あなたが俺を、潤んだ目で見てくれなくなったのは。他に守るものが出来たとか言って、守られているのは性にあわなそうな心で、俺の隣から去っていった。深い愛も、たくさんの大事を守るための棘も、大好きだった。凛々しい心と、儚く細い腕の乖離したそれが、たまらなく愛しかった。

『終わりにしたいだなんてさ、釣られて言葉にした時君は初めて笑った』

俺がここを抜けると言った時。あなたは優しく笑った。まるで、俺の事を全て知っていたかのように。あの時とまるで違う落ち着いたファッションに身を包み、俺の知ってる顔で言うから、あの時から随分と時間が経ったのだと改めて知る。
「ソロ、好きだったもんねぇ」
そうやって口にした途端に、腑の中には溶けた鉄を流し込まれたように、訳の分からない感情が渦巻いた。『わかったような口を聞かないでくれ』『そう言ってくれるのはあなただけ』『引き止めて欲しかった』『送り届けてくれてありがとう』
その全てが口をつきそうになって、開いた目と口が塞がらなかった。

『忘れてしまいたくて閉じ込めた日々に差し伸べてくれた君の手を取る』

「オレ、本当はお前のことすげー好きだった。」
そんな甘い言葉、聞きたくなかった。俺から急に開いた話し合いがお開きになった頃。二人になった瞬間に独白が始まる。
「けど、お前は絶対、オレには釣り合わない」
俺は知っている。この人の寸胴は、自分の方の計りをいつも軽く持ち上げるのだ。
「だから、バイバイした」
あざとい言葉選びすら、全てが好きだった。
「それがお前を傷つけてたのなら、謝らせて」
けれど、貴方はもう、他の人の物になった。左手の薬指に光るシルバーを仕事の時には外すけれど、俺の指輪で上書きなんてできない。
「……もう遅いだろ」
「……バレたかぁ」

「俺はもうこれ以上、俺のものじゃないアンタを見たくない、って言ったらわかる?」
「ごめんね」
困り笑いではにかむ顔すら、可愛らしくて。

「向こうでも、目移りしないでよ」
「……アンタしかもう、見られねぇんだよ」

素直じゃない愛の言葉を互いの餞にして、僕たちは夜空を駆ける別々の星のカケラになった。

2/20/2025, 9:24:57 AM

全世界5日前仮説。

5分前仮説というのはインターネット界隈じゃ有名な話。私たちが見てる世界は全て5分前にできたと言われても反論はできない。なぜなら、証明するものが記憶しかないのに、記憶すら作り物のレッテルを貼られてしまうから。

だけどそれが、5日前だと言われたらどうだろう。5日も前のことなんて事細かには覚えていないし、それより前のことも、余程大きなイベントでない限りは忘れていく一方だ。私はつい5日前に生まれた。ここに住み、友と学びあった17年間の思い出もある。しかし、私はつい5日前に作られたという記憶もある。

一日目は、細胞のような何かだった。
二日目には、いくつものそれが集まって私が生まれた。
三日目になると、世界が生まれて、家族や友人などの繋がりが設定されてくる。
この時点ではまだ、世界は世界という情報のみであり、風も吹かなければ日も射さない。言うなれば時は止まっている。

四日目でついに、情報が肉体という容れ物にしまわれ、世界に配置される。私は地球の中の日本にいるが、三つ隣の銀河の、名前も表記できない星に配置された存在もいる。

五日目。私たちが単位だった時から今の暮らしに至るまでの全てを忘れて、時が流れ始める。
この世は広い広い箱庭で、何者かの自由によっていくらでも形を変える。私はその記憶を持っている。それもきっと、その自由な閃きの中にあるだけの話なのだと思う。

「ねえツムギ、アイス溶けてるよ?」
「ああごめんレイラ、考え事してた」
「何?また好きな人のこと?」
「ううん、1週間前に出た宿題忘れちゃって」
「いま思い出したのか、ツムギどんまい」
「えへへ、あ! レイラ!アイスやばい!」
「食べな〜」
「あ、そうだ!言うの忘れてた」
「なになに?」

「(ここに題名を入力)」

2/17/2025, 5:48:04 PM

もちもち、すべすべ、しゅわしゅわ。
これらは私が焦がれてやまない感覚たち。もちもちとしたほっぺは見ているだけで癒されるし、すべすべとした大理石の床は触っても寝転がってもいい。しゅわしゅわとした細かな気泡たちが動いているのを見ていると、本当に心は浮き足立ってくる。その感覚をたくさん覚えておきたい。

けれど、全部の感覚をもってしても、それよりももっともっと焦がれるものがある。

それが、きらきら。

寒い日に星が光って、体育館の特別な日だけ照明が凝り始めて、好きな人の笑顔が眩しくて。全部きらきらしている。宝物のメタファーそのもの。掴みたくても掴めない遠さも愛おしいほど。光が好き、輝きが好き。響きも好き。離れているところから届いている実感が好き。

いつかそのきらきらが、私から放たれているんだなという実感を持ちたくて、持ちたくて持ちたくて持ちたくて仕方がない。

2/15/2025, 3:25:42 PM

2/12/2025, 6:13:22 AM

嘘みたいな本当の話をしようと思った。僕は初めて家族以外の人と住むことになった。つまりはそういうこと。でも、僕以外でこれを見てる人が思っている同棲みたいなものとは、だいぶかけ離れたものだ。なぜなら、そいつはヒモだから。

仕送り暮らしのスネかじりと、
元キャバ嬢のヒモ男。

どっちが先に音を上げるのか。楽しみだ。

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