シャイロック

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5/1/2025, 4:50:06 AM

軌跡 

 ブルーインパルスは、急降下し、花のように開いて美しい軌跡を描くはずだった。しかし、一機がそのまま地面に叩きつけられて、パイロットは殉職、客席からも12人のけが人が出た。
 もちろん、航空ショー等での展示飛行を行うまで、と言うか日常的に、パイロットたちは猛練習を重ねている。それでも何度か事故があり、休止期間の規定も出来た。訓練の帰りに、山に3機も接触して墜落したこともある。
 それだけ、展示飛行は難易度が高いのだ。たゆまぬ努力と、積み重ねた訓練の上に成り立っている。
 見る機会があったら、しっかりとその軌跡を脳裏に刻み込みたい。

No.184

4/30/2025, 3:44:14 AM

好きになれない、嫌いになれない

 私は、表面上であれば誰とでも付き合える人間なので、ふわりと付き合う分には、人の好き嫌いはあまり生じない。
 でも、第一印象でどうしても好きになれない人は一種類。たまに現れる。薄い唇の口をゆがめて話す人は、どんなに良いことを言っても信用しない。酷薄なことを考える人。
 それと、どうしても嫌いになれないのは、鍛えていないぽっちゃり系の、笑顔が良い人。
 どちらも男女問わない。
 まぁ、大人の強みか、誰とでも笑顔で話しますけどね。

No.183

4/29/2025, 8:30:48 AM

夜が明けた。

 当たり前の事だが、早く寝ると夜が長い。まして、高熱があったりすると、悶々としながらも、寝不足だから眠ってしまう。
 眠ってしまうが、身体が熱くて目が覚める。目が覚めてまた眠る。
 そんなことを繰り返して、明るくなってくる。夜が明けたのだ。
 夜が明けるというのは、やはり希望だ。太陽の光が差してくると、なんだか先が見える気がする。
 「明けない夜は無い」という言葉が私は好きだ。どんなに真っ暗な夜でも、いずれ明けるから、だから一晩を凌いで朝を待つ気になる。ずっと夜だったら、何に希望を見いだせば良いのだろうか?
 世界には、白夜が開けると極夜になる場所がある。極夜は一日中暗いのだ。その中で、住民はどんな気分なんだろう?そんなものだから慣れてしまうのだろう。私には耐えられないと思う。

No.182

4/28/2025, 12:52:06 AM

ふとした瞬間

 若い頃、いい香りに憧れて、香水をいくつか買ってみた。わずかなお給料の範囲内なので、ものすごく高いものなど買えないが、時々手首の内側につけては楽しんでいた。
 それというのも、小さい頃、すれ違ったきれいなお姉さんが、えも言われぬいい香りを残して行ったのが、とても印象的だったからだ。
 香水とは言ったが、香水は香りが強いので、オーデコロンと香水の間、オード・トワレという種類だった。同じ香りの香水で、数種類に分かれているとは、香水の売り場に足を踏み入れてみないと分からないことだった。
 香りも、つけてから時間が経つと変わっていく。トップノートというつけてすぐから30分ぐらいまでの香り。ミドルノートはその後から2時間ぐらいかな?の間の香り、ラストノートは本人の体臭と相俟って、最後の香り。
 私はミドルノートが一番落ち着く。ふとした瞬間に香る、上品で爽やかな香りが好みだ。
 ところが、妊娠出産したら、一切香りを受け付けられなくなった。どんなにナチュラルな香りでも、つわりの時はむかむかしたし、出産後は、赤ちゃんのなんとも言えないいい香りが一番で、香料は嫌だった。以来、香水はもうつけていない。あんなに好きだったのに、分からないものだ。

No.181

4/27/2025, 6:46:31 AM

どんなに離れていても

 距離になんか負けない。どんなに離れていても、愛は続くと思っていた。
 大学で知り合った人と手紙のやり取りをしていた。関東と東北、たかだか300kmの距離だったが、あの頃はLINEとかメールなど無くて、手紙のみのやり取り。一通出すと、指折り数えて3日ぐらい経つとソワソワして、結局、郵便局の管轄がうまくいかないのか、返事が届くまで2週間はかかった。その間のドキドキやソワソワは、今思い出すと心臓に悪いレベルだった。そして、返事が届いたらもっと心臓に悪かった。丁寧にハサミで切って開いて、便せんを取り出す時が、だ。
 男性にしては、美しい文字を書く人で、私は丸文字。少し肩身が狭かったが、相手の問いかけに答え、近況を綴る楽しみは、何ものにも代え難い楽しみだった。
 ある日、私は近所の人の勧めでお見合いをすることになった。断っても良いから一度会ってやってくれ、というのですることにした。断るから。と、正直に書いたのだが、それっきりプッツリ返事が来なくなった。季節の変わり目を口実に手紙を書き、何気なく、この間のお見合いは、約束通り断りました。と書いたし、さらに1ヶ月後ぐらいに「どうして返事をくれないのか?首を長くして待っているのに」とも書いてみたが返事は無かった。
 あの頃の私は、会いに行くことも出来ず、ただただ待っていたが、本当にあれっきりだった。
 今思うと、古い土地の人だったので、「見合いイコール結婚」のような、固定観念のある地域だったのか、はたまた私の文面の何かが気に入らなかったのか、とにかく今となっては分からない。確認することもなく、そのままになった。
 遠距離恋愛なんて無理だったんだ。どんなに離れていても愛は続くなんて、思い上がりだったんだ。相手の本当の意志も確認できずに終わった、私の幼い恋だった。
 
No.180

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