シャイロック

Open App
11/4/2024, 2:03:43 AM

「鏡の中の自分」
ねぇ、鏡の中の自分って、一番嘘つきよね。
ドレッサーで髪を梳きながら妻が言う。
なに?朝から哲学?
ベッドで半身起こしながら僕が言う。まだ、起きがけだから声が低い。

だって、もともと鏡って反対に映るよね。その上、鏡に向かうと、無意識にキリッと口元引き締めたりしない?目をそらすと自分が見えないから、まっすぐ見つめるしね。

うーん、僕はあんまり鏡見ないなぁ。歯磨きの時や風呂のあと、洗面所の鏡は見るけど、なんにも感じてないなぁ。

男性と女性では違うのかしら。
・・・ほら、やっぱり

ん?

今ね、アホな顔してみようと思ったんだけど、どうしても出来ないのよ。

どれどれ?
僕は、ベッドから抜け出し、妻の隣から鏡を覗き込んだ。
出来るぞ
思いっきり変顔をしてみせた。  

妻は笑い転げて、
やっぱり男性と女性では違うのよ。

小首をかしげていた妻が、
そうか!
と、大きめの声をあげた。
あのね、私はあなたに、私の中で一番きれいな自分を見せたいといつも思っているから、比較的きれいに見える顔を無意識に模索してるのよ。

そうか、偉いぞ。
妻の頭を撫でながら、
でもな、鏡を見るのもいいけど、僕を見てくれよ。女優みたいに、すごくきれいじゃなくても、僕に見せてくれる君の明るい笑顔が好きなんだ。




11/2/2024, 3:40:47 PM

「眠りにつく前に」
 毎日いろんなことがあって、せんべい布団にくるまったとたんに、あーんなことやこーんなことを思い出して、毎晩走馬灯だぜ。
 俺の薄っぺらい思考経路とバカな頭じゃ、反省も向上心も無いから、だだもう思い出しては忘れる。肉体労働で体は疲れてるから、それが走馬灯のように一巡り、いや、一巡りしないうちに眠りにつくからね。
 これをジュージツしてるって言うのかなぁ。

11/2/2024, 2:15:01 AM

「永遠に」
 幸せ過ぎて怖い、という言葉があるけど、よく分かる。
自分の中でマックスの幸福感の中で思うのは、もうそれを失った時の気持ち。
 こんなにも嬉しい楽しい幸せな気持ちを味わいながら、もしもこれが消えたら?と、恐怖に打ち震える。それが同時進行する複雑な心。
 この幸せが何年続くか、何日続くか、あるいは何時間なのか。幸福感の根底には、いつか終わりを迎えるという結末が見える。
 だからこそ人は、この幸せをどうか永遠にと願う。

11/1/2024, 3:34:14 AM

「理想郷」
花がたくさん咲いている。
お日様の光が全身に当たって暖かい。
何故か僕は全裸だった。ここに誰か現れたら、警察に捕まる!とも思ったが、他の人が来ることはまったく想像できないほど、見渡す限りの緑の丘に、色とりどりの花が咲いていて、うっとりするほど気分が良かった。
僕は、ゆっくりと散策した。花を愛でて、時々聞こえる鳥の声に耳を澄ませ、ゆっくりゆっくり歩いた。
僕は、ずっと痛みに攻め苛まれていた。
だけど今はどこも痛くない。それだけでもストレスがなくて、なんて自由で、なんて気持ちが良いんだ!
これが理想郷というものなんだな。

これから何が待っているかは知らないけど、生まれてここまでで、今が一番良いから、何でも出来るような気がする。
さて川を渡ろうか。

10/31/2024, 3:29:36 AM

「懐かしいこと」
 人生80年を過ぎると、昔の細かいことは、だいたい忘れてしまっています。兄弟や友人と「あのとき、こうだったよね」という話が出て、あぁそんなこともあったな。と思う程度で、下手をすると、そんなことあったっけ?と、曖昧な返事をしてしまいます。
 そのくらいですから、いま懐かしく思うことは、たぶん非常に胸に残っていることなのでしょう。
 それがねぇ、無いです。
 嫌なことは忘れるようにしているし、実際忘れます。良いことは、少しは覚えておきたいけど忘れます。
 だんだんと、昨日のことも忘れてしまうのでしょう。
 あれ?今日のお昼ご飯、何を食べたっけ???

Next