お題キープ。
あいまいな空
「あじさい」
優しく、いや激しく。
ジリジリと肌を焦がす
6月の朝日に嫌気がさす。
朝5時。
昨晩降り続いていた雨音のせいで
深く眠れなかった。
ふにゃと、あくびをして
枕元に置いてあるはずのメガネを手探りで探す。
なかなか見つからないそれは
まだベットにいてもいいという
優しいお告げかも、なんて悠長なこと
言ってられないくらいに見つからない。
朝からメガネを探すのはストレスだ。
微睡から一気に現実へ引き戻される。
結局枕の向こう側、ベットの際にあった。
ちきしょう、と口元を歪めて
スマホを手にする。
今日の予定を確認する。
……仕事以外は特になし。
朝5時6分。
仕事しかないわたしは
8時までに起きれば良い。
この早起きは、時間の無駄だ。
アサイードリンクを用意したり
りんごをうさぎさんにしなくてもいい。
タコさんウインナーに
[みっくん星人]なんて旗、
持たせなくたっていい。
お弁当を作るも作らぬもの
仕事終わりの連絡も
その後のスーパーの特売で買うお肉だって
それをどう調理して夜ご飯にするのかも。
足を伸ばしてお風呂に入るのも
お互いの髪を乾かし合うのも
全部、自由だ。
朝5時22分。
涙は横に流れる。
もうとっくに、目も頭も
冴えてしまっているのに
まだ、意地になって
ベットにしがみついている。
さっきまでぼんやりと
明るかった朝が
無理やりにポジティブを
お知らせする。
アラームはならない
ならさない。
どうせもう眠れる気もしない。
朝日の温もり
「実はミッキーマウスなんです」
唐突すぎる告白に
動きが止まった。
「え、嘘でしょ?」
よくないクセだ。
明らかに相手は
嘘をついていないのに
そう聞き返してしまった。
「いや、あの……」
「ごめん、嘘ついたとは思ってない」
「はい……」
確か私は
軽い気持ちで
「休みの日何してるの?」と
尋ねたはず。
休みの日にこそ
ミッキーマウスを?
夢の国の従業員?
あまりに過酷すぎやしない?
そんなふうに1人
質問したいけど
何から聞けばいいかわからない
状態を悶々としていたら
「アハッ!」
「ちょっ、え?」
電話口から聞き馴染んだ
ミッキーマウスの声がした。
「ほんもの!?」
「君がそう思うのならっ!」
「えー!!ちょっ!普通に喋って!」
「あ、はい、すいません」
「いきなりすぎて笑うよ、こんなの!
本当に、ほんものなの?!」
「いや、あの…にせものです」
「それはそれで似すぎててびっくりwww」
「ぼく、休みの日は配信をしています。
ミッキーマウスってハンドルネームで」
え、なんで?
元々ディズニーランドが好きで
ミッキーマウスは僕のヒーロー…
いやリーダーだったんです。
ミッキーマウスは
みんなのリーダーだよww
あ、たしかに、そうですねww
で?
単純に、ミッキーマウスに憧れてて。
いつもニコニコ笑ってるし
元気いっぱいくれるでしょ?
配信を始めたのは
友達増やせって幼馴染にいわれて
あ、そいつ引っ越しちゃうから。
そうなんだ、寂しくなるね。
うん、だから。
配信なら彼も見に来てくれるし
どうせならなりたいものになろうって
思って。
で、そのクオリティ?ww
やばすぎwww
アハッ!あ、ごめんなさい
褒められるとたまに出ちゃうんです。
いいよ、おもしろいからww
続けて?
ありがとうございます。
あのそれで、配信を始めて
それなりに認知されてしまってからは
休日はミッキーマウスとして生きてます。
どんなことをするの?
絵本の朗読をしたり
人生相談にのったり
歌を歌ったりもたまに。
さすがミッキーはなんでもできるねww
いや、本家のミッキーは本当にすごいんです!
ふふふ。
……。
ねぇ、ミッキーマウス?
なっ……ゴホン。なんだい?
私、あなたのミニーになりたい。
お友達から初めてみない?
告白は私からした。
マチアプは暇つぶしだと思ってた。
でも、まさかミッキーマウスに
出会えるなんて思ってもいなかった。
私だけのミッキーマウスに
会えると思っていなかった。
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〈誰にもいえない秘密〉
少なくとも、ディズニー界隈では
色々やばそうなので、秘密ってことで🤫㊙️
【失恋】という言葉を本当の意味で
理解していない。
失恋をするためにはまず
恋をしなければならないからだ。
俺は
生まれながらにして
人を愛することや
自身を愛するということに
執着がない。
初めてそれに気がついたのは
小学校3年生の秋だった。
バレンタインも
クリスマスも
関係のない季節に
隣のクラスのゆかちゃんが
ぼくを好きだと言ってくれた。
ぼくはゆかちゃんが
何を言っているかは
理解できたが
とうてい
その気持ちを受け取ることも
返すこともできなかった。
形のない心のようなものを
ぼくは怖いとさえ思った。
中学高校と進み僕はいまだに
恋を知らない。
大学社会人を迎えてもなお
俺は愛を知らない。
青年壮年を乗り越えてもなお
私は 知らない。
そうして私は間も無く
たましいだけになる。
それでもなお
こいを
あいを
しらない