彼方美雨

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【創作】一年後

1年後の自分に会える。

そんな魔法の様なサービスをとある保険会社が始めたのが10年ほど前になる。

仕組みは簡単で、契約者本人の画像と身長、体重などの健康情報から始まり、アンケートからなる過去に関する情報など、ありとあらゆる精細なデータを取り込んだ上で創り上げた精巧な自分コピーの様なAIと会話することが出来るのである。

データも数を揃えるとどうやら1年程度の簡単な未来予測みたいな事もAIは出来るらしく、それらを反映した形でバーチャルアバターとしてPCの画面に表示される。
正確性はサービス開始当初こそ75%くらいと高くはない数値だったが、今は精度も90%を超えているそうだ。

このサービスにはメンタル面への悪影響も考慮し、1年に1度しかアクセス出来ない。
私はそれを自分の誕生日の日に設定している。

画面内には今と違い、バッサリと髪を切った私のアバターがいた。

「髪、切ったの?」

『うん、なんかそんな気分になって』

アバターの私はちょっと元気がなさそうにそう返事した。
…うん、さては今の彼氏と別れたな?
分かりやすい自分に苦笑する。
でも、このカットは似合ってないから、もし切る時は他のカットにしてもらおう。
…あと、彼との関係は今後要注意ね…。


このサービスを始めた保険会社はこの10年で登録者から集めた個人情報から、別のサービスも始めることにしたらしい。
AIとの会話情報も学習させて精度を更に上げた、コピーのアバターと本人が亡くなった後も話出来るサービスだ。

5/9/2024, 3:58:20 AM