白米おこめ

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11/4/2024, 12:19:11 PM

例えば、学校から帰る時。
傘を差さなくてもいいくらいの、細かな雨が降っていて。
どうしようかなあと思って、薄灰色の雲を見つめる時。
屋根から差し出した手に、雨がぽつりと当たった時。

例えば、仕事の休憩時間。
誰も居ない休憩室で、静かに携帯を眺めている時。
ペットボトルの結露で指先が湿る時。
食べ終わった後のビニール袋が、ゴミ箱の中に見える時。



…あなたの、例えばの中に。
私の書いた文章が、入ればいいなと願っている。


「哀愁を誘う」 白米おこめ

11/3/2024, 11:52:57 AM

鏡の中の自分を見ると、これが今こうやって
考えているのだなあと思う。

今、この文字を読んでいること。
スマホを持っている手が視界にあること。
一人称視点だ。ずっと。産まれてからずっと。

鏡を見ると思う。
私は“私の世界”の主人公だと。当たり前ながら、改めて。

周りの人のことを考えて、というのも分かるけど、
主人公なのだから、
その他のことはただのイベントでしかないのかも、と
思うこともある。

鏡を触る。勿論、鏡と私の間で指先が触れ合う。

指先がじわじわと冷たくなる。
触れている部分に、体温が移る。

そうやって混ざり合って、体温が等しくなって。
それでも、私が動くから鏡の中の私が動くのであって。

どうやっても、この世界の主人公からは逃げられないのだ。
向こうの私が、鏡の中から逃げられないのと同じように。


「鏡の中の自分」 白米おこめ

11/3/2024, 12:28:46 AM


眠りにつく前に、ひとりぽつり。
明日は貴方の誕生日だなあと思いついて。

誕生日を祝われる貴方のことを考えて、
周りの人に恵まれた貴方に、
邪険にしつつも嬉しそうな貴方の顔に、
勝手に心を綻ばせ。
そこに私がいないことに、勝手に心を痛ませて。

人間って本当に身勝手なのね、と思ってみたり。
ここにはいないひとを想って泣くなんて、私達だけかしら。

貴方達にとっての幽霊は私なのね。
貴方達から見れば、私が幽霊側なのね。

いいよ。

私が老いて死んだのならば、
火葬場で骨をひとつ盗んでくださいな。

その骨を薄く伸ばして、栞にでも加工して、
キャラクター紹介ページに挟んでもらうから。


……そうやって、貴方の誕生日が来るたびに。
永遠の眠りにつく前に、
貴方と逢える方法を探している。

「眠りにつく前に」 白米おこめ

伊武くん誕生日おめでとう

10/29/2024, 1:05:04 PM


もう一つの物語。
例えば、テスト前にちゃんと勉強した私の物語。
例えば、あの時に謝れた私の物語。
例えば、昨夜潰した蚊の物語。

今朝割った卵のひよこの物語。
電車に飛び出したあの人の物語。


あったはずの物語。私が書き損じた物語。



もう一つの物語。
例えば、補修の時間で仲良くなった友達との物語。
例えば、謝れなかった後悔を覚えている物語。
例えば、昨夜殺し損ねた蚊の物語。

朝食に目玉焼きを食べた私の物語。
ホームに花束を添えて生きる私の物語。


なかったはずの物語。私が書き連ねた物語。



どちらも、等しく。



「もう一つの物語」 白米おこめ

10/28/2024, 10:06:53 AM



帰宅途中の水たまりを踏んだら
そのまま沈んで世界から私がいなくなり
暗がりの中でただ遠くなってゆく信号の揺らぎをみている。



「暗がりの中で」白米おこめ

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