田中 うろこ

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ローラースケートを履いてる俺らが好き。駆け抜けて初めて見える、流星みたいなペンライトが好き。仲間が好き、歌が好き。声が重なる瞬間が好き。モニターに移る俺たちの、動きがあってる瞬間が好き。夜空を照らす北斗七星が俺たちだった。いつまでも続くものだと思っていた。

いつからだろう、声の重なりが邪魔に聞こえてきたのは。いつからだったろうか、一人でどこまで行けるのかを試したくなったのは。

いつからだったか。あなたが俺を、潤んだ目で見てくれなくなったのは。他に守るものが出来たとか言って、守られているのは性にあわなそうな心で、俺の隣から去っていった。深い愛も、たくさんの大事を守るための棘も、大好きだった。凛々しい心と、儚く細い腕の乖離したそれが、たまらなく愛しかった。

『終わりにしたいだなんてさ、釣られて言葉にした時君は初めて笑った』

俺がここを抜けると言った時。あなたは優しく笑った。まるで、俺の事を全て知っていたかのように。あの時とまるで違う落ち着いたファッションに身を包み、俺の知ってる顔で言うから、あの時から随分と時間が経ったのだと改めて知る。
「ソロ、好きだったもんねぇ」
そうやって口にした途端に、腑の中には溶けた鉄を流し込まれたように、訳の分からない感情が渦巻いた。『わかったような口を聞かないでくれ』『そう言ってくれるのはあなただけ』『引き止めて欲しかった』『送り届けてくれてありがとう』
その全てが口をつきそうになって、開いた目と口が塞がらなかった。

『忘れてしまいたくて閉じ込めた日々に差し伸べてくれた君の手を取る』

「オレ、本当はお前のことすげー好きだった。」
そんな甘い言葉、聞きたくなかった。俺から急に開いた話し合いがお開きになった頃。二人になった瞬間に独白が始まる。
「けど、お前は絶対、オレには釣り合わない」
俺は知っている。この人の寸胴は、自分の方の計りをいつも軽く持ち上げるのだ。
「だから、バイバイした」
あざとい言葉選びすら、全てが好きだった。
「それがお前を傷つけてたのなら、謝らせて」
けれど、貴方はもう、他の人の物になった。左手の薬指に光るシルバーを仕事の時には外すけれど、俺の指輪で上書きなんてできない。
「……もう遅いだろ」
「……バレたかぁ」

「俺はもうこれ以上、俺のものじゃないアンタを見たくない、って言ったらわかる?」
「ごめんね」
困り笑いではにかむ顔すら、可愛らしくて。

「向こうでも、目移りしないでよ」
「……アンタしかもう、見られねぇんだよ」

素直じゃない愛の言葉を互いの餞にして、僕たちは夜空を駆ける別々の星のカケラになった。

2/22/2025, 6:55:22 AM