星のかけら
街なかに住んでいると、星空はあまり見られない。あちこちのプラネタリウムに行ったが、やはり本物の星空が見たい。満天の星というのを見てみたい。
それで、個人で長野県の星空鑑賞ツアーに申し込んだ。次の次の土曜日から日曜日にかけての小旅行。楽しみで楽しみで、もう準備にかかっている。1泊なのに、持っていくものを用意したらけっこうな量になり、今度は荷物をシェイプしようとしている。
独り者の気楽さで、時々バスツアーに行く。自分でプランをたてるのは苦手だし、旅行会社のツアーなら間違いないと、女一人で出かけていく。それが今回は星空鑑賞だ。出発日まで仕事も頑張って、心置きなく楽しんで来よう。
ところが、出発する週の金曜日の朝、自分の身体の異変に気付いた。頭がひどく痛く、熱い、背中からバラバラになるような違和感と痛みもあった。
這うようにタクシーに乗って、内科医院に行くとインフルエンザだった。
「あのぉ、明日旅行に行くはずだったんですが…ダメですよね」
「特効薬は出しておくけど、今日の明日は無理ですね。第一、明日じゃまだ身体が辛いはずですよ」
はぁーーー楽しみにしていたのに。頭痛を押して旅行会社に電話する。前日ではキャンセル料をいただくことになっているが、インフルエンザならしょうがないですと、無料にしてくれた。
ひとまず安心して、薬局で買ったOS-1を飲んで横になった。何時間眠ったか分からないが、ふと目が覚めると辺りは真っ暗だった。眠っている間に、夜になったらしい。
あぁ今頃、出発前のウキウキに身を委ねているはずだったのに!半身起こしたものの、灯りをつける気にもならず、またバタンとベッドに倒れ込んだ。
その時だった。目の前に銀色の光が無数に浮かんでは消える。目をつぶっているか開いているかも分からない暗さの中で、その光は綺麗だった。「星のかけら?」そう思い、貪るように光を見ようとするが、流れ星のように浮かんでは目を凝らすと消えていく。
そのうちにまた眠ってしまったらしい。私の星空鑑賞ツアーは、それで終わった。
1/10/2025, 4:01:03 AM