ゆくあてのない
美しいよる
きつね 振りかえり脇道それる
笠ふかく 天しれず 足跡たどり先おもわず
無心であることのむずかしさよ旅のもの
枯れ木につもり落つもどかしさよ
先導のもの
なに故 そうも美しくひかる
彷徨えるのなら共に つとめて里帰るなら終に
【雪明かりの夜】
…………ちょっと、ちょっとちょっと、
ちょっと何してんの!!
「あんた何して、ばっ危な! はやく離れて!」
「観測中だ」
「ライン超えてんだろお!!」
「も〜〜ほんとやめてよ……」
「観測中だと言った筈だ」
だから安全距離超えてるんだってば。その毛先が触れたらどうなるかわかってます、ちょっぴり焦げちゃった! なんかで絶対済まないって。
「あれは熱を発しない」
「そういうことじゃないんだなぁ」
「あれが何か知っているのか」
「いや……知りませんけど」
あんまり詳しくは。てか、アレ何?
「触ったらビッグバンが起きるとか……説明されて、質問も許されないまま終わったし」
はぁ、でも何も起きなくて、ひとまずは良かった。
「…………」
「……あー、あの、もしかして、ここで研究してる人?
だったら邪魔して悪いけど……」
「君がこの空間に居ることに驚いた」
襟元のピンを見るに、第一の扉も開けられない等級では。
「…………」
「そして未だに此処に居る。興味深い現象だ」
「人を現象扱いしないでもらえます?」
……ちゃんと許可は貰ってますから。
無事に此処から出られた後にね。
「成程」
観測の時を待っている訳だ。
「そうであれば僕にも、予測は出来ていたのだろうね」
「はぁ! ご自身の長年の経験と、勘ってヤツですか。
そりゃスゴい」
「いいや違う」
僕が信じているのは波だ。
……アレが、波? 俺には立方体に見えるけど。
近付いてみるといい。微かに波紋がある……
「…………」
「…………」
「本当だ。なんか動いてる」
「だろう」
日々、観察を怠らずして此処まで来た。
「この地味な作業を、まだ続けるおつもりで?」
「無論」
何故なら全てを捧げているから。
解明の時を待たずとも。
「それを無謀って言うんじゃないの」
「では一度振ってみようか」
…………ちょっと、ちょっとちょっと、
【祈りを捧げて】
どうりで羨ましく感じるわけね
思い出を残さないと得られないのよ
残すほどの事でも無かったものね
それを大切に仕舞っておくのが
どんなに難しいったら
わかる?
誰にも言ったことがないから
誰も知らないでしょうけど
もう過ぎてしまった事を思うと
もやがかかって時間がとまって
すぐ引き返すの
あたしずっと欲しいものがあるみたい
でもそれら全部捨ててしまった
人でなくても良いのなら
この縫いぐるみの感触に似てる
【遠い日のぬくもり】
ポトポト。
ぽたぽた。
「うーん」
てりてり。チルチル。
「ちがうのよ」うんうん悩む腕組みの子。
「もっといいのがあるはずなのよ」
あたまをつかって! 帽子のポンが、ふわふわたむたむ。
周りの子らも、ぽてぽてわやわや。
「まーだきまらないの?」
「あのねあのね」
「こんなのがすきー」
危ないから近付かないで。
両手の囲いをそっと建設。よじ登らないで。
「みえないもん」「ねー」
…………。
ゆらゆら。
「それなのよ!」
ビシッと決めて、くるりポージング。「きょうからこのこはゆらゆらなのよ」
ぱちぱちパチパチ、わあわあキラキラ。騒がしい夜。
満更でもないけれど。
「さあみんなでわになっておどるのよ」
つくえのうえの、ちいさなせかい。
キャンドルも語源も通じない世界。
より共感を得られたものの重複した名が決まる世界。
「とってもきにいったのよ」
ふんふん歌って影揺らすから、水を差さずに見守った。
卓上ツリーは無くたって。
ひとりでは居られない夜。
【揺れるキャンドル】
どうでもいいことが頭の中を、ぐるぐると。
浮かんでは繋がらずに消えてゆく。
本当に行きたいところへ足が向かない。
『寄り道するのも良いもんだ』
面白いことに出会うから。
あの人が云っていた通りには、なかなか。そう上手くはいかないもので。
『何も考えずに進むまで』
人生に石橋を叩く暇も無い。
あの人がつぶやいた真理にも、なかなか。たどり着くには長すぎる。空を仰いで。
……目を細める。
遠く、飛び石の隙間。
天使の梯子が降りている。
「ぼーっと突っ立って、なぁに考えてるの」
向こうから翠色のうちわ片手に、ぴょいぴょいと。
ゆたりと扇げば神楽鈴。
「ふたつ曲がれば逢えたのに」
ね、なにをかんがえていたの。
いいえ何もと応えておく。ふぅんと関心の途切れる声。
「ほんとうに惜しいのに」
あの橋を渡りましょ。
うちわ指すほう、見落としていた抜け道が。にやりと天使の口元が覆い隠され。
【光の回廊】