故郷を旅立ち幾星霜
彼方の宇宙、船はぽつんと漂い続ける
果てのない過酷な旅は、続けるごとに距離を生み
過ぎた時間は、二人を無限に遠ざける
どんな思いも言葉もきっと、あなたにはもう届かない
触れた指先のぬくもりも
そよぐ髪のやわらかなにおいも
もう二度と感じられぬのなら
せめて祈りを捧げましょう
あなたがどうか、幸せでありますように
宙の果てから願いを込めて
【祈りの果て】
踊る 踊る 靴音が鳴る
たん たん たたたん
真っ赤な舞踏
ステップはかろやか
スカートはひるがえる
おわらない おわれない とまらない
鮮やかな深紅はいつしか大地へ
こぼれ したたり それでも踊る
たん たん たたたん
踊り続ける
あの子は
だあれ
【足音】
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見えてきた夏のカウントダウン
やだやだやだ
終わりたくない
遊び足りない
休み足りない
かき氷、スイカ、風鈴、扇風機、海、ひまわり
お別れするにはまだ早い
遊んで、はしゃいで、日が暮れて
思い出を肌に焼き付けて
満ち足りた気持ちで眠りにつく
夢のような日々もあと少し
どうかこのまま覚めないで
瞼の裏に、永遠の夏を
【終わらない夏】
夏がこんなにも鮮やかなのはどうしてだろう。
赤、りんご飴。
君と歩いた夏祭り。
オレンジ、暮れる夕日。
帰りたくなくて、離れたくなくて。
黄色、向日葵。
見上げる高さに君は笑う。
緑、山々の稜線。
あの向こう側へ君は思いをはせて。
青、輝く海。
なによりも君が眩しいだなんて、気障なセリフがついこぼれる。
藍、君の浴衣。
あの日よりも大人びた君に見惚れた。
紫、夜を待つ空。
今、大輪の花が打ちあがる。
あの日の虹は、鮮明に――。
夏が鮮やかなのは、君が隣にいたから。
【真夏の記憶】
じりじり、じりじり。
太陽も、蝉も最近はなんだかけたたましい。
まるで人類を地上から追い出したいみたいだ。
そんなの知るか。
あたしの世界、あたしの居場所。追い出されてなんかやらないわ。
こうなりゃ徹底抗戦だ。
暑さなんかに負けやしないと、果敢に外に飛び出すけれど。
ものの数分で限界突破、我慢ならずに駆け込むコンビニ。
アイスクリームを手に取って、勝利を確信第二ラウンド。
大きく口をあけて一口。
ひんやりと至福。とろけるのは一瞬。
夏の熱気はあっという間にアイスを溶かしていく。
ぽたぽたこぼれる、ああ、待って!
これはあたしのアイスクリーム、アスファルトなんかにあげやしない。
夏とあたしの一騎打ち。
負けられない戦いは、秋が来るまで。
【こぼれたアイスクリーム】