YUYA

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6/19/2025, 1:27:58 AM

「暮らしの残響」


夕陽が、洗濯物に寄りかかる
風がカーテンをくぐり抜け
誰かの笑い声が 遠くの路地にこだまする

商店街の魚屋が 今日のおすすめを叫び
八百屋のラジオが 季節の変わり目を教えてくれる

誰かが落とした買い物メモ
公園のベンチには 時間を持て余す老夫婦
自転車のブレーキ音と 味噌汁の湯気のにおいが重なって
この街の鼓動になる

きらびやかじゃない
でも確かに、ここで誰かが生きている

それが、
「ただいま」が似合う街の姿だと思う

6/15/2025, 11:57:38 AM

《マグカップ》

 

朝の光が まだ柔らかい頃
私は 湯気をまとって
あなたの手におさまる

 

コーヒー、紅茶、ミルク
それが何であれ 私は知っている
それは 眠気を払うためじゃなく
心にひと呼吸を入れるための儀式

 

口をつけるそのたびに
言葉にならない思いが
少しずつ 冷めていく

 

割れることも 欠けることもある
それでもあなたは 捨てなかった
私は ただの器でありながら
あなたの静かな時間の一部だった

 

棚の奥にいても
ふとした日に また選ばれる
その無言の再会を
私は 待っている

6/14/2025, 6:14:52 PM

身分なき時代に、
真の高貴はどこへ消えたのか。
地位ではなく、
背中で導く者がいたならば
この国はもう少し、
優しく、強かっただろうか。

6/13/2025, 11:04:46 AM

『教えられなかった言葉たちへ』


語ろうとした、幾度も
だが口にすればするほど
本質は逃げ水のように消えていった

どうして伝わらない?
なぜ、届かない?
怒りと疲れが、喉の奥に溜まっていく

言葉はあった
けれど、それは「教える」には重すぎた
理解させるには、
あまりに深く沈んでいた

だから、筆を取った
教えることをやめて
物語に預けることにした

誰かに伝えるのではなく
誰かが自分で気づくために

語らずに語る
教えずに導く
光のような、影のような、
静かな旅を紡ぐために

この手は選んだのだ
「小説家」という
孤独で、温かい、
語りの道を

6/12/2025, 10:49:39 AM

愛は、叫びではない
誰かを奪う力でも、所有の証でもない

 

それは 
黙って背中を預けられる場所
嵐の夜に灯る ひとつの灯火
涙の意味を尋ねずに
そっと手を添える仕草

 

愛とは、
「わかるよ」と言う代わりに
わからないまま、そばにいる強さであり

 

すれ違いを繰り返しながらも
そのたびに歩み寄ろうとする、
意志の継続

 

美しい言葉で飾られた愛は
風にさらわれやすいけれど
日々の沈黙の中にある
名もなき心のやりとりこそが
真の愛を育てていく

 

愛は、証明しようとするほど脆く
与えたときより、
信じたときに深くなる

 

そして何より、
自分自身をも 否定せず抱きしめる力が
誰かを本当に愛するということの
始まりになるのだ

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