静寂に包まれた部屋。
私1人。しじまは私をずっと見続ける。
ぐるぐる回る思考の中で何も変わらない部屋。
置いていかないで!!
悲痛の叫びとドアを閉める音がこの部屋に反響してた。
今はただ1つの静かな部屋でしかない。
別れはこんなにも虚しい。
何も残らないものだから。
あぁ、あの人よ。
波にさらわれた想いだけ。
私の気持ちはきっと
重いだけ。
結果だけが残った部屋。
あの人は綺麗な意地悪で憎らしくて、かわいいあの子を選んだ。
私は醜くて、意地っ張り。
勝てるわけないよ。
今からでも、
また元の関係に戻りたい。
あの日々に。
あなたが好き、愛してるの。
私は海が好きだった。あなたが好きだったから。
私は自分が好きだった。あなたが好きだったから。
意思がない人間だって思われてもいい。
あなただけが、あなただけが。
都合のいい関係でも、いいから。
お願い。
私の事を見て。
私に最後にキスだけでもしてほしかった。
何かあなたの証が欲しかった。
あなたとの思い出だけの部屋。
あなたはもういないのに。
別れ際に私に言ったばいばい。
永遠に忘れないからね。
ずっと、ずっとね。
私はその声だけを頼りに、あなたをどこにいても見つけ出すからね。
あなたが生きてるか、分かんないけど、私は生きてるって信じたい。
あなたが誘拐された時、私がなんも出来なくて、
見てるだけだったのに。
あなたは言葉をくれた。
ばいばい。
泣きながら、私を不安にさせないように笑顔を作って。
本当に情けなくてごめんね。
こんな母親でごめんね。
あなたが産声をあげた日をまだ鮮明に覚えてるよ。
7歳の頃からのあなたの記憶を返して欲しい。
あなたが心配。
ひどい仕打ちを受けて悲しくて、苦しくて、死にたくてたまらない思いをしていないかなって。
もうあれから3年、他の人にとってきっと何ともない3年、私にとって絶望の3年。
2人きりの部屋だったのに今では1人。
お父さんは
あなたの妊娠を告げた瞬間逃げちゃってたの。
ごめんね、ごめんね。本当に、ごめんね。
だめだ、泣いていてばかりいちゃ。
きっとあの子の方が
怖くて、怖くて、不安でいっぱいよ。
今日も私はあなたを探しに行きます。
待っててね、必ず、
あなたを見つけるから。
あなたとまた、一緒に暮らせれたら、
私はあなたの大好きな
いちごのケーキを一緒に食べたいな。
外に出ると、ドアの横に、異常に大きい荷物があった。
私、荷物なんて頼んだかしら……。
疑問に思いつつも、部屋に持ち帰り、
カッターで封を切る。
なんだか、変な匂いがしている。
ナマモノかしら……?
開けたら、そこには。
バラバラになったあなたがいた。
通り雨は
私を濡らす。
きっと私の事は見ていない。
だからそのまま進みたいとこへ進んでく。
通過点ですらない、ただの道。
新入社員でミスしてばっかの私。
自分の無力さに涙が出る。
そして目を濡らすわたしをもっと濡らす。
寒いなぁ…。
なんて思いながらわたしは、
雨に濡れた身体を乾かすために急いで
家に帰る。
秋、綺麗な紅葉。
私の誕生日。
わたしの名前にも関連してる。
でもわたしは秋が嫌い。
だって双子の姉は私の誕生日に死んだから。
家族は秋が来る度喜ぶ。
私の誕生日だって。
だけど私にとっては呪縛の季節。
いつも秋の始まりは夏が去ってないような気がする。
私の心のじめじめも去ってくれない。
姉は冗談交じりに
「私、秋に死にたいな。だって涼しいし、何より好きだし。」なんて姉が喋ってたのを思い出す。
私はお姉ちゃんにどの季節でも死んで欲しくなかったよ。
ねぇ、なんで、
なんで先に死んじゃったの?
ずっと一緒って言ったじゃん。
死ぬ時は80歳ぐらいで一緒にお墓に入ろって。
話したじゃん。嫌だよ。お姉ちゃん。置いてかないでよ。
私は誕生日が来る度、悲しくて辛くて、
いつも泣いてた。
そしたらお父さんにビンタされた。
「もう忘れなさい。過去のことだから。」
意味分かんないよ。忘れられるわけないじゃん。
私は赤くなった頬を抑えながら両親を見上げる。
あなた達は本当に人間なの?
そう思った。
ある日、また秋が来た。
私は憂鬱で誕生日だと言うのに部屋の外にすら出ないで声を殺して泣いていた。
両親の話す声が聞こえた。
「あの子、いつになったら立ち直るのかしらねぇ。」
「ははっ、あの様子じゃ、あと10年もかかるんじゃないか?」
「まあでも、あいつは病気だったししかも、もう直らなかったらしいし、ちょうど愛してる俺達に殺してもらえて、俺達のお荷物にならなくてよかったじゃないか。ほんと、親孝行ものだな。」
それもそうね。
なんて笑い混じりに喋る。
ゾッとした。こいつらは人間じゃない。
化け物だ、怪物だ。
私は悲しみより怒り、いや、殺意が湧いた。
こんなやつらの娘でいた事が恥ずかしい。
確かに姉は病気を持っていた。
治らないのも知っていた。
でも、それでもまだ希望があると信じていたのに。
しかもお荷物だなんて。
姉は道具なんかじゃない。そもそも人間自体道具として扱うのが間違っている。
そんな胸糞悪い話を聞いたあの秋。
10年後、わたしは家に灯油をまいた。
そして誕生日にあの家で、あのゴミのような人間を集めて、誕生日ケーキのロウソクを灯油をまいておいた場所に急いで行き、ロウソクを手から落とした。その時追いかけてきていたが、わたしは知らんぷりをする。
火は瞬く間に燃え広がる。
私はゴミに言う。
「お父さん、お母さん、鍵はもう全部、閉めちゃったし、鍵、壊しちゃったよ。どうする?」
ゴミは絶望している。
お姉ちゃん、見てる?
わたし、お姉ちゃんの仇をやっと取れるよ。
見ててね、お姉ちゃん。
クズから生まれてきた私も死ぬから。
次も生まれ変わったら、
お姉ちゃんになってほしいな。
煙を思いっきり吸い込んで、わたしは意識を手放した。
あなたの描く絵の窓から見える景色。
絵がそれほど上手という訳でもないはずなのに、
それはまるで世界がまたそこにあるようで、
壮大で綺麗だった。
あなたの世界は、よくこの世界に似ているようで、
結構違う。
あなたの書く文の窓から見える景色。
それは私には見えないけど、あなたには見えているのだろうか。羨ましく思って、あなたに聞いてみたい、と。
あなたの創る物にはすべて
わたしはいない。
わたしの創る物にはすべて
あなたがいるのに。
邪な願望が頭に浮かんで、
消えたくなる。
あなたにはあなたしか見えていない。
わたしはあなたしか見えていないのに。
それがあなたで、私を認識してしまったら、
それは私の好きなあなたではないから。
あなたの視界に移る窓から見える景色。
きっと僕はいない。
それでもきっと、
って期待してしまうのが僕なんだろうなぁ。
そんな事を思いながら今日も、
君を描く。
君を書く。
君を見る。