白米おこめ

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8/26/2025, 6:28:40 PM

私はいつか、ウユニ塩湖に誰かと2人きりで行きたい。
あの壮大で、人がちっぽけに感じられるような所に、
「世界にこの人さえ居れば良い」と思えるような人と
一緒に行きたい。

感嘆の息を漏らすだけで、何も言えない私の隣を、
同じように何も言えないまま立ちすくむようなひと。
そっと、指先を握っても許してくれるひと。

私が一緒にいきたいの、あなただったかも。
そっと微笑んで、言えてしまったらどんなに楽か。

2人きりじゃなくたって、いつか行けたのならば。
一瞬だけでも話せるその空間だけを切り取って、
私ずっとあなたを好きでいられる気がする。

素足のままで浸っていたいだけ。
あなたへの愛に。

「素足のままで」 白米おこめ

8/25/2025, 5:17:51 PM

もう一歩だけなら、踏み越えてもいいかな。
線は見えてるの。ちくちくした有刺鉄線の線が。
“越えてはいけないよ”と、誰かの声がするの。
ずっと憧れている、大好きな誰かの声がするの。

でも、あとちょっとだけ進んでもいいかな。
もう一歩だけなら。

私、分かってるつもりなの。
白線から外に出てしまったら、
アスファルトには人喰いザメが泳いでいるの。
線は目の前にあるの。
触ったら焼けるような熱いレーザーの線が。

信号機はずっとひまわりのように光っている。
止まるべきで、でも、止まらなくたって咎められない色。
だから迷ってしまう。基礎的な性善説に
当てはまってしまう前に、動いてしまいたい。
ちかちかと点滅する黄色を進んだところで、その先に
何もないことも、それが危ないこともしってるけど。
私が後悔するのも、彼を傷つけるのも分かっているけど。

だから私、ここで止まっているの。
変わらない信号機の点滅を体育座りでずっと数えているの。

だから、暇だから考えてしまうだけなんだって。
熱いレーザーを帽子で避けて、
海へ落ちないように白線の上を進んで、
ずっと大好きなあの人に会って、
有刺鉄線さえ抜けられるのならばどんなに良いかって。

赤になりきれず青にもなれない、優柔不断な向日葵の黄色。
“貴方だけを見つめる”なんて、そんなの馬鹿みたいだよね。

でも、ここはやっぱり暗いから。
もう一歩だけなら、許される気がするの。
貴方に近づきたい、私を許して。

「もう一歩だけ、」 白米おこめ

8/24/2025, 6:09:30 PM

見知らぬ街に行ったって構わない。
私が知っている人がいなくたって、
私を知っている人もいなくなって、
誰も彼も分からなくたって構わない。

その時にただ一つ未練があるとすれば、
貴方の家の郵便番号を知らないことだけ。
私が引っ越した先で、貴方に手紙を送れないことだけ。

私は見知らぬ街に行ったって構わない。
貴方が、私を忘れない限り。
それ以外は、全部変わったって生きていけるから。

「見知らぬ街」 白米おこめ

8/7/2025, 3:29:42 PM

あなたしか指さない羅針盤を、後生大事に持っている。
そんな磁場など狂って仕舞えばいいのに。
誰かとたのしい場所へ行く貴方を、
私なんかが探してもどうしようもないのに。
どうかなだらかに眠っていて。私の宝物だったはずの人よ。
できれば健やかに、静かに、幸せでいて。
宝の地図はもう破いてしまったの。
間違っても、貴方の幸せを掘り起こさないように。

コンパスの表面にヒビが入る。
今にも割れてしまいそうなまま、
ただぎゅっと握りしめている。
好きだった。今だって。針はあなたしか指さない。
針はあなたしか指せない。真っ赤に燃える恋の針先。

穏やかな白波に身を預けて、
時間をかけてゆっくりと砂浜が引いて動いて。
ずっと深く、砂を被せたはずの宝箱のその頭が
見えてしまう時がもし来るのならば。

その時はどうか、貴方に鍵を開けてもらいたい。
しまったはずの心の羅針盤はきっと、
遠くなってしまった貴方をずっと指しているから。

「心の羅針盤」 白米おこめ

8/5/2025, 11:22:25 AM

ぬめって、洗って、流されて。
縋ろうとシンクにしがみついても、
裏をかこうと蛇口にひっそりくっついていても、
全て見つかって、いとも容易く蹴落とされる。

流されてしまいたい。

恋して、やぶれて、忘れたくて。
縋りたくなくて手を離そうとしても、
いっそ壊れようと貴方に想いを伝えようとしても、
全て怖くて、落とせないまま過ごしてしまう。

シャワーを何度も何度も浴びて流そうとした。
でも流れなかった。泡なんかじゃなかった。

今だけは、恋心が儚いなんて嘘だと思う。

許しを得てなんかいないのに、
もう私に何にもしてくれやしないのに、
図々しく居座って流されずにずっと留まっている。
飲みこんではいけないのならば、
シャンプーやリンスみたいに注意書きに書いておいてよ。


貴方への想いを一個ずつ、カラフルな容器に入った
しゃぼん玉の液に溶かしてしまいたい。

大好きを溶かしたしゃぼん液の膨らみが、全部割れて
宙に消えてしまえば、きっと楽になるから。


「泡になりたい」 白米おこめ

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