誰かしら?
ある晴れた日のことだった。一通り家事を終えて、私は、リビングのテーブルでコーヒーを飲んでいた。晴れて気持ちのいい日は、よくこうする。
リビングの窓がうちで1番大きく、掃き出しになっているので、高さもある。大きいとは言え、一間(180センチメートル)程度の窓だけど、庭の隅の紫陽花や、奥にあるダイダイの木が鮮やかに見える。足元にはオキザリスもある。西洋シャクナゲも時期が来ると、誇らしげに花開く。
そんな景色を、のんびり眺めている時だった。紫陽花の植え込みの奥を、人が通って行った気がした。
「誰かしら?」
白昼だったからか気が大きくなり、リビングの窓を大解放して「どなたぁ?」と叫んだが、誰も出て来る気配が無く、諦めて施錠した。
その後も何度か、その影を見た。どうも背格好から子ともじゃないかと思ったら、不気味さとか怖さは無くなった。
お〜い、お菓子あげるよ〜!おいでよ〜!
とも言ってみたが、誰も来ない。
そのうちに、誰でもいいと思い始めた。もしかしたら、この庭に住み着いた妖精さんかも知れない。干した洗濯物に悪さをするわけでなく、庭の草木を傷めるわけでもないから、「また来てるのね!」と、言葉に出さないが歓迎するようになった。
心なしか、ダイダイやシャクナゲが生き生きしてきた気がする。花はまだだが、木に力が出てきたというか、良いことだね
No.125
3/3/2025, 1:41:45 AM