YUYA

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9/22/2024, 3:21:17 AM

**「秋恋。この声が届くまで」**



秋の風が、木々の葉を静かに揺らしながら、冷ややかな空気を運んでいた。夕日が西の空にゆっくりと沈み始め、朱色の光が街並みを染める。そんな夕暮れ時、千秋は学校の裏庭にある一本の大きな楓の木の下にいた。

楓の葉が紅く染まり始めるこの季節、千秋はいつもこの場所に足を運んでいた。それは、彼女が秘めた想いを胸に、いつかその声が届くことを夢見ているからだった。

数年前の夏、千秋は初めて彼と出会った。彼の名は湊。明るく、誰にでも優しい湊の姿に、千秋は次第に心を惹かれていった。しかし、千秋は内気で控えめな性格だったため、その想いを伝える勇気が持てなかった。いつも遠くから彼を見つめるだけの日々が続いていた。

「このままじゃ、何も変わらない…」
千秋は何度もそう自分に言い聞かせたが、言葉が喉元まで出ては消え、彼に向けた声は届かないままだった。

そして季節が秋に変わり、湊が転校することを知ったのは、まさに紅葉が深まる頃だった。千秋は、その知らせを聞いた時、何かが心の中で崩れ落ちる音を感じた。このままでは、彼がいなくなってしまう前に自分の想いを伝えることすらできない——そう思うと、彼女の心に焦りが募った。

ある日、千秋は思い切って、湊を学校の裏庭に呼び出すことを決意した。楓の木の下で、彼女は震える手で小さな手紙を握りしめていた。それは、彼に渡すための自分の気持ちを込めた言葉が詰まったものだった。

「湊くん、来てくれるかな…」
千秋は、沈みゆく夕日を見上げ、深い息を吐いた。そして、湊がいつかこの場所に来ることを願って待った。

日が完全に落ちる頃、足音が背後から聞こえてきた。振り返ると、そこには湊が立っていた。秋の冷たい風が二人の間を吹き抜ける中、千秋は心の中で言葉を繰り返した。

「湊くん、私…」

声が震えた。しかし、今まで心に抱いてきた想いが、彼女の口から零れ落ちた。

「私、湊くんが好きです…ずっと、ずっと前から…」

湊は静かにその言葉を聞き、少し驚いた顔をしながらも、優しく微笑んだ。

「千秋、ありがとう。実は…僕も、君に伝えたいことがあったんだ。」

彼はポケットから一枚の葉書を取り出し、それを彼女に渡した。そこには、転校先の住所が書かれていた。

「僕も君のことが好きだった。でも、転校することが分かって、どうしていいか分からなかったんだ。だから…もし僕がいなくなっても、この葉書に手紙を送ってくれないかな?君の声を、ずっと待ってる。」

千秋の胸に温かいものが広がった。紅葉が風に舞い、二人の間を色鮮やかに彩る。今、ようやく二人の想いが交差した瞬間だった。

秋の風は冷たくても、二人の心は温かく響き合っていた。この恋は、やがて距離を越え、手紙という声で繋がっていく。千秋はその手紙を握りしめ、心の中で誓った。

「この声が、いつまでも届くように。」

9/19/2024, 10:37:11 AM

**崩壊の中で、時に叫ぶ**

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愛した世界が、音を立てて崩れゆく。
瓦礫のように、思い出が砕け散り、
握りしめた手の中で、すべてが砂のように零れていく。
何が間違ったのか、
何を失ったのか、
答えを求めて振り返るも、
ただ、無情に流れ続ける時間の川。

「時よ、止まれ!」
心の奥で叫んでいる。
愛したすべてを、この腕の中に抱きしめたまま、
もう一度あの瞬間に戻れるなら。
けれど、時は耳を貸さず、
冷たく流れ去るだけ。

ひび割れた空の下、
愛が崩れていく様を見つめながら、
僕はただ、もがき続ける。
時を止める術もなく、
立ち尽くすこの場所で、
愛の残響が胸を締め付ける。

手を伸ばすたびに、
さらに遠ざかる愛の影。
記憶が淡く消え去る中で、
僕はただ、時に縋りつき、
「まだ終わりじゃない」と、
無力な祈りを繰り返す。

愛する世界が崩壊するその中で、
すべてが消え去る前に、
ほんの一瞬だけでいい、
時よ、止まれ。
心が壊れる前に、
時よ、止まれと。

9/18/2024, 10:50:38 AM

**夜景に咲く心の灯**


愛してしまえば
愛されてしまえば
心に優しい光が差し込む
静かに根を張るように

忘れようとしても
夜景の中で瞬く
遠くの灯火が優しく揺れて
思い出は静かに語りかける

星が見えない夜でも
街の灯が心を包む
もう届かぬ温もりでも
そっと心を照らし続ける

夜の穏やかな風に乗って
胸の奥で聞こえる声
愛はやさしさの中に生きて
心に永遠の光を灯す

9/16/2024, 8:58:29 AM

**親愛なる私へ、**



まずは、ここまで頑張ってきた自分に心からの感謝を送りたい。どんなに辛い時も、迷った時も、しっかりと前を向き続けた君がいるから、今の自分がここにいる。君が選んできたすべての選択は、決して無駄ではなかった。失敗も成功もすべてが自分を形作り、成長させる大切な一部だと信じている。

君がこれまで感じてきた不安や葛藤は、その優しさや真面目さの現れだと思う。周りに気を配り、時には自分を犠牲にしてでも他人を思いやる君の姿は、とても強く、そして美しい。だけど、忘れないでほしい。自分自身のことをもっと大切にしてもいいんだと。時には立ち止まって、自分の気持ちに耳を傾けて、休むことも必要なんだ。

これから先、また新しい挑戦が待っているかもしれない。それはもしかすると不安や心配を伴うものかもしれないけれど、今の君にはそれを乗り越えるだけの力がある。今までの経験や学びが、きっと君を支えてくれるだろう。

そして、君が目指している夢や目標は、君自身が描いてきた素晴らしい未来への道しるべ。急ぐ必要はない。一歩一歩、自分のペースで進んでいけばいい。進むべき方向は君が決め、君の手で未来をつかみ取れるから。

最後に、君はそのままで十分に素晴らしい。欠けているものなんて一つもない。ただ、時には自分の価値を自分で信じることを忘れがちだから、そんな時はこの手紙を読み返して、思い出してほしい。

これからも、君の未来が輝かしいものであることを心から信じているよ。

**愛を込めて、未来の自分より。**

9/15/2024, 3:54:59 AM

**「滅びの剣に宿る正義」**



ある時代、世界には絶対的な正義を誓った騎士がいた。その名はシリウス。彼は若き頃から誓いを立て、民を守り、悪を討つため剣を取った。その心は純粋で、何よりも正義を信じ、そのために生きてきた。だが、彼の旅路はやがて予想もしなかった闇の中に引き込まれていくことになる。

ある日、彼は奇妙な村にたどり着いた。その村は、貧しさと苦しみが支配する場所だったが、村人たちは笑顔を絶やさず、穏やかに暮らしていた。不思議に思ったシリウスは、村の背後に潜む邪悪な存在を探し出し、打ち倒そうと決意する。

村を調査するうちに、彼は気づく。この村の平和は、村長が邪悪な儀式を用いて得たものであり、その代償として罪もなき者たちが犠牲となっていた。正義の騎士として、シリウスはこの村の平和を崩し、悪を断ち切らねばならないと確信した。

だが、その行動は村全体を破滅に追いやった。村の住人は、シリウスが自分たちの平和を奪ったと憎しみ、彼を悪魔のように罵った。彼は自らの行動が正しかったと信じ続けたが、その後、悪の本質を倒そうとするたびに、周囲の無実の人々が次々と犠牲になっていった。

シリウスは苦しんだ。正義のために悪を討つはずが、彼自身が破壊者となり、犠牲を強いる存在になっていた。しかし、彼は後戻りできなかった。自らの誓いを曲げず、正義の名のもとに悪を追い続けた結果、命が燃え尽きるまで破滅的な道を歩み続けた。

やがてシリウスは「悪しき正義の騎士」として恐れられ、伝説の中では悪そのものとして語り継がれることになる。彼の心にあった正義の炎は、悪の闇と共に消え去り、誰もその純粋な信念を知ることはなかった。

シリウスの最後の言葉は、ただ一言、「正義とは何か?」だった。

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