”ザックスの目、綺麗だね。”
”そうか〜?自分であんまり見ないからよく分かんないけど、君が言うならそう思える気がする。”
“うん、そうそう。まるで青空みたい。”
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誰も居ない神羅ビルの屋上で空を見上げる度に思う。
ソルジャーは皆、青い目になるけどザックスの瞳は特別曇りない綺麗な青色だった気がする。
もしかしたらザックスの性格とかがそう見させてくれたのかな、なんて考えるけどここ暫く会えていない。
「…早く帰ってきてよ」
小さな呟きは誰にも届く事なく空に消えていった。
-空を見上げて心に浮かんだ事-
「なぁ、俺たちそろそろ終わりにしよう。」
そう言われた瞬間、息の仕方を忘れてしまったかの様に動けない。
あぁ、血の気が引くってこうゆう事なのか。
なんて他人事の様に思う。
学生の頃より会える時間も減った。
それでも私は会う度、鉄朗にドキドキしてた。
私より背が高くて逞しい体も、歩く速度を私に合わせてくれる気遣いも、家では少し甘えん坊なところも、全部全部大好きだった。
私には勿体無いくらい素敵な人だからきっともっといい人が見つかったのかもしれない。
鉄朗の為に“分かった”と頷いてあげたいのに目に溜まった涙を溢さないようにするのが精一杯で目も合わす事が出来ない。
どうしようも出来ず鉄朗のお腹辺りをただ見つめる。
すると突然しゃがみ込まれ、目がばっちり合ってしまった。
「え゛、ちょ、泣いてる⁉︎」
「ち、ちが。」
全然違くない。
別れたくない。
鉄朗以外、考えられない。
一度溢れた涙は線を切ったように流れ出してしまう。
「ごめん、急過ぎたよな」
そう言ってポケットから取り出してきたのはキラリと光る指輪。
「…え?」
「そろそろお前を彼女じゃなくて奥さんにしてぇんだけど」
“…ダメ、デスカネ”
私が泣いていた事で自信を無くしたのか段々声が小さくなる鉄朗に、まだ声が出ない代わりに彼の胸に飛び付いた。
-終わりにしよう-
「なぁ、そろそろ折れて俺と付き合わない?」
大学の講義で会う度にそう話してくるのは高身長の彼。
席が近かったりすることが何回かあり、そこから仲良くなった。
いつからこの会話が始まったのかはもう忘れてしまったけど、どうして私なのか未だに理解できない。
彼は見た目もイケメンの部類に入るだろう。
いくらでも可愛い子が彼女になってくれそうなのにどうして私なのか。
「クロ、毎回それ言ってるけどなんで私なの?」
今まで適当に流していたけど初めてこの内容について質問したかもしれない。そしたら彼は付き合ってなくても分かるくらい優しい表情をした。
「え?だって俺の一目惚れだもん」
「え?!」
「初めての講義の時から凄いタイプで、でも突然話しかけたら怖いかなって席も毎回近くに座って徐々に距離詰めていったつもりだったんだけど…もしかして気付いてなかった?」
「し、知らなかった…」
と言う事は偶々席が近かったわけじゃなくて全部クロの目論見だったわけで
「だから、これまでずーっと奇遇だと思ってた事は全部俺がお前に近づきたかったからなんだけど」
いつも椅子を一つ開けて座っていた筈が今日はその隙間がない。
「それを聞いたら、ちょっとは答え変わりますかね?」
今までにない距離感で内緒話のように囁かれてしまいその日の講義は全く頭に入らなかった。
-これまでずっと-
華の金曜日。
明日は何をしようか。
自宅で珍しく夜ご飯を作りスーパーで買った新商品のお酒を開けちゃったり、いつもとは違う夜を過ごしていると携帯から一通の連絡が入る。
“仕事終わった。今から向かう”
絵文字もない殺風景な文字列。
それでも私は飛び上がるくらいに嬉しくてもうお風呂を済ませちゃったけどパジャマ可愛いかな、とか部屋汚くないかな、とかそわそわしながら連絡してきた彼を待つ。
明日は彼も休みだと言っていたから映画を観るのも捨てがたい。でもショッピングをして街を散策するのも楽しそうだ。どんなところでも彼がいればキラキラと世界が輝いて見える。
そんな明日に夢を馳せていると家のインターフォンが鳴り響く。
私は急いで彼が待つ玄関に向かうのだ。
-1件のLINE-
目が覚めると視界には整った顔の彼が気持ち良さそうに眠っていた。頬を触ると手入れをしていないのが嘘なのではないかと思うほど滑らかな触り心地だ。
「すべすべだぁ」
寝惚けながら彼で遊んでいると青とも緑とも言える不思議な色の目が瞼から覗かせる。
「ん、はよ」
おはよう、と返事をする前に腕を取られそのまま引き寄せられたと思えばすっぽりと腕の中。甘えるようにすり寄れば答えるように腕の力が強くなる。
「可愛すぎるぞ、と」
彼は自分のテリトリー内に入った人間にはとことん甘い事を付き合ってから知った。それはもう彼がいなくなったらこちらが立ち直れないほどに。
「レノ」
「んー?」
私の髪を優しく弄る彼の頬に口付けをする。
「大好き」
すると少し驚いた表情をした後、今度は苦しい位に抱きしめられる。
「はは、こりゃかなわねぇな」
朝の幸せな時間。
-目が覚めると-