シャイロック

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ひらり

 城趾の石の上に2人並んで座ろうとした時だった。彼が、真っ白いハンカチを広げて、私の座るところにひらりと置いた。
 「いいよ、乾いてるし」
「いいから座ってよ」
「いや、悪いから」
「ナイトっぽくてカッコいいなって、1回やりたかったんだ」
「すんごく座りにくいの!分からない?」
思わす私が気色ばんだので、さすがに彼はハンカチを引っ込めた。
 ご親切にありがとう、とはいかない。まして、そこに座るのは無理。人のハンカチに自分のお尻を乗せるなんて、居心地が悪すぎて、ずっと立っていたほうがマシだ。
 ここが欧米で、彼や私が日本人じゃなかったら、ごく自然にコトが流れるのかも知れないけど、私たちじゃ無理。
 彼にハンカチひらりは、100年早いって!

No.126

3/4/2025, 3:36:41 AM