じりじり、じりじり。
太陽も、蝉も最近はなんだかけたたましい。
まるで人類を地上から追い出したいみたいだ。
そんなの知るか。
あたしの世界、あたしの居場所。追い出されてなんかやらないわ。
こうなりゃ徹底抗戦だ。
暑さなんかに負けやしないと、果敢に外に飛び出すけれど。
ものの数分で限界突破、我慢ならずに駆け込むコンビニ。
アイスクリームを手に取って、勝利を確信第二ラウンド。
大きく口をあけて一口。
ひんやりと至福。とろけるのは一瞬。
夏の熱気はあっという間にアイスを溶かしていく。
ぽたぽたこぼれる、ああ、待って!
これはあたしのアイスクリーム、アスファルトなんかにあげやしない。
夏とあたしの一騎打ち。
負けられない戦いは、秋が来るまで。
【こぼれたアイスクリーム】
ぐるぐるぐるぐる
ここはどこ
ぐるぐるぐるぐる
行先知れず
方角を見失ってからもうずっと迷子だ
あれもこれも輝いて
あれもこれも私を手招く
興味を惹かれて一口つまんで
うーん
心はなかなか震えない
ぐるぐるぐるぐるめぐる果て
いつかどこかにたどり着く?
コンパスは踊る
足跡は那由多
歩き回って彷徨って
果てなき旅はまだ続く
【心の羅針盤】
名残惜しさを言葉に込める。
無事に今日を終えれるように。
変わらず明日が始まるように。
手を振りながら、はにかみながら。
それはまるで祈りにも似て。
君と紡ぐ日々こそが、僕が生きる世界だから。
短い言葉にささやかなる願いを込めて。
今日も君と約束を結ぶ。
【またね】
その結末に惹かれていた。
満ち足りた幸福とは程遠い。痛みを伴う激しい愛にあなたは殉じた。
あなたのようになりたいの。
海に消える真白は彼女の心。
愛する人のためにすべてを擲つ純真。
あなたのようになりたいの。
大きな海に抱かれて消える。
その結末はあまりに尊く。
ねえ、アンデルセン。
これは罰かしら。
歪んだわたしは、どうしても自分を大切にしてしまうから。
逆巻く波に身を投げたって、結局最後は炎の中。鈍色の灰にしかなれやしない。
憧れはいつだって御伽噺。
あなたのように、真白に消えたい。
【泡になりたい】
一足先に夏が終わった。
必死に勝利を目指し、走り続けた二年半。
苦手な早起きにも慣れて、ぶかぶかだった制服はこんなにも小さくなって。
君の努力をわたしは見てきた。
誰もいなくなったグラウンド。
日が沈んでも、君はずっと見つめている。
焼けた目じりに残る、悔しさのあと。
未だ冷めやらぬ熱をこらえる君の代わりに、飲みかけのコーラから雫が滴った。
【ぬるい炭酸と無口な君】