「ねぇ聞いてる??君の夢を見たんだ」
起き抜けにまっすぐ見つめて突然告げられた。
「うん。それで?」
夢の中で俺がどうだったとか自分が何をしたとか事細かに説明してくれる。
その合間に俺は適当に相槌を入れるだけ。
嬉しそうに楽しそうに話すからそれを見てるだけでこっちも楽しくなる。
「ねぇ!聞いてんの!!」
何度目かの注意を受けた。
「聞いてる聞いてる。で、俺がどうしたって?」
必死で話す彼に笑い返す。
「まぁいいけどさ!」
ちょっと頬を膨らませながらまた続きに戻る。
厳しい現実世界で過ごして来た彼。
夢の中ぐらいでは幸せで居て。
(君が見た夢)
明日への希望ってなに?
そんなものとっくの昔に消え失せた。
もう前に進むのも面倒だし後ろに向くのも飽きた。
もう何も考えたくない。
もう人生のどん底だった。
何とか何とか這い上がってやっと立ってる、そんな毎日。
そんな折り彼に出逢った。
「死ぬなよ」
「大丈夫だから」
「俺が居るだろ?」
何度も何度も信じられないと言うおれに何度も何度も言い聞かせた。
もう何もかもが信じられなくなったおれの心に寄り添うようにアイツは居ていつの間にかおれの一部となった。
頼ってもいい??
弱音吐いてもいい?
全部さらけ出してもいい?
今度は拒絶されるのが怖くて前に進めない。
彼の方に進めば少しは楽に生きれるのかな?
おれは呼吸出来るのかな?
その先の微かな希望の光りに手を伸ばせないでいる。
(明日への光)
(星になる)
ごめんなさい。
場所確保であげちゃいました。
カーンカーン。
遠くで半鐘の音がする。
「おや、また火事かい?」
遊びに来ていた遊郭の外をなんとはなしに眺めてたら突然遠くから鐘の音が聞こえて来た。
「最近また火事が増えたらしいよ」
「放火も多いらしい」
近くにいた女郎らが口々に噂する。
「そういえばこの前の火事も火消しの男に入れあげたどこかの女が火をつけたらしいとか」
音がした方を見やると赤く空が染まっている。
「あんなに燃えちまったらどうにもならないねぇ」
ぽそりと呟く。
「あんたまたそんな他人事のように。こっちまで来ないように火消しに頑張ってもらうしかあるまいよ」
「しかしあれだね、さっきの…」
この時代放火は大罪だ。
「罪を犯しても好いた人に逢いたいとはどんな気持ちなのかねぇ」
逢いたくて堪らない思いの業火。
それと引き換えに彼女は何を手に入れたのだろうか。
遠くでまた鐘の音がひときわ激しく鳴り響いた。
(遠い鐘の音)
寒い寒いその日に1枚の写真が届いた。
かわいいちいさな雪だるま。
仕事で遠くに行っている恋人のところには雪が降っているらしい。
はしゃいで作ったのであろう姿が目に浮かぶ。
嬉しくて可愛くて思わずにやけてしまう。
「可愛いなぁほんっと」
誰かに自慢したくてSNSにこっそり投稿。
「友だちが送ってくれた雪だるま」
そんな文面を添えて。
俺たちが付き合ってるのは内緒なので。
でも自慢だけはさせて貰ってもいいですか?
この後、恋人からすごいクレームの連絡が届いた。
ごめんなさい。
(スノー)