「カーテン」
レースのカーテンの裏に隠れるのが好きだった君。
今も影が指すと、隠れてるんじゃないかって探したくなる時があるよ。
しなやかなしっぽを揺らして、首輪の鈴を鳴らして走ってくるきみはもうどこにもいないのかもしれない。
でも僕は、君の名前を呼ぶよ。
だってほら、カーテンの裏を覗かなければ、君の影はそこにいる。
..........何してるの、カレット。
こっちにおいでよ。
「ココロオドル」
承認欲求の無い僕には価値は無い。
誰にも承認されない僕の作品になんの価値があるというのだろうか。
可哀想な駄作たち。僕の作品で無ければどんな賞賛を得たのだろう。
僕の作品でなければどんな欲望を滲ませ訴えてきたのだろう。
僕は答えが知りたい。
僕の作品が望む欲を知りたい。
無機質な冷たい画面越しに、心を踊らせる貴方の心が欲しい。
「束の間の休息」
浅い眠りの先での体験を記録することが趣味の一つだ。
今日は腹をメスで引き裂いて、溢れ出た肝臓を取り出して遊んでいた.... 無邪気な子供みたいに。
肝臓が腹をさいて1番に出てくるなんて変な話だ。腹の中も血どころか何も入っていないかのようにポッカリとあいていた。
でもそんなことを考えられるほど夢の中の私は大人じゃなかった。
メスで肝臓を好きに切って遊んでいた。
サクサク、ぷりゅぷりゅといい感触だった。
本当に本当に楽しかった、でも私は、ふと気がついてしまった。
この肝臓を身体に戻したら、どうなっちゃうんだろう。
私は急に真っ青になった。
どうしよう、自分の肝臓をバラバラにしてしまった、死んじゃう、死んじゃう。どうしよう。急に少し大人になった私が強い恐怖を覚えた。
怖くて仕方なくて、焦って、バラバラの肝臓をそのまま腹に押し込んだ。痛いのか痛くないのかわからないけど少し痛いような気もした。
そこで.....目を覚ました。
現実で体感したような空虚感の余韻があった。
それが良い話の種になるのは、詳細を忘れて現実と夢の区別がハッキリ着いた時だ。
現実では体感できないことを、体験できた。その感覚がたまらない。
束の間の休息で得られるこの趣味が、誰かの夢を呼べばいい。
「奇跡をもう一度」
生まれたのが奇跡なら、今は死んで消えてしまうことが奇跡なんだろう。
「たそがれ」
たそがれているその背中を、蹴り飛ばしたいと思った。
君がいなくなればこんなに苦しむことも無いのに。
どう頑張っても君には勝てない、叶わない。
ただ僕もそれを望んでいる気がしなくもない。
気付かないフリをして、君の後ろを通り過ぎる。
僕は今日も無駄な努力を重ねている。
走っても走っても、苦しいだけなんだろう。
それでも諦められないでいる。
僕は僕が嫌いだ、でも僕を辞められないままでいる。
憎くて憎くて仕方が無いのに、君に憧れてやまない。
沈みかけの日はどうしてこんなに、赤黒いのだろう。