水嶋

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6/28/2024, 5:16:49 PM




ジリジリと日差しが肌を焼く。
日焼け止めを塗ったとしても毎年焼けてしまうのが不思議で悔しい。



「あっつー」



天気がいいからとテラス席にしたのは失敗だなと氷のグラスに注がれたサイダーを一口飲む。



喉でパチパチと弾ける感じが堪らないし気温も相俟ってより一層美味しく感じた。今日の休みをどう過ごすか考えていたら向かいの席に見慣れた赤髪の彼が腰掛ける。




「お疲れさん、と」




「レノ!今から任務?」



彼はウエイターに注文をすると体をこちらに向ける。



「いーや、今日はオフだぞ、と」



確かによく見ればいつものスーツではない。
私服から覗く腕や足は日焼けなどしておらず綺麗な肌だ。



「レノって日焼け止めとか塗るタイプ?」



「あ?んなの使った事ないぞ、と」



運ばれて来たカクテルを飲みがら聞く衝撃的な事実にさっきまでサイダーで気分が上がっていたのが急降下だ。




「う、そでしょ。塗らないでその色白を保ってるの…信じられない。」




ガクリと肩を落とすとそれを見たレノが私の姿を上から下まで見る。




「俺は少し小麦肌位がちょうどいいと思うぞ、と」



いうが先が行動が先か、レノは肌が少し見えてる私の腕をツツっとなぞって来た。




「ぴぇッ」



ビクッと肩が跳ねたのに気をよくしたのか口角を上げ満足そうにこちらを見つめる。




「ほー、可愛い反応するな」




「突然揶揄わないでよ!もう…恥ずかしい」



その場を誤魔化すように、私は結露したグラスを持ってサイダーを一気に飲み干した。








ジリジリ焼けるのは肌かそれとも恋心か






-夏-

6/28/2024, 1:08:31 PM



「ねぇ、アクセル」



「ん?」



「もしあの月が完成して、心を手に入れて、この機関も無くなって、自由になったとしたら…行きたいところとかある?」



あるかどうかも分からない未来の話。



「そうだな…美味いもん食べに行くのもいいし、景色が綺麗なところでのんびりするのもありだな」



考えながらあれこれ候補が出てくるアクセル。その未来の話は希望と一緒に私の胸を苦しめる。今は遂行する任務があって一緒にいられるけれど、もしそれが無くなったら…もう一緒に居る理由がない。



「お前はどうしたい?」



「んーそうだな」



自分で聞いておきながら上手い返事は見つからない。



「なんもねぇのか?」



「うん、いざ自由になったらどうしたらいいかいいか分からない、かな」



私の返事を聞くと暫く考え込むアクセル。



「それなら自由になってから決めたって遅くない。一緒に色んな世界にいってお前のやりたい事、行きたいとこ、見つけようぜ」



「…一緒に?」



「そうだ。1人より2人のが楽しいだろ。勿論、ロクサスだって誘えば付き合ってくれるぜきっと。」



私といるのが当たり前のように話してくるアクセルに胸の辺りがギュッとなる。苦しいけど、嬉しい。



「ふふ、アクセルがいればどこへ行っても楽しそう」



「そうか?でも俺も、お前がいるならどこにでも行ける気がするな」



「じゃあ色んなところ連れて行ってね。約束。」



「あぁ、記憶したぞ、と」





いつもの夕焼け空の時計塔、小さな未来の話をした。





-ここではないどこか-

6/27/2024, 7:40:49 AM





「……いつまでさがしてるんだぞ、と」




任務の帰り道、いつも彼を探す。




「分からない。どこで区切りをつければ良いのか…どうすれば良いか、分からないの。」




彼に会ったら話したいことが沢山ある。


エアリスと花を売ったこと。


任務で失敗したこと。


レノとルードが喧嘩したこと。




“俺が帰ってきたらさ、キミしか知らない事、沢山教えてよ”




なんて言っていなくなった彼。
あの日が最後だなんて思っても見なかった。




「エアリスだって毎日のように手紙書いててさ、預かってるのに…まだ渡せてない」




「…それは、もうどうしようもないんだぞ、と」




「レノは…もし私が居なくなってもう探すのはやめろって言われたら…辞めちゃう?」



自分でもずるい聞き方だなと思う。




「まぁ、無理だろうな」




私の隣に並び、周りを険しい顔で見るレノ。




「だから毎回付き合ってるんだぞ、と」




「…ありがとう」




「見つかったら臨時手当、貰わないとな」




探索した目印に祈りをのせて私たちはその場を後にした。




-君と最後に会った日-

6/26/2024, 3:59:55 AM




「レノ見て。エアリスからお花貰った!」




「対象と仲良くなってんじゃないぞ、と」



「別にいいじゃない。私は今日休みだもの」



手に抱えてるのは教会に咲いている花だろう。
花を見ながら嬉しそうにしている姿は年相応にみえる。



「それなら文句もいねぇな」



プライベートは仕事と分けているのは俺もこいつも同じだ。



「教会で花が咲いている所に日の光がさしてるの本当に綺麗。神秘的だなって思う。」



勝手にオフィスに花を飾りながらそんなことを言う。



「でも床がボロボロだぞ、と」



女ならもっと綺麗なところが好きそうだけどな。



「でも周りが静かでね。鳥の囀りとかも聞こえてさ。時間がゆっくりに感じるの。あそこ、結構好きなんだ。今度の休みレノも行こうよ」





そういって笑いかけてくる姿がどこの花より綺麗だと思う俺はもう手遅れなのかもしれない。






-繊細な花-

6/24/2024, 4:07:13 PM




“ねぇ、来年のお祭りもここで待ち合わせして一緒に行こう”




そんな儚い約束事を胸に一年が経った。
もう彼とは恋人でもなんでもない。




「約束の場所に居たって来るわけないのに」




悲しいかな、忘れたくても忘れられなくてもしかしたら向こうも少しは後悔してるんじゃないかって自分を守るための言い訳をしながら目印も何もないただの河川敷。お祭りへ行くのだろう、浴衣を着た人達を何人も見送った。




お祭りには行けなくてもここからなら花火くらいは見えるだろう。
せっかくなら花火を見てから帰ろうと腰を下ろす。




別れた理由なんてたいしたことない。
お互い仕事で一緒にいられる時間が少なくなって、すれ違って…よくある別れ方だ。




「…記念日くらい覚えててくれたって良かったのに」




付き合って2年目の記念日。
一緒には居られなくても少しだけ電話したり、メールしたり、いつもよりほんのちょっとだけ特別な何かが欲しかった。でも鉄朗は私からの着信にもメールにも反応がなかった。




仕事で忙しいのは分かってた。
いや、分かってたつもりだっただけ。
本当は寂しくて辛くて悲しくて、結局私から離れてしまった。




あれから忘れようと携帯も変えた。
鉄朗が今何してるかも分からない。




考え込んでる間に辺りは暗くなり花火が上がり始めた。




「綺麗」



花火を朧げに見ていると視線の先に人影を見つけた。




「…う、そ」




遠くても分かる。背が高く、髪型が特徴的な人なんてそうそう居ない。




向こうはまだこちらに気付いていない。
会いたい、会いたくない、気持ちが一気に溢れ出し動けずにいると向こうもこちらに気づき信じられないような表情をしている。




近づいてくる、もう逃げられない。
鉄朗はなんでここにいるの?私と別れて少しは寂しかった?
私は泣かないようにするのが精一杯だったよ。




なんて声を掛けようか迷っていたら腕を引かれ苦しいくらい抱きしめられる。




久しぶりの彼の匂いに涙が溢れた。




-一年後-

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