8月、君に会いたい
“その後変わりありませんか?
近々遊びに来ませんか?
8月中 良ければ1週間以内にどうでしょう?”
“久しぶりー いいけど何企んでるの?笑”
あからさま過ぎたか……と、私は返信メッセージを見て笑う。
でも1日も早く、パイナップル好きの彼女に会いたい。
キッチンには二つの立派な丸ごとパイナップル。
訳あって買いすぎたけど、家族はあまり喜ばなくて、私もそこまで得意じゃなかった。
調べたら冷蔵庫で1週間、カットして冷凍で1ヶ月しかもたないらしい。
美味しいうちに早く来ませんか。
眩しくて
朝、ギラギラ発光している東の窓へと忍び寄る。
なんて殺人的な眩しさだろう。
ここは開けないでと言っているのに、私より早起きの夫がまた、うっかり開け放して行ってしまった。
怖い…日焼けが、シミそばかすが。
意を決してカーテンに飛び付くと、なぜかレールに引っ掛かって閉まらない。
まだ日焼け止めを塗っていない手に、顔に、ジュッと凶暴な陽が焼き付く。
「ギャー」
この時ばかりは無惨様にちょっと親近感がわく。
熱い鼓動
今日、皆で行ったピクニック。
彼女がずっと俺のそばを離れなかったのは、俺の熱い気持ちが届いたんじゃなくて、人より熱い俺の体温のせいなんだ。
あそこ、蚊が多かったもんな。
体温高い奴は刺されやすいって言うし、ドキドキ過呼吸だったし、蚊除けにされたんだろうな。
俺は腕を掻きながら、彼女がくれたとても良く効くという痒みどめの塗り薬を眺める。
なあ、絶対そうだよな?
タイミング
あたしの好きな時にだけ、あたしの好きなやり方で撫でて欲しいのよう!
ぷりぷり怒るお猫様に、ごめんごめんと平謝り。
虹のはじまりを探して
雨が上がって綺麗な虹が出た。
何となく詩的な気分になった俺は、ソファーで本を読んでいる彼女に声をかけた。
「ドライブに行こうか、虹の麓まで」
えー、と彼女は顔をしかめる。
「いいよ暑いし。虹の根っこなんて見飽きてるし」
「見飽きたって…」
ふざけた言い草に、俺はちょっとムッとする。
「へぇ、どこで見たって言うんだよ」
「だってうちの田舎じゃ珍しくないもん」
ほら、と見せられた画像には、田んぼの真ん中からにょっきり生えている巨大な虹が写っていて、俺は目を疑った。