シャイロック

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1/10/2025, 4:01:03 AM

星のかけら

 街なかに住んでいると、星空はあまり見られない。あちこちのプラネタリウムに行ったが、やはり本物の星空が見たい。満天の星というのを見てみたい。
 それで、個人で長野県の星空鑑賞ツアーに申し込んだ。次の次の土曜日から日曜日にかけての小旅行。楽しみで楽しみで、もう準備にかかっている。1泊なのに、持っていくものを用意したらけっこうな量になり、今度は荷物をシェイプしようとしている。
 独り者の気楽さで、時々バスツアーに行く。自分でプランをたてるのは苦手だし、旅行会社のツアーなら間違いないと、女一人で出かけていく。それが今回は星空鑑賞だ。出発日まで仕事も頑張って、心置きなく楽しんで来よう。
 ところが、出発する週の金曜日の朝、自分の身体の異変に気付いた。頭がひどく痛く、熱い、背中からバラバラになるような違和感と痛みもあった。
 這うようにタクシーに乗って、内科医院に行くとインフルエンザだった。
「あのぉ、明日旅行に行くはずだったんですが…ダメですよね」
「特効薬は出しておくけど、今日の明日は無理ですね。第一、明日じゃまだ身体が辛いはずですよ」
 はぁーーー楽しみにしていたのに。頭痛を押して旅行会社に電話する。前日ではキャンセル料をいただくことになっているが、インフルエンザならしょうがないですと、無料にしてくれた。
 ひとまず安心して、薬局で買ったOS-1を飲んで横になった。何時間眠ったか分からないが、ふと目が覚めると辺りは真っ暗だった。眠っている間に、夜になったらしい。
 あぁ今頃、出発前のウキウキに身を委ねているはずだったのに!半身起こしたものの、灯りをつける気にもならず、またバタンとベッドに倒れ込んだ。
 その時だった。目の前に銀色の光が無数に浮かんでは消える。目をつぶっているか開いているかも分からない暗さの中で、その光は綺麗だった。「星のかけら?」そう思い、貪るように光を見ようとするが、流れ星のように浮かんでは目を凝らすと消えていく。
 そのうちにまた眠ってしまったらしい。私の星空鑑賞ツアーは、それで終わった。
 

1/9/2025, 3:46:05 AM

Ring Ring…

 昔の電話はRing Ring鳴った。ジリジリンと鳴るのもあったけど、ほぼすべてが「ベルの音」だった。
 いまは多種多様で、プルルル、ピロロロはまだしも、着メロや着うたも多いから、一緒にいる人の電話が鳴っても出先のお店の電話が鳴っても、一瞬何の音か分からない。
 相手への発信だって、昔は丸いダイヤルの数字のところに指を入れて、留め具まで回しきって、次の数字を回したものだ。昭和の歌の一節に「ダイヤル回して手を止めた」っていうのがあるけど、平成生まれの子どもに「ダイヤル回すってなに?」と聞かれて驚いた。なるほど、ダイヤル式の電話が見られなくなって久しい。
 電話のやりとりの風情も無くなった。同級生に電話するにも、固定電話同士だから、親が出るかもとドキドキしたり、貰った方もお茶の間に電話があって、家族が聞き耳をたてているところで話さなければならないことも多かった。
 そもそも私のスマホは、着信音がならずバイブだけにしてある。公共交通機関に乗るので、急に鳴るのは周りに迷惑だけど、いちいち音を消したりつけたりが忘れっぽい私には無理だからだ。
 お茶の間の電話がRing Ring鳴った時代が懐かしいのは、私が年をとったからだろうか…。

1/7/2025, 11:18:34 PM

追い風 

 追い風に乗って順調に歩めれば良いのだが、追い風が強すぎて足をすくわれ、転んでうずくまるなんてこともあるから、世の中うまくいかない。ビル街の風は、いろんな意味で厳しい。
 向かい風は「なにくそ!」と踏んばって立ち向かうと、少しずつでも前に進めて、歩きおおせたら達成感がある。
 なんでもプラス思考で乗り切ってきた俺だから、追い風も向かい風も「どこ吹く風」と受け流す。風だけに?!
 考えてみたら俺の人生、追い風が吹いたことは無かった。向かい風に立ち向かって切り開いてきた。精神的なダメージは無し!あっても気が付かないふりをする。良い方向に考える。
 これからも、年を取ってしんどくなってからも、そうやって暮らしていく。それが俺だからだ。



君と一緒に

【初めて書くタイミングを外して、開けてしまった一昨日のテーマ。悔しいのでここに!】

 歩くのが好きで、1時間や2時間平気で歩ける私と夫。60を過ぎてもそうだったので、2人がボケたら、手に手を取ってどこまででも行っちゃうね。都内の自宅から散歩に出たはずが、いつまでも帰って来なくて、家族が捜査願い出したら、青森で見つかりましたとか、島根にいましたとかになるのかなぁと、みんなで笑ったこともあるほど。
 ところが、人間何があるか分からない。ある日、出勤の途中、何の前触れもなく右の腰から足までビーンと痛くなり、その場で立ち止まるほどだった。横断歩道の途中だったので、足を引きずりどうにか対岸まではたどり着いたけど、たいへんな痛みだった。以来、たくさん歩くと右足に痛みが出る。それと持病の影響で息切れがひどく、心臓もバクバクするのでちょっとした坂もしんどくなって、たくさん歩くことはできなくなった。
 加えて、夫は年のせいか耳石が動き、めまいがするようになって、よろよろ慎重に歩く。
 あーこりゃ、青森までは行けないな。と、安心したが寂しくもあり複雑だ。

1/6/2025, 2:24:17 AM

冬晴れ

 なんという冷たく清浄無垢な空気、なんという美しい青い空!こういうのを冬晴れというのだろう。
 見渡す限りの白い雪だった。ウィンタースポーツ嫌いの夫に無理やり「スキーやスノボーしたいんじゃないの。雪が見たいの」と、連れてきてもらったので、スキー場ではないのが良かった。小さな温泉場から少し登ったらこの景色だ。
 「来て良かったぁ、ありがとう」「俺も久しぶりに雪山に来たけど、きれいだなあ」夫もこの景色に満足そうだった。
 結婚30周年の記念に、どこか旅行しようと相談して、いろいろ調べてここにした。私ももう長くないかも知れない。最後の思い出になるかも知れないと、半ば強引に持っていった。
 長くないかも知れないのは事実だ。血液の病気で、貧血がどんどん進む。貧血の治療は輸血しかない。輸血をすると、身体に鉄分が溜まりすぎる。鉄分は、人間にはもちろん必要だが、多くなると腎臓に影響を与える。鉄分を排出する薬を飲む。要するに、貧血と輸血のせめぎ合い。それが崩れると今度はもっとひどい貧血になるという、ロンドみたいな病気だ。
 「来年も来たいなぁ」と、思わずつぶやく。「来たばっかりなのに、来年もって欲張りだ」「来年あるかな」「何を言ってるんだ。来年も来るんだよ」私は空を見上げた。夫もつられて上を見る。なにはともあれ、冬晴れの空と雪は綺麗だった!

1/5/2025, 5:08:40 AM

幸せとは

 幸せとは、理屈や定義が通じない、分からないもの。十人十色、百人百様の幸せがある。
 貧困に苦しんで、泥水を飲み、ドロドロしたお芋の粉で作った主食を、いや、主食のみの食事を毎日摂っていても、ニコニコ楽しそうに暮らすアフリカの奥地の民族。何万坪の敷地に、ゲストルームだけで20もあるような豪邸を構えていても、浮かない顔をしているアメリカ人。日本人でも、他の国に比べたら貧困者が少ないはずなのに、幸せを感じている人と感じない人が居る。むしろ感じない人が多いと言われている。
 要は心の持ちようなのだ。私は幸せを感じていたい。マイナスの感情は、運気をもマイナスにするらしい。だったらプラスの感情でいればいいと思う。それこそ、根拠もない考えだが、暗い気持ちよりも明るい気持ちでいたい。
 あの、コップの飲み物の話の通りだ。
コップにおいしい飲み物が半分入っていたら「もう半分しかない」と思うか「まだ半分ある」と思うかで、心の持ちようが変わる。
 私は「まだ半分も残ってる。この半分じっくり楽しもう」と思える人間だ。お金も健康も、あんまり無いけどね。

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