〚海の底〛
私の頭の中の話をしよう
私は思ったことを正直にすぐ言ってしまうという
人として最低な癖がある
すぐにでも直せそうなこの癖が
私から中々抜けていかなかった
それで過去に色んな人を傷つけてまわってしまった
それを見たり、聞いたりした友人達は
皆、口を添えてこう言ったのだ
「お前の頭の中が知りたいよ」とね
私はその台詞を何回も聞くので考えた
(一体自分の頭の中はどんなに無神経で荒れているんだ)と
簡単なイメージは"湖"とでも言ったほうが
想像しやすいだろうか
深い湖の底に思ったことや、
知っていることが魚のように泳いでいる
私はその言葉に触れることも手懐けることも出来ない
だが、意味ならわかる
言ってはいけないということも
でも気づけばその言葉達は水面から外へ、
つまり口の外に逃げてしまうのだ
私はその言葉をただ、一番底で見つめるしか出来ない
いっそのこと水槽に入って
全ての言葉を逃がした後に一人で泳いでいたい
私を釣り上げる、必要としてくれる人が現れてくれるかも
しれないから
彼女の好きなものを聞いた
何か似たものが買えるかもしれないからだ
彼女の好きな曲を聞いた
好きな曲ならいつも聞くだろうから
彼女の好きな色を聞いた
好きな色で似合うものがあるかもと思った
彼女の好きな人を聞いた
いないと答えられた
私は彼女の全てを知りたい、理解したい、読みたい
彼女に似合う者に
君に似合う物になりたい
「閉ざされた日記」
昔、日記と言えるほどではなかったが
文字を書く本を買ったことがある
本当は愚痴や思ったことを正直に書いて整理する
という理由で買った本だった
だが近頃は書いていない
書くことがなくなったのか
単純に書いたところでどうにもならないとわかったのか
開けてもなければその本が本当に
何か自分にとって悪いことを書く本だったのかすら
私は曖昧にしか思い出せない
開けなくなった本
閉ざされた本
私には好きな人がいる
その人は可愛らしくて、かっこよくて、
皆から好かれているという風ではないけれど
一部の人から信頼され、好かれている
そんなあの人に私は恋をした
昔からの知り合いで
あまり話もしない仲だった
私はそれも踏まえて色々と考えた
一部の人に相談したり、自分から声をかけたり
そうこうするうちに私は伝えることを決めた
付き合いたいとか、何か期待してるとかはない
ただの自己満足のために
伝えたあとにあの子は
「そう言われることないから嬉しい、ありがとう」
と言った
その時私は木枯らしのような、
肌寒く、孤独を感じる風に吹かれたようだった
"美しい"
近頃そう思ったのは彼女を見かけた時だった
何気なしに友人と歩く彼女は、
特別何かができるわけでもない
言ってしまえば他の人より劣っている
そんな彼女に私は釘付けになった
私は彼女とは細かい違いがいくつもあった
それがわかっていくたびに
私は彼女から離れていっていると日々感じていた
友人以上になりたいわけでも、
常人と見られたいわけでもない私は
それが恋心と気づくまでかなり時間がかかった
彼女とは今でも友人のままだ
美しい彼女は、
私の多々ある汚い感情を、汚い私という人間を知らない
私の願いはただひとつ
美しいあなたへ、いつまでも美しいままでいてくれ