ある友に聞いた。
来世、何になりたいのか。
少し時間を空けたあと、
私は"石"になりたいかな
何も考えなくてもいいし
生きるのって大変だから、と言った。
石も蹴られたり投げられたりで
大変だろうと思ったが、心に閉まっておいた
自分にも聞いてみた。
来世、何になりたいのか
色んな動物を挙げたあと、
ずっと地獄にいたいかな?
地獄にいれば生きることもないし
ただ苦しんでいればいいから、と応えた
幸せな家庭で自由な生活を送っているのに
なんでこんなに苦しんでいるのか。
私は理解できない。
普通と呼ばれる生活で、十分に愛されているはずなのに
私はなぜ叫んでいるのだろう
この世の辛み悲しみを、少しでも私がもらおうと
そんな綺麗事ではないけれど、
辛くないと、自分が許せなくなるから
愛を受け取ることができないから。
私はこんなにも生きたくないのだろう
【モノクロ】
人と関わるとき、
黒い液体や白い液体を注がれるような感覚がある
悪いものに当てられすぎると、
本来白いはずのものも黒くなる。
良いものばかりに触れていると
黒く染まるのが早く、戻るのが遅い。
白は居心地がいいけど、
自分が黒かった場合、悪い影響を与えてるかもしれない
そんな白と黒の感覚。
注ぐ色と自分の持つ色は違う、
いくら白い人でも誰かに黒い液体を注ぐ人もいる
逆に、黒い人でも白い液体を注ぐ人もいる。
私の周りには白を注いでくれる人ばかりだ
でも私は返せる白を持っていない。
白くいることが恩返しになるのかな。
白い液体を持つ人とばかり関わっていると
自分が黒いと思いがちだけど、
黒い場所に行ってみると、まだまだ白い自分を自覚する
やっぱり、誰もいないところが一番居心地がいい。
黒くすることもなく、黒くなることもない。
でも白に戻る訳でもない。
黒なら少量でも瞬く間に染まるが
白に戻したいなら大量の白と長い時間が必要だ。
そんな時間と大量の白はないから、
みんな黒い方へ歩みを進める。
大人になっても白い液体を注げる人はすごい。
注ぐ色と自分の色が違うストレスは凄まじいものだ。
とても苦しいものだから
私も知らない間に黒く染まっていく。
知らないところで誰かを黒く染めている。
この世界で生き抜くには白ではとても耐えられないか。
ここでは白い液体を注ぐのも逆に酷かもしれないな。
【永遠なんて、ないけれど】
行かないで
離れないで
置いてかないで
何度も叫んだ。
走っても、手を伸ばしても届かない
また行ってしまうんだ。
寂しいな。暗いな。怖いな。
今日は独りかな。
別れもあれば出会いもある。
それっていつ来るの?
ずっと一緒だよ。
それっていつまで?
犬みたいにくっついても、離れてしまうし、
猫みたいに離れてても、くっついていてくれない
永遠なんてないなんて言わないで。
僕は見た目以上に弱い人で
性格とは裏腹に寂しがり屋で、
今とは違って過去はひとりぼっち
言わなきゃ誰も気づかない。
言っても誰も信じない
本当に永遠がないなら、僕をひとりにしないで。
永遠に独りなんて、嫌だよ。
寂しいよ。
【涙の理由】
泣いている。
涙は無いがいつもと違う。
何かがあった顔。
悲しい顔。
そういうことに気づける目があるのに、
大丈夫?って聞ける勇気が無かった。
手を差し伸べても、悪化した過去しか無かった
だから気付かぬフリをした。
他の人と同じように、傍観者になりきった。
裏は見ずに表だけを見た。
私は耳が良かった。
言うなれば地獄耳だ。
悪いことばかり聞こえる。
誰かをいじめている声も、ヒソヒソと広める噂話も
一語一句漏らさず、全て。
自分が言われているかのようで苦しくなる。
注意しても気味悪がられるだけだ。
見ないことは出来るが、聞こえないフリは無理だ
かと言って耳が悪くなるのは嫌だった。
だからそんな声もかき消すような音楽に手をつけた。
声が消えて、心地の良い音楽が聞こえるのなら
とてもいい。
目も耳も両方悪くして、責任から逃げてきた。
真実から目を背けて、知らないふりをした。
最低だ。
誰かが泣いている、誰かが噂している、
それに気づく才能は、私にはない
見えない、知らない、聞こえない。
また誰かが泣いている。
悲しい顔、いつもと違う顔。
ヒソヒソ噂話。
今日も私はピアノを弾く
聞き心地の悪い、嫌な音楽だ。
逃げた自分に言い聞かせるように
「見えない、知らない、聞こえない……」
学校七不思議
『音楽室から聞こえるピアノ』
『誰も居ないはずの教室の独り言』
この話はフィクションです。
実際の人物とは関係ありません。
【パラレルワールド】
この人生は一旦やめて、違う世界へ行けたら、
どれだけいいだろうか。
もしこの時、こんな行動をしていたら、
少し違っただろうか。
パラレルワールドでも僕は独りだろうか?
そんな問いは無駄だ。どこでも同じことだ。
私が私じゃなくてもっと違う人だったら、
もし君と入れ替わることができたら、
もっと真っ当な人間になっていたかもしれない。
傷ついている人をもっと傷つけずに済んだだろう。
私はこの世で一番の悪党だ。
きっとそうだ。そうに違いない。
どんなに苦しそうな人でも
自分の利益のためならば平気で傷つけられる。
いつもの偽善は、次なる罪を少しでも軽くするため。
傷つく痛みを知らないから。忘れてしまうから。
泣いてる人は、美しい。
そんな心の持ち主は、一生地獄にいればいい。
私は生き地獄と死後の地獄、
どちらにも行かなければならない。
だからせめて、天国に行けるifを想像することくらいは
許してはくれないか。
いや、全部建前だな。
本当の痛みを知らないから
本気でそんなこと思っちゃいない。
罪を背負っているから、償いたいですとか。
苦しいけど、悪人の私はそれが最適ですとか。
人を傷つける時ほど、生き生きしてる時なんてないし、
罪を背負うことこそ宿命ってところあるし、
自分が自分のこと一番わかってない顔をして、
実は一番よく知ってる。
見て見ぬフリして、蓋してるだけ。
自分にも、偽物の自分を演じてる。
人嫌いで自分が好きでたまらないのに
そんな自分が嫌いで、人が好きなフリをする
独りが嫌な、弱い自分が嫌いだから
必死で独りじゃないって、強い自分を演じる。
演じなくてもそんな性格になりたかった。
自分じゃない誰かを大切に思いたかった。
物事に本気で取り組める心が欲しかった。
今、持っているものがどれだけ恵まれているか、
もう少し早く気づけたら、
大切な誰かを失わずに済んだのだろうか。
本当の自分の良さを生かせたのだろうか。
自分の芝生青さを自覚出来たのだろうか。
そんなパラレルワールドがあるなら
この世の私はもう少しがんばれるだろうか。
既に持っているものに手を伸ばすのを辞められるかな
隣の芝生を見続けるのを辞められるかな
自分を認められる日が来るのかな。