【この場所で】
『桜が綺麗ですね。』
この場所でまた会いましょう という意味らしい
返し方は忘れてしまったけれど。
そんな綺麗な言葉を紡げるような人になりたかった
綺麗な言葉が似合う人間になりたかった。
継ぎ接ぎで中身のない、
言葉とすら言えないような叫びを並べて、
もうどうしようもないことを嘆く
見るに堪えない醜い人間だ。
"桜が綺麗ですね"なんて言われていたとしても
きっと私は覚えていないんだろうな。
似合わないのも当然か。
大人になったら__
そんな約束をどこかしたような。
何をするかという肝心な部分はあまり覚えがない
その子に、髪を伸ばしてって言われていた気がする
ずっとずっと伸ばしてて、背中が隠れるくらいまで。
最近バッサリ切ってしまった。
髪を切ってみると色々と楽で、結構気に入った
なんで今まで伸ばしていたんだろう。
ずっと切りたいとは思っていたんだよな。
話が逸れてしまったな。
私が髪を少し切るだけで怒っていたっけ
なんでなのか教えてくれた記憶はある。
服や髪に無頓着だった頃の私だから、
そんな特に印象に残らなかったのだろうか。
確かその子が"桜が綺麗ですね"って言っていた
綺麗な言葉が似合うひとだった。
大人っていつからなのかはよく分からないし、
どこで会うかも忘れてしまったけれど、
多分会っては行けない人だ。
なんでなのかは分からない。
全部、覚えがない。
でもほんとに忘れたことにするのはどこか寂しい
…わかっているんだ。本当は。
後悔してもどうしようもないことも
頭ではわかってるんだよ。
あの子も、あの言葉も、あの場所も。
覚えていないことにしたくて、
もう思い出したくなくて、
でも本当になかったことにするなんて、
消え去ることなんてできないよ。
私はあの子の象徴とも言える髪を切ってしまった。
どこかスッキリしたのも、そのせいだろう。
あの夏から少しずつ前へ進んでいる
きっとそうに違いない。
またひとつ、あの子の名残が消えてしまった。
悲しいような、嬉しいような、
髪を切った後の私なら私だって気付かれずに
貴女に会えるだろうか。
『桜、綺麗でしたね。』
【時計の針】
ピアノが好きだ。
行き詰まった時は椅子に座って、考える。
なんの曲も弾かずに。
ただそれだけで、心が落ち着くんだ。
心がざわつく時は、好きなように奏でる。
その時の感情をのせて、誰も聞くことのない
詩のないメロディーを。
そうしていると、ほんの少しだけスッキリするんだ。
私はよく「Summer」という曲を弾く。
今は冬だが、そんなものは関係ない。
ただ好きなだけなのか、弾きやすいだけなのか
それとも、夏に何かがあったのか
どんな理由にしても、
取り残されている感覚がする。
私はあの夏から時間が止まっているのかもしれない。
身体は前へ進んでいるのに
心だけは変わっていないみたいだ。
ずっと後悔してて、
どうにか取り戻そうにも、
取り返しのつかないほどの時間が経ってしまった。
もう過去は変えられないのに、
振り切って前に進むしかないのに、
過去を振り返ることをやめられない。
私が曲を弾くのは、あなたに聴いて欲しいんだろうな
願わくば、歌って欲しかった。
だから私は、詩のないメロディーを永遠と奏でるんだ。
座っていると、秒針の音が聞こえてくる。
今聞きたいのは無音の音なのに、
うるさいな。
私は壊れた時計しか持っていないから
誰かの音でしか、時間が進むことを感じられない。
本当に時間が止まってしまえば楽になれるのかな。
そうしたら大好きなピアノで、
苦しいことを思い出さずに済むかな。
【こんな夢を見た】
ずっと、お守りとしてつけていたキーホルダー。
何も気にせずつけていたけど、
あの子から貰ったものなんだよな。他にもたくさん。
もう思い出したくない。
捨ててしまおうかな。
そんなことを考えている時、
ある日の夢を思い出した。
いつものように学校にいて、
休み時間に友達と話していたんだ。
その友達が急に、
「あの子とは仲直りはしたの?」って言い出した。
何を言っているのか分からなかった。
今はあの子とは別の学校だし、
友達が私とあの子との出来事を知るわけが無い。
でも私は普通の質問に答えるみたいに、
「まだしてないんだ。あとで謝りにいくよ」と言った。
そう言ってすぐ画面が切り替わって、
あの子が目の前にいた。
逃げ出したくて仕方がないが、身体が動かない。
目を逸らすことも、瞬きさえも許されなかった。
あの子は黙って、じっと私を見ていた。
怖くて怖くて、とても夢だとは思えないほどだ。
しばらくして、口を開いた。
「今までごめん。」
私は頭を下げた。
色々謝りたいことがあったはずなのに、
いざ前にすると、それしか出てこなかった。
頭を下げたまま、時間が経ち、
不安になった私はふとあの子を見てみた。
顔を上げると私を見るなり、
仕方ないなぁ と今にも言いそうな顔をしながら、
彼女は、ニコリと笑った。
許してくれたこと、関係が戻ったこと
そんなことよりも
貴女の笑顔が見れたことが、ただただ嬉しかった。
その瞬間、夢は終わった。
もう今は関係を戻そうとか、謝りたいとか、
そんなことは一切ない。
戻ったとしても自分が辛いだけなのに、
笑顔でいてほしいと願っている。
そう思えば、あの子の 髪を伸ばして欲しい ってお願いも
今でもズルズル引きずってる。
まだ未練とかあるのかな。
せめて離れる理由くらいは話してほしかったな。
髪、切ろうかな
【降り積もる思い】
私が一番怖いもの、
それは人だ。
大体の涙は全て人から来ている。
苦しくて辛くて泣いて、
人が好きだから関わった。
でも怖いから嫌いだ。
言葉にして伝えていることと、
内心思っていることが違うのは
当たり前なのかもしれない。
少し不満そうな感じだったり、
嘘をついている雰囲気だったり、
そのちょっとしたことがわかってしまうから、
私は人が嫌いなのかもしれない。
私が変人なのは当然周りの人間は知っているだろう
それでも私を友人として、関わってくれる。
だから私は人が好きだ
そんな矛盾があるからか
私は嫌いになりきれない。
どんなに自分を突き放した人でも
その人が私に手を差し伸べてくれたことがあるなら
それだけで許す理由になる。
離れていった過去の友人たちをまだ想い続けているのは
私だからなのだろう。
通常なら去るもの追わずと
忘れることができるのかもしれない。
自分を見捨てた友人たちの背中を覚えているのは
ただ辛いだけかもしれない。
忘れた方が身のためだと誰しもが言うだろう。
でも私は一度でも自分を助けてくれた人を
私を見捨てた程度で忘れられるほど器用ではない。
一度涙を流すだけで、
恩人たちが自由になるなら私は何度でも泣こう。
きっと私は人が好きなんだ。
でも不器用だから、伝える前に離れて、
不完全燃焼で残った愛を未だに叫び続けている
まるで現世に未練のある亡霊のようだ。
過去の友人や今の友たちは
私が変人であることを許し、
そして好いてくれている
そんな性格を否定する人が
私は大嫌いなのかもしれない。
私が好いた人達が好きな物を否定されることは
何よりも恨めしいことなのだろう。
これはかの旧友が残した、私への罰だ。
きっと私は、あなたが好きだと言ってくれた私を
私自身が否定している。
そんな私が大嫌いで、
あなたが好きだった私が好きなんだ。
私も、私が好きだったあなたが好きだった。
だからずっと、過去のあなたの面影を
真似していたのかもしれない。
そういえばあなたも人嫌いだった。
そんなあなたはもう変わってしまったけれど。
こんなに思っているのに、
戻って来てほしくないのは、
変わってしまったあなたと今の私では
相容れないとどこかで思っているんだろう。
今の私と前のあなたなら、
この思いの先に行けたのでしょうか。
もう考えたくないのに、ずっと思ってしまうのは、
これも私への罰なのでしょうか。
私達兄弟は似ていない。
好きな物でいえば、
私は音楽、弟はゲーム
兄はスポーツ
似ていないからなのか、
自分に無いものを持っている兄弟を
私は尊敬している。
過去に縛り付けられている囚人の私からしたら
今が辛いはずなのに道化を演じる兄は
とても素晴らしい人柄をしている
弟は過去がどうであっても、未来へ堂々と歩く勇者だ。
私にはできない。
どちらも苦しそうで、同時に楽しそうだ。
あんなふうになれたら、
そう思いながらずっと追いかけている。
過去に問いかける。
私は成長しているだろうか。
何をやっても同じだ。意味の無いことだと。
また過去に問いかける
私は成長しているだろうか。
頑張っても報われない方がお前にはあっていると。
囚人は囚人らしく囚われていればいいか。
自分の歩む道に他人は必要ないなら
どうして世間は人と関わることを求めるのだろう。
どうして違う誰かと比べてしまうのだろうか。