【永遠なんて、ないけれど】
行かないで
離れないで
置いてかないで
何度も叫んだ。
走っても、手を伸ばしても届かない
また行ってしまうんだ。
寂しいな。暗いな。怖いな。
今日は独りかな。
別れもあれば出会いもある。
それっていつ来るの?
ずっと一緒だよ。
それっていつまで?
犬みたいにくっついても、離れてしまうし、
猫みたいに離れてても、くっついていてくれない
永遠なんてないなんて言わないで。
僕は見た目以上に弱い人で
性格とは裏腹に寂しがり屋で、
今とは違って過去はひとりぼっち
言わなきゃ誰も気づかない。
言っても誰も信じない
本当に永遠がないなら、僕をひとりにしないで。
永遠に独りなんて、嫌だよ。
寂しいよ。
【涙の理由】
泣いている。
涙は無いがいつもと違う。
何かがあった顔。
悲しい顔。
そういうことに気づける目があるのに、
大丈夫?って聞ける勇気が無かった。
手を差し伸べても、悪化した過去しか無かった
だから気付かぬフリをした。
他の人と同じように、傍観者になりきった。
裏は見ずに表だけを見た。
私は耳が良かった。
言うなれば地獄耳だ。
悪いことばかり聞こえる。
誰かをいじめている声も、ヒソヒソと広める噂話も
一語一句漏らさず、全て。
自分が言われているかのようで苦しくなる。
注意しても気味悪がられるだけだ。
見ないことは出来るが、聞こえないフリは無理だ
かと言って耳が悪くなるのは嫌だった。
だからそんな声もかき消すような音楽に手をつけた。
声が消えて、心地の良い音楽が聞こえるのなら
とてもいい。
目も耳も両方悪くして、責任から逃げてきた。
真実から目を背けて、知らないふりをした。
最低だ。
誰かが泣いている、誰かが噂している、
それに気づく才能は、私にはない
見えない、知らない、聞こえない。
また誰かが泣いている。
悲しい顔、いつもと違う顔。
ヒソヒソ噂話。
今日も私はピアノを弾く
聞き心地の悪い、嫌な音楽だ。
逃げた自分に言い聞かせるように
「見えない、知らない、聞こえない……」
学校七不思議
『音楽室から聞こえるピアノ』
『誰も居ないはずの教室の独り言』
この話はフィクションです。
実際の人物とは関係ありません。
【パラレルワールド】
この人生は一旦やめて、違う世界へ行けたら、
どれだけいいだろうか。
もしこの時、こんな行動をしていたら、
少し違っただろうか。
パラレルワールドでも僕は独りだろうか?
そんな問いは無駄だ。どこでも同じことだ。
私が私じゃなくてもっと違う人だったら、
もし君と入れ替わることができたら、
もっと真っ当な人間になっていたかもしれない。
傷ついている人をもっと傷つけずに済んだだろう。
私はこの世で一番の悪党だ。
きっとそうだ。そうに違いない。
どんなに苦しそうな人でも
自分の利益のためならば平気で傷つけられる。
いつもの偽善は、次なる罪を少しでも軽くするため。
傷つく痛みを知らないから。忘れてしまうから。
泣いてる人は、美しい。
そんな心の持ち主は、一生地獄にいればいい。
私は生き地獄と死後の地獄、
どちらにも行かなければならない。
だからせめて、天国に行けるifを想像することくらいは
許してはくれないか。
いや、全部建前だな。
本当の痛みを知らないから
本気でそんなこと思っちゃいない。
罪を背負っているから、償いたいですとか。
苦しいけど、悪人の私はそれが最適ですとか。
人を傷つける時ほど、生き生きしてる時なんてないし、
罪を背負うことこそ宿命ってところあるし、
自分が自分のこと一番わかってない顔をして、
実は一番よく知ってる。
見て見ぬフリして、蓋してるだけ。
自分にも、偽物の自分を演じてる。
人嫌いで自分が好きでたまらないのに
そんな自分が嫌いで、人が好きなフリをする
独りが嫌な、弱い自分が嫌いだから
必死で独りじゃないって、強い自分を演じる。
演じなくてもそんな性格になりたかった。
自分じゃない誰かを大切に思いたかった。
物事に本気で取り組める心が欲しかった。
今、持っているものがどれだけ恵まれているか、
もう少し早く気づけたら、
大切な誰かを失わずに済んだのだろうか。
本当の自分の良さを生かせたのだろうか。
自分の芝生青さを自覚出来たのだろうか。
そんなパラレルワールドがあるなら
この世の私はもう少しがんばれるだろうか。
既に持っているものに手を伸ばすのを辞められるかな
隣の芝生を見続けるのを辞められるかな
自分を認められる日が来るのかな。
【虹の架け橋🌈】
小さい頃、虹に触れたら願いが叶うとか
虹には端っこがあると思って
雨上がりの虹の空に
めいっぱい手を伸ばして無我夢中に走った
今でもそんな日々を思い出すくらい
まだまだ童心が残っているけれど
あの時と少し違うのは虹と聞くと少し暗い気持ちになる
虹は多様性のシンボルなんだと
みんなの色が同じ道を辿るように架けられる橋
その色に僕は入ってもいいのだろうか
心の優しい友人たちの輪に、僕は入っていいのだろうか
楽しいのに、嬉しいのに
心の片隅の少し暗いところで、
自分だけが輪の外にいるように思う。
手を伸ばしても届かない、走っても追いつけない
声をかけても聞こえない、手を振っても気付かない
まるであの頃の虹みたいで、
ありえないくらい遠くにいる。
でも触れることができたらどれだけいいだろう
しばらくすれば消えてしまうなんて
とうにわかっているけど、
望むくらいはいいじゃないか。
寂しいだけなのかもしれないけど
あの綺麗な架け橋を渡りたいと誰もが言うように
楽しそうに笑顔を浮かべる友人たちと
笑い合いたいと思うのは、わがままでしょうか
【君と見上げる月🌙】
いつも見上げる時には、
月は白くなっていて空は青く澄んでいる。
雲の一部のように、息を潜めて、
太陽の輝きを静-かに見守っている
同じように輝けない嘆きをぐっと押し殺して。
遅く日が落ちる夏も、早く日が落ちる冬も
何も気にせずに、自分のペースで
深く、黒く染まった空と、
何億年の過去の光とともに、顔を出す
朝の真っ白な姿は欠けらも無い
黄金と呼ぶのにふさわしい輝き
思わず見とれてしまう。
手を伸ばしてしまう。
太陽からもらった仮初の輝きなど、
どうせ誰も見ていないだろうと言うように、
空がさらに深くなるにつれて
輝きを増していく
黄金というのもおこがましいくらいに
瞬きも忘れて、魅入ってしまう
まるで、舞を舞っているようだ。
嗚呼、私は貴女のそういう所に惹かれたのだろうな
手を伸ばさずにはいられない
確かな実力も、少し自信の無いところも
それでも、堂々とやり切るところも
全部、狂おしいほどに大好きで、
立てなくなるほど、自分が惨めに見えるんだ。
放課後、部活も終わって誰も居ないような時間、
廊下に響くいつもの音。
まさに月の光と言える音色に、
心まで響いて伸びる旋律。
音を紡ぐ貴女は、美しかった。
普段とは違った姿に目が離せなくて
曲が終わるまで、呼吸も忘れて聴いていた。
曲が終わると、一気に現実に引き戻され、
貴女は普段の姿に戻って、椅子に腰掛ける。
夜が明けた時みたいだ。
そんな姿の貴女と、月が重なって
ちょうど月見をしているから話そうと思ったけど
恥ずかしいから心に留めておいた。
貴女との時間が少しでも長く続くように。