つらら
ぽと
ぽた
溶けてゆくよう
強さ
弱さから
生まれる温度
突き刺さった痛いところに
傷痕のこり情けを想う
時間おいて
含む白湯
繋いでゆけと骨沁みる
【優しさ】
延々 よるのさかいめ
雲隠れラジオの放送局
よいこのみなさんこんばんわ
眠れぬ過去をお過ごしでしょうか
何事も背をまるめれば
ほしぞらは遠くで無限にまたたき
暮らしは常日頃と綴るでしょうか
真摯に明日をお迎えいただき
謙虚なお便りご自愛ください
深々 よるのふれこみ
午前0時をお知らせします
【ミッドナイト】
きいてほしいな うまく話せなくても
気にかけてほしいの ふだん離れていても
わがままは承知のうえで
ぬくもりがほしいな いっときだけでも
泣いてみたいの ひとりきりにさせて
めんどうなのは承知のうえで
だって一生追い求めて
一瞬毎に振りまわされるの
最低限度が保障されても 帰りの道で刺されて死ぬかも
そういった類いでもないけれど
うまく言えないや
察してくれる?
つまりは察してほしいの
天秤に載ることのない 常に不安定な心の内を
【安心と不安】
墓参りの後に
寄りたいところがあると言う
父さんの背中についていった
花は置いていくものらしい
どこかへ行くときは電車に乗るか
大股で歩くものらしい
うちには車も自転車もない
置いていかれることはないけど
いつも着いたのかどうか不明
足が止まって遠くを見たとき
それが終わるのを待ちながら
後ろでもの珍しい物を探す
影に隠れた
まるい小石が
手を伸ばす前に日を浴びて
父さんが何歩かこっちへ来た
向こうの景色がよく見えない
「帰るの?」
父さん返事をしない
まだ帰りたくないらしいから
拾った小石の汚れを取るけど
潰された光
正面を向くのが少し怖い
【逆光】
…―――…
…―――…野薔薇は辺り一面枯れていて――私はそこで彼の亡骸を見たの
――?
なぜって、この世のものとは思えないくらい美しかったの――私、彼には指一本触れずに、傍でずっと見守っていたわ――そうしたら羊が、ちいさなちいさな仔羊が――とっても可愛いの――彼のブロンドの髪をむしゃむしゃとやるから――
――?
私あわてて「だめよ、彼はいま幸せな夢をみているの」って追い払うのだけど、彼は「大丈夫だよ」って言うのね――
――?
そう、彼は死んだの――「大丈夫だよ」って言うから、私は植木屋に白パンを分けてもらって――特別やわらかいものを、母にあげたわ。中に木苺のジャムが入っていた――あなたにもそういった経験はない? 私が10代の頃は――甘い物を禁じられていたから、ドレスは絶対に青がいいって言ったのに――パーティーで誰も私と踊ってくれなかった――
……。
信じられない。本当に――だって、貴方さっき言ったでしょう。彼は死んだのだって――私もそう思うわ、誰も私とお話をしてくれないし――寄ってたかって、嫌なことばかり――
――?
皆がそう言ってるの! ああ、こんな事になったのも――妹に聞いたら、明日は天気が良いみたいでお洗濯をしないといけないんですって。最近、本を読んでいないでしょう? お腹を空かせた羊の子にはピアノを弾かせるべきよ――
…―――…。
ええ、お休みなさい。良い夢を見てね。
『テープはここで終わっている――枯れた薔薇は何色だったのだろう?』
【こんな夢を見た】