「なぁ、俺たちそろそろ終わりにしよう。」
そう言われた瞬間、息の仕方を忘れてしまったかの様に動けない。
あぁ、血の気が引くってこうゆう事なのか。
なんて他人事の様に思う。
学生の頃より会える時間も減った。
それでも私は会う度、鉄朗にドキドキしてた。
私より背が高くて逞しい体も、歩く速度を私に合わせてくれる気遣いも、家では少し甘えん坊なところも、全部全部大好きだった。
私には勿体無いくらい素敵な人だからきっともっといい人が見つかったのかもしれない。
鉄朗の為に“分かった”と頷いてあげたいのに目に溜まった涙を溢さないようにするのが精一杯で目も合わす事が出来ない。
どうしようも出来ず鉄朗のお腹辺りをただ見つめる。
すると突然しゃがみ込まれ、目がばっちり合ってしまった。
「え゛、ちょ、泣いてる⁉︎」
「ち、ちが。」
全然違くない。
別れたくない。
鉄朗以外、考えられない。
一度溢れた涙は線を切ったように流れ出してしまう。
「ごめん、急過ぎたよな」
そう言ってポケットから取り出してきたのはキラリと光る指輪。
「…え?」
「そろそろお前を彼女じゃなくて奥さんにしてぇんだけど」
“…ダメ、デスカネ”
私が泣いていた事で自信を無くしたのか段々声が小さくなる鉄朗に、まだ声が出ない代わりに彼の胸に飛び付いた。
-終わりにしよう-
7/16/2024, 7:59:02 AM