意味がないこと
どんなに素敵な出来事でも
貴方と一緒でないと意味がない
どんなに美味しいものでも
貴方と向かい合わないと意味がない
どんなに美しい希望でも
貴方と語らなければ意味がない
どんなに熱い愛の言葉でも
貴方からでなくては意味がない
そう すべてが
貴方が居なくなった今では
意味がない
あなたとわたし
あなたとわたしはおやこだから、はなれられません。どんなにたたかれても、どんなにいやなことをいわれても、おうちにいないと、ごはんがたべれないから。
このあいだ「じそう」っていうひとがうちにきましたけど、おかあさんがおいだしました。「たたいてなんかいませんよ!どならないですよ、おかあさんやさしいよね」とわたしにききます。いやいやしたらあとでおこられます。たたかれます。だからうんっていいました。「さあ、このことふたりででかけるんだからかえってください」わたしにもなにかいおうとしたのに、おいだしてしまいました。
あなたとわたしはおやこなのに、どうしてたたくのでしょう。どうしてどなるのでしょう。おやこだからなのかな。いたいのはいやです。おおきなこえもこわいです。
「じそう」さん、もういちどきてくれないかな。ほかのひとでもいいから、だれかたすけてくれないかな。
柔らかい雨
雨が降っていた。
土砂降りではなく、霧雨でもない。暖かい日なので冷たくもない。まだ降り出したばかりで、道も少し濡れている程度だ。
かばんに傘が入っているが、出してさせば、帰宅してから広げて乾かさなくてはならない。面倒なのでそのまま歩く。
「それにしてもあれは、何だったんだ?」さっき取引先の部長から言われた一言がひっかかっていた。
「君はどう思っている?」
「何について、でしょうか?」
「いや、それならいい」
何についての考えを求められたのか、まったく思い当たらない。その前の会話を辿ってみても、ただ脈絡の無い話だったと思うのだ。政治とか、経済とか、深みのある話ではなく、確か・・・銀座の小さな店の天丼が絶品で、一度食べたが忘れられない、というような話だった。何か質問の要素があったんだろうか?
もちろん、大切な取引先だから、上の空ではなく、身を入れて聞いていた。それなのに。
その後も部長は不機嫌になるでもなく、普通に商談をして辞してきた。いくら考えても分からない。
考え事をしながら歩くうちに、肩がけっこう濡れていた。軽く雨を払いながら胸元を見ると、社員証の下につけたSDGsのバッジが目についた。
「あ、これか!」思わず叫んでいた。そう言えば、部長は俺の胸元をスッと指差したような気がする。だが、天丼の話で盛り上がっていたので、その唐突さを受け入れられなかったのか。
次に会ったら、さりげなく話を振って、嫌味にならないくらいに語ってみよう。柔らかい雨が、俺の思案を手助けしてくれた形になった。傘をささなかったのは正解だったのだ。
一筋の光
子ども時代に育った家は、ボロボロの木造で、サッシなどもちろん無く、夕方になるとガタピシと雨戸を閉めた。
ある朝、雨戸の隙間から一筋の光が差し込んでいたのだが、その光に、埃が細かくたくさん見えた。キラキラしてある意味美しいが、なんだかゾッとした。
普通の家に、当たり前にある埃なのだろう。でも、光が当たったせいで、改めて見せつけられると引くものである。タレントさんが、売れて光が当たったら過去の出来事を暴かれることもある。
光が当たる、差し込むというのは、良いイメージだけど、そんなこともある。
哀愁を誘う
気がつくと、枯葉が散り敷く公園の脇の道を歩いていた。冷たい雨が降っていて、枯葉にも浸透し、足が惨めになるほど冷たかった。
なに?あれ?冗談?
いや、彼は本気だった。
別れてほしいと。
何故?5年も付き合っていて、ちょうどいい距離感でうまく言っていると思っていた。ううん、思い込んでいた。
だけど今日、別れてほしいと。
ひどい喧嘩とか浮気発覚とか、分かりやすい原因だったら、予測がつくから心の準備も出来た。でも、何も無かった・・・と思う。
同じフレーズが頭の中をグルグルしていて、他に何も考えられない。どうして?どうして?どうして?
神様お願い。
今にも彼からLINEが来て、あれは冗談だよと、スタンプの1つもつけて笑わせて下さい。お願いです。神様。
オマージュ「恋人よ」