むぎゅ。
眩しさに目をつむる音。
眩しさに抱きしめられる音。
そうやって光に包まれている時、
後ろからは影がそっと自分の背中を支えてくれている。
目が灼かれないように、
闇がそっと目の中の色を消してくれている。
光と闇。真逆のようでいて、隣り合う存在。
どちらか一方だけでは成り立たない。存在しえない。
その確約された存在の狭間で、私達は生きている。
産まれたその時から、分娩室のライトに照らされて、
母の胎に影を落としている。
そうやって生きて、死して尚、ろうそくの光に照らされて、
骨壷や墓標からずっと影を落とし続ける。
光だけでは影を生み出せず、影だけでは光を生み出せない。
狭間に何かが、
私達がいるからこそ光と闇は共存できるのだ。
光と闇。それと私たちは、共依存である。
光と闇の狭間で、私たちは存在を維持している。
「光と闇の狭間」 白米おこめ(加筆)
あなたとの距離が近づく度に、
怖くて離れる僕を許してください。
遠くで見つめるくせして、目が合うと
何でもないふりをしてしまう僕を見ないでください。
近づきたいくせに、勇気がなくて
ちっぽけな一歩も踏み出せない僕に気づかないでください。
お願いだから、そんなに近づかないで。
僕は、あなたが近くにいるともうどうしようもないんです。
だから後ろに下がるしか、方法がなくて。
そうやっていつも逃げていたら、
気づかないままあなたと背がぶつかってしまって。
固まる僕に近づいたその距離の分だけ、
また彼女のことを好きになってしまったんだ。
「距離」 白米おこめ
あなたの目尻をそっと舐める犬。
「泣かないで」 白米おこめ
悴む指先で、自販機のボタンを押して、
あたたかい飲み物を取り出す、その瞬間。
「冬のはじまり」 白米おこめ
コンポタはじっくりコトコト派。
さよならは、頬を撫でるその手つきで分かったの。
離れがたさを含んで、いっとう優しく撫でていたの。
私は微睡の中で、生ぬるい優しさの中で、
ひとつ泣いていたの。
あなたは私よりもずっと泣いていたから、
気づかなかったのでしょうけど。
私とあなたの涙のペトリコール。
さよならを言えないまま逢えなくなったって、
別に構わないの。
私はずっと好きなのだから。
だから、どうか、あなたの人生を。
「終わらせないで」 白米おこめ