りくのいるか

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12/20/2022, 4:52:24 PM

ベルの音

ピンポーン ピンポーン

「はーい。」

ガチャ

「郵便局でーす。」

短い間だけアニメの背景画の会社で働いていた事がある。

朝は10時からで夜は7時まで

の、はずだったが……。

美術監督さんが出勤するのが午後2時である

みんな10時からの出勤ではなく、10時は新入りの私1人。

私は美術監督さんのメモどおりにお掃除をしてからお仕事をする。

いつも掃除機をかけている時に郵便屋さんが来て、たわいも無い話をして帰って行くが、

エプロンをして掃除機をかけている私を

絶対に、お手伝いさんかなんかだと思っていたのだと思う。

私の机の上のメモに

昨日描いた夕方の雲の背景がやり直しになった理由が書いてあった

「もっと可愛く描いてください。」

くぅ〜。わかる〜。可愛く無かった……。

雲でも、ちょうど可愛い形ってのがあるのだ、

ちょうどいいモコモコ具合のね、

具体的にどうとは言えないが……。

「シャンシャンシャンシャン』

ベルの音がバックに流れる洋楽の陽気なクリスマスソングが鳴り響いていた。

クリスマスシーズンの吉祥寺はキラキラしていて楽しかったな。

歩き回れたのは、昼休みだけだったけど。

イタリア料理のお店のイタリア人の従業員さんに

「あなた、毎晩見かける、今晩店の前で待ってるね。」

って言われて、帰り道変えたなぁ

デブ専だったのかなぁ……。

なんて、のんきな事が言えるのも思い出話だからであって、

実は締切が明け方の3時。

「おはようございまーす!」

ってテレビ局の人が取りに来るんだよ

挨拶が芸能界って思ったね。

それとも単に朝だったからかな?

新人だから多目に見て7時に帰してくれてたけど、

朝の3時まで仕事していたら、朝10時に出勤なんかできないよね。

山積みになった自分の分の仕事……終わるのか?と言う不安……いや、終わらせねばならぬ、絶対にだ!

社長さん兼、1番絵が上手で偉い美術監督さんも不安なのか、チェーンスモーカーになっており

さっきまで、私の頭の上にあった
社長さんのタバコの煙雲が鼻から下に下がって来た。

「く、苦しい……。」

私は昼休みにソニプラで買っておいた
小洒落たフレーバーの飴が止まらなくなって
(サーティワンのアイスの味とか変わったやつ)

口の天井がザラザラ……血の味までしてきた……。

美術監督さんはアロマやお香を焚いていたようだ

あの、濃厚なタバコの煙雲の中で香りが効いたのかは謎だった……。

社長さんの好きなノーメロディ系の即興ジャスが大音量で流れている。

普通の職場よりは格段にオシャレな職場ではある。

だが、しかし……。

不安と疲労で頭が爆発しそうで両足のふくらはぎが浮腫んでパンパンだ。

1番苦労したのが、私の絵の描き方が独特で遅かった事だ……。

それは致命傷だった。

結局、私はインフルエンザのA型とB型に同時にかかって死にかけて辞めたのだった。

そのインフルエンザを美術監督さんに移してしまって本当に申し訳無かった……。

最後に仕事した日も、いつも温厚だった社長さんの殺気も感じた。

代えが効かない仕事なのに、大事な美術監督さんを……。

『本当にすみませんでした。
今でも、よく、思い出して罪悪感で胸がチクチク痛みます。』

良いワインも、美味しいケーキも食べさせてもらったのに、

クリスマス会にオシャレなご自宅に招いていただいて、

ジョン・レノンの描いた絵も見せてもらったのに

でも、

「かわいそうに、りくのさん、もう、油絵一生描けないね。」

って、陰で言われたのは絶対に嫌だったんだ。





12/19/2022, 1:32:32 PM

寂しさ

親友のみぃちゃんと浪人時代を含めて丸4年コンビを組んでいるように一緒にいたが

かなりの大喧嘩を繰り返した。

みぃちゃんは大人しくて真面目そうな外見なのだが、

「なんか、喧嘩したくなって来た!」

と、外見と違う物騒な事を言ってきた

高校時代に、ある日、私がキレた

私は、いつもは温厚なのだが、怒ると物凄く怖いらしく

次の日、みぃちゃんは学校を休んだ

私と喧嘩したから?とは思ったが、

まさか……

自宅に帰ってみると、速達でハガキが来ていた。

学校でフンデルトワッサーと言う画家の展覧会に行った時に一緒に買った見覚えのあるものだった。

激しい感情が沸き上がるような

渦巻きの風景画のハガキだった

「あなたを傷つけてしまい……今日は学校に行けないけれど……。」

ひぃ〜っ!やっぱり私のせいだった。

……いつもは強いのに、私に本気で言い返されたら学校休んじゃうのか、

それ以来、みぃちゃんからは何を言われても許すようにした、

それほどに、みぃちゃんを失いたく無かったのだ。

元々、男子からのいじめが酷すぎて女子校に逃げた私だったが

デブスで女子にも冷笑される容姿だったので

人間関係に絶望していたところに来てくれた大事な親友だったから

ところで

みぃちゃんと言うあだ名はかわいいが、

実際のあだ名は女子プロレスラーの名前をもじったあだ名なのである。

私のあだ名は『ゲルちゃん』だった
仲良しグループのリーダー的役割の人が

昔の有人と同じあだ名を勝手につけたのである。

その人はヤンチャな高校には珍しく、ちょっとインテリの人だった

ゲルはドイツ語で『金』だそうだが、

私に金は似合わないし意味不明である。

金ちゃんのどーんといってみよう……
体重があるからドーンと地響きはしそうだったが

ヤケになって横っ飛びに欽ちゃん走りしてやりたい気持ちである。


今風に言ったら猫ちゃんの『やんのか?ステップ』みたいな動きだ

温厚そうにはしていたけれど、若い頃は血の気が多かったな、自信過剰で傲慢だった。

みぃちゃんも私も、あまりかわいいあだ名じゃなくて寂しいが、

あだ名なんてテキトーだ。

先生のあだ名に『キャベツ』や『犬』

意地悪なおばあちゃん先生は『干し首』

等々、酷いあだ名を付けて、授業中にネチネチいびられた事を陰で復讐していた。

若い頃はビシッと本音を言うのがかっこいいと思っていたが、

歳を重ねたら、本当に酷い事をしたと反省している。

これが大人になると言う事か。

……すっかり昔話おばさんになってしまって寂しい限り……。



12/18/2022, 4:15:49 PM

冬は一緒に

親友のみぃちゃんと私は

少々ヤンチャな部類の女子高の美術コースに通っており、

学校帰りに美大受験用の画塾のアトリエまで

バス代節約の為に長距離を歩いて通っていた。

もちろん、冬は物凄く辛い!生足が寒さで痺れた。

2人で学校終わりの疲労と空腹と寒さでガダガダ震えながら

自動販売機で温かい飲み物を買うのだ

私はデブらしく、何か甘い紅茶的な物とか

『あったまる子ちゃん』とか言う当時流行っていた
ちびまる子ちゃん的な名前の柑橘系とかをシャレで選んだり

毎日テキトーに楽しく選んで買っていたが

みぃちゃんはいつも『しるこドリンク』一択である。

みぃちゃんが飲む缶を見て、先生も生徒もみんな驚く

「しるこドリンク!?」

「なんだよ、いーんだもーん!」

みぃちゃんは口をネコのような形にして、手をクネクネと独特に動かし、

私をいつも大笑いさせた。

みぃちゃんは入試前日にしるこドリンクが当たり、
2本出て来て、縁起が良いと喜んでいた。

しかし、落ちてしまった。

「運をしるこドリンクに使い果たした……。」

そう言って2人で笑って一緒に浪人したのだった。

ちなみに私は何も当たっていないで普通に落ちた……。

面白い話が有るだけで、みぃちゃんズルいよ。


12/17/2022, 1:45:29 PM

とりとめもない話


私には1人親友がいる

物凄く真面目そうだが中身は変わり者だ

私は子供時代からずーっと太っており、

高校生になっても全てを絵に捧げたように

女を捨てた生活を送っていたので

見栄えも悪く不潔だった。


風呂に入る時間を削って絵を描いていたのだ

母から

「おまえ、女子高生なのに、おじさん臭い!ヤバいよ!」

と、嫌われていた。

毎晩、2時間位しか寝ずに絵を描いて勉強もした。

生意気に

ナポレオンが3時間睡眠だったから、

私の方が勝ったわ、とか思っていた。


もう友達も彼氏も要らないから

絵の才能さえ貰えれば悪魔に魂を売っても良いかなと思って

そこだけは女子高生の乙女心を発揮して

ファウストの悪魔を待っていたが

来る訳が無い。

代わりのように

その友達が来たのだった。

彼女が私に近づいて来たのは体育の時間で

私が、喘息の薬が身体に合わず、興奮して

「ブヒヒヒヒヒヒィーン!!」

と、豚のような笑い声を

体育館に高らかに響かせてしまって

顔を真っ赤にしていたら

「りくのさん、今の馬のモノマネ、凄かったですね!

ところで、美大受験するんですよね、

一緒に同じアトリエ(画塾)に行きませんか?」

と、言ってきたのだった。
(豚のモノマネって言われなくて良かった)

こんな真面目そうな人と一緒に行くのは緊張するなぁ
と、思ったのもつかの間

彼女は面と向かってめちゃくちゃ私の悪口を言ったり

時々、わざと喧嘩をふっかけて来たり、叩いて来たり

かなりの強者で

その上
描く油絵の色使いが独特に美しい天才だった。
(詳しく書くと全20巻位の話になるので自粛)

それぞれ違う美大に行き、違う人生を歩んでいるが

時々LINEが来ると時間を忘れてとりとめのない話をしてしまう。

私が手術する前もMRIの写真を見せろと要求が来た

「なるほど、こりゃあ腹に悪魔がいるわ。」

と、言われ

遅れて来た悪魔なら代わりに何か幸せな対価の契約を……あ、歳をとったから対価にならないのか…… 保険契約みたいだな……チッとくだらない空想をした。

手術後に

「前から誰か手術した人に贈ってみたかったんだよね。」

と、『切腹最中』を送ってくれた。

なんてシャレが効いたプレゼントだ!

何をされても許せるのは彼女だけだ

彼女は今年、フランスの有名な展覧会に版画で入選し

私は今、母の介護をしながら貧乏イラストレーターをしている。

凄くよく描けたと思い、ツイートしても、呪われているかのように、良いねが伸びない。

身体中痛くて、自信も無くなった。

詰んだなぁ、こんなはずじゃ無かったのになぁ……

とりとめが無くなったので

ここで……。




12/16/2022, 10:28:45 AM

風邪

凄く寒い日は気弱になっちゃう。

そう言えば

東洋医学とか色々な本を読んだり話を聞いたりして覚えた話なんだけど

風邪をひくのは

クルクル回る風の邪気が首の後ろにあるツボの

風門(ふうもん)から入るからなんだって

寒くて凍えたり 怒ったり、悲しんだり、怖がったり、がっかりしたり、疲れすぎたりで

気を弱らせると入って来ちゃうんだって

風邪って妖怪みたいだね。

荒唐無稽だって怒る人はいるかもしれないけど、

ちょっとファンタジーみたいで面白いよね

そういう考えもあるんだなぁって、お話。


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