シャイロック

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3/6/2025, 3:27:31 AM

question

 ふと疑問が浮かんで、ハルカに聞いてみた。
「例えば、推しのコンサートがあっても遅れていくのか?」
「安室ちゃんに会うためなら、頑張って定時に行く!」
「ふぅん、実は、オレのこと、そんなに好きじゃないの?」
「何を言い出すのよ、タカシ。いつも愛してるって言ってるよね」
ハルカは、泣き出してしまった。
「ごめん、泣かないで。でも今『安室ちゃんに会うためなら』って言った。そしたらタカシに会うためなら遅れて良い、って言う理論にならないか?」
「安室ちゃんとタカシは、同じじゃないもん」
泣きながらハルカは去ってしまった。
う〜ん、オレのquestionは間違っていたか?
 オレだってハルカと別れたいワケじゃない。とりあえず、追いかけるか。
(昨日の続き)

No.128

3/5/2025, 3:45:42 AM

約束

 あら、時間の約束なんて、ただの目安よ。
3時間も遅れてきて、ハルカはうそぶく。
 彼女が沖縄出身で、沖縄ではみんなそうだと聞いたことはある。でも実際にこんなに待たされると頭にくる。
 だが、ハルカの沖縄時代は、3時間遅れても「やぁ!」「さぁ行くか!」って、待たせた方も待った方も何事もなかったように歩き始めるらしい。
 「でもさぁ、早く来れば、その分オレと過ごせる時間が多くなるんだけどな」と、やんわり言ってみたことはある。すると「タカシと会うのは楽しみだし楽しいんだけど、それとこれとは違うのよ」
 うーん、何が違うんだ?
 「オレ以外の友達を待たせて、怒られたことない?」
「あるわ、その時なんて1時間ぐらいだったのに、怒って帰っちゃった」
「だよなぁ。相手は会いたいほど、待たされたら怒るだろう?」
 ふと気づいたんだが、沖縄の人は時間を守らないのは分かるとして、目安だと言うなら、逆に1時間早く来て待ってるなんてことは無いんだな。
 次回は、10時と思ったら9時、3時と思ったら2時とハルカに言えば良いのかな。3時間のところ、2時間待つだけで済むぞ!

No.127

3/4/2025, 3:36:41 AM

ひらり

 城趾の石の上に2人並んで座ろうとした時だった。彼が、真っ白いハンカチを広げて、私の座るところにひらりと置いた。
 「いいよ、乾いてるし」
「いいから座ってよ」
「いや、悪いから」
「ナイトっぽくてカッコいいなって、1回やりたかったんだ」
「すんごく座りにくいの!分からない?」
思わす私が気色ばんだので、さすがに彼はハンカチを引っ込めた。
 ご親切にありがとう、とはいかない。まして、そこに座るのは無理。人のハンカチに自分のお尻を乗せるなんて、居心地が悪すぎて、ずっと立っていたほうがマシだ。
 ここが欧米で、彼や私が日本人じゃなかったら、ごく自然にコトが流れるのかも知れないけど、私たちじゃ無理。
 彼にハンカチひらりは、100年早いって!

No.126

3/3/2025, 1:41:45 AM

誰かしら?

 ある晴れた日のことだった。一通り家事を終えて、私は、リビングのテーブルでコーヒーを飲んでいた。晴れて気持ちのいい日は、よくこうする。
 リビングの窓がうちで1番大きく、掃き出しになっているので、高さもある。大きいとは言え、一間(180センチメートル)程度の窓だけど、庭の隅の紫陽花や、奥にあるダイダイの木が鮮やかに見える。足元にはオキザリスもある。西洋シャクナゲも時期が来ると、誇らしげに花開く。
 そんな景色を、のんびり眺めている時だった。紫陽花の植え込みの奥を、人が通って行った気がした。
 「誰かしら?」
 白昼だったからか気が大きくなり、リビングの窓を大解放して「どなたぁ?」と叫んだが、誰も出て来る気配が無く、諦めて施錠した。
 その後も何度か、その影を見た。どうも背格好から子ともじゃないかと思ったら、不気味さとか怖さは無くなった。
 お〜い、お菓子あげるよ〜!おいでよ〜!
とも言ってみたが、誰も来ない。
 そのうちに、誰でもいいと思い始めた。もしかしたら、この庭に住み着いた妖精さんかも知れない。干した洗濯物に悪さをするわけでなく、庭の草木を傷めるわけでもないから、「また来てるのね!」と、言葉に出さないが歓迎するようになった。
 心なしか、ダイダイやシャクナゲが生き生きしてきた気がする。花はまだだが、木に力が出てきたというか、良いことだね

No.125

3/2/2025, 3:58:27 AM

芽吹きの時

 高校生の時、春爛漫の日曜日に、僕は倒れた。
 自分の部屋に居たら、急に目の前が真っ白になり、何も分からなくなった。芽吹きの時は、僕みたいに倒れたり、変な人が出たり、って、よくあるらしいよ。それが、自分でもびっくりしたんだけど、目の前が真っ暗になるってよく言うけど、僕は、本当にハレーション起こしたように、目の前が真っ白だった。
 倒れたことが有る人って、沢山いるのかどうか知らないけど、真っ暗だったか真っ白だったか教えて欲しいな。
 とにかく、僕はそのまま入院し、高校3年生の大切な時期を棒に振った。でも、親の期待でプレッシャーがキツかったので、「病気だから仕方ないね」と、両親も自分も諦めることができた。
 なんだか、緩い公立高校に入ったんだけど、そこがすごく自分に合っていて、そこから開校以来、と言われる難関大学に入った。のびのびやれたんだろうな。
 芽吹きの時のアクシデントは、僕の人生に良い感じに影響してくれた。人生、分からないもんだね。

No.124

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