【エッセイ、詩】子供のままで
人はいつの間に大人になるんだろう?
成人を迎えたあの日も
それから数十年経った今も
私はちっとも変わらないのに
今だってわからない事だらけだし
人生は今も初めてだらけのいつも手探りで
怖いことだらけ
あの日、手を引いてくれた
温かいママの手が恋しくなる
その温もりが
大丈夫だよ、心配ないって
いつも勇気づけてくれていたから
だから手を繋ごう
母よりも大きく温かい君の手
その温もりが君と私にきっと勇気をくれる
この先の見えない人生に共に明りを灯そう
【創作】モンシロチョウ
飛び立つ 君の羽は白く
あまりに美しかったから
地を這うだけの醜い僕には
もう二度と届かないものなのだとその瞬間理解した
だけど
その理解に気持ちは追い付くことはなく
僕は君の羽を毟りたい衝動に駆られ
醜い顔を更に歪めるばかり
ああ、僕が君と同じ羽で飛び立てたら…
衝動を夢に換え、目を瞑り僕はただ夢を見る
僕が夢うつつなら
きっと君は幸せになれるから
僕が居ない世界で君だけは自由でいて
【エッセイ】忘れられない、いつまでも
忘れられない記憶。
それは良い記憶ではなく、悪い記憶の方が多いんじゃなかろうか。
私はいつも決まった悪夢を見る。
学校。
授業の教科書や体操着を忘れ、友人の少ない私は他のクラスの子に借りることも出来ず、休み時間の終わりが迫る。
…ただ、これだけの夢だ。
それのどこが悪夢なんだろう?って思う人が大半だと思う。
怖いものが出てくるでもない。
ただ不安と焦り、嫌な想いが胸に残ったまま目覚める。
でも、忘れものの多い私には本当に学生時代によくあった事だった。
自分ではそこまで辛かったという記憶はないのに、私は卒業して何年経っても繰り返し、繰り返し、今になっても悪夢としてこの夢を見る。
そこで私にとっては、よっぽど辛かった記憶なのだと初めて認識した。
その夢も最近になって段々と見るペースが減っていっているのは、私が癒やされていってるからだろうか?
それとも単に時の流れに埋もれ、少しずつあの頃の感覚を忘れていっているからなのだろうか?
【創作】一年後
1年後の自分に会える。
そんな魔法の様なサービスをとある保険会社が始めたのが10年ほど前になる。
仕組みは簡単で、契約者本人の画像と身長、体重などの健康情報から始まり、アンケートからなる過去に関する情報など、ありとあらゆる精細なデータを取り込んだ上で創り上げた精巧な自分コピーの様なAIと会話することが出来るのである。
データも数を揃えるとどうやら1年程度の簡単な未来予測みたいな事もAIは出来るらしく、それらを反映した形でバーチャルアバターとしてPCの画面に表示される。
正確性はサービス開始当初こそ75%くらいと高くはない数値だったが、今は精度も90%を超えているそうだ。
このサービスにはメンタル面への悪影響も考慮し、1年に1度しかアクセス出来ない。
私はそれを自分の誕生日の日に設定している。
画面内には今と違い、バッサリと髪を切った私のアバターがいた。
「髪、切ったの?」
『うん、なんかそんな気分になって』
アバターの私はちょっと元気がなさそうにそう返事した。
…うん、さては今の彼氏と別れたな?
分かりやすい自分に苦笑する。
でも、このカットは似合ってないから、もし切る時は他のカットにしてもらおう。
…あと、彼との関係は今後要注意ね…。
このサービスを始めた保険会社はこの10年で登録者から集めた個人情報から、別のサービスも始めることにしたらしい。
AIとの会話情報も学習させて精度を更に上げた、コピーのアバターと本人が亡くなった後も話出来るサービスだ。
【エッセイ】初恋の日
初めての投稿のテーマが「初恋の日」だとは少し気恥ずかしくも思うが、折角なので思うままつらつらと書き連ねてみることにする。
思えば、私には世に言う「初恋」と呼ばれる甘酸っぱかったり、切なかったりという経験が無かったように思う。
もちろん、恋をしたことがない訳じゃない。
むしろ恋多き人間だった。
何かしらのコミュニティに参加する度、そこで1番好きな男性を選び、密かに恋することが多かった。
だけど、それは単なる「初めての恋」でしかなく、きっと「初恋」というものじゃない。
側に居る中で1番良い印象を抱いた人間を毎回対象として選んでいただけで、彼らのどこが好きだったとか、どこに恋したとかそういう当たり前のエピソードが今思えば何1つ思い出せないからだ。
おそらく私には「恋」をするのに必要な心のどこかが欠落していたんだと思う。
だから、私は恋に恋し続けたんだ。
だけど、今、私はこの歳になって恋をしている。
毎日、好きをくれる、ドキドキさせてくれる、彼に。
恐らく、私の人生で1番最後に最高な恋をさせてくれた彼に。
そしてきっとこれが私の「最初で最後の初恋」なんだろう。