この季節は憂鬱だ。
光り輝く街の景色に、寒さを浮き彫りにされるから。
曇りガラスの向こうに、私のしらない幸せがある。
それを思い知らされるから。
かじかんだ手に息を吐く。
吹き抜ける風があざ笑う。
きらきらきらきら鬱陶しい。
この季節は、憂鬱だ。
【きらめく街並み】
青白い光が君の陶器の肌を滑り落ちる
長いまつ毛に彩られた瞼があまりに美しくて
いつまでも見惚れてしまう
見上げた空に浮かぶのはあまりに綺麗な月ひとつ
抜け殻だけを残して
君はきっと向こうへ帰ってしまったのだろう
光の中に君の姿を探すけれど
焼き付いたのはまばゆさばかり
僕のことも連れて行ってくれればよかったのに
冷たい唇にそっと別れを口付けた
【君を照らす月】
故郷を旅立ち幾星霜
彼方の宇宙、船はぽつんと漂い続ける
果てのない過酷な旅は、続けるごとに距離を生み
過ぎた時間は、二人を無限に遠ざける
どんな思いも言葉もきっと、あなたにはもう届かない
触れた指先のぬくもりも
そよぐ髪のやわらかなにおいも
もう二度と感じられぬのなら
せめて祈りを捧げましょう
あなたがどうか、幸せでありますように
宙の果てから願いを込めて
【祈りの果て】
踊る 踊る 靴音が鳴る
たん たん たたたん
真っ赤な舞踏
ステップはかろやか
スカートはひるがえる
おわらない おわれない とまらない
鮮やかな深紅はいつしか大地へ
こぼれ したたり それでも踊る
たん たん たたたん
踊り続ける
あの子は
だあれ
【足音】
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見えてきた夏のカウントダウン
やだやだやだ
終わりたくない
遊び足りない
休み足りない
かき氷、スイカ、風鈴、扇風機、海、ひまわり
お別れするにはまだ早い
遊んで、はしゃいで、日が暮れて
思い出を肌に焼き付けて
満ち足りた気持ちで眠りにつく
夢のような日々もあと少し
どうかこのまま覚めないで
瞼の裏に、永遠の夏を
【終わらない夏】