あまり

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3/19/2023, 3:20:05 AM

理屈を説けば
大人の顔でうなずくくせに
突然煮だって吹きこぼれしまう
自分の感情が一番不条理だ


『不条理』

3/18/2023, 1:21:25 AM

つやつやみずみずしい新玉ねぎの
白く透きとおる肌に刃をおろす
鼻から喉の奥 肺に辛さが満ちて
じわりと目がうるみだす
これくらいでは泣かないよ
大人は色々鈍感だから
切る前によく冷やす
小さなライフハックの実践
しかし世の中これが通用しないこともあるのだ
霜のおりた地面に春が雨を降らせるように
酷使され傷ついた瞳にみるみる水の膜がたまり
ぽたぽたとこぼれだす

豚バラと梅肉
ポン酢と和えて食べた
新玉は甘かった
乾いた心ともろもろによくしみた


『泣かないよ』

3/16/2023, 2:20:04 PM

今夜は風が強い
あちこちで窓や扉が軋んでいる
まるで鍵でも掛け忘れていないかと
ためしてまわっているかのよう

どうしたら僕らの不安は消え去るだろうか
良いことより嫌なことのほうが記憶に残りやすいね
同じように悪い未来のほうが想像に容易くて
いっそ石橋は叩き壊してしまおうか
あらゆる出入り口にバリケードを築こう
ありったけのお気に入りを缶詰めにして
地下のシェルターに籠もってしまおう
寂しくなったら詩や小説や日記を贈り合おう
一方通行でもいいから
そうして僕らは夜風を忘れてぐっすり眠るんだ
隕石でも降って来て
世界が滅ろぶ朝を待ちながら


『怖がり』

3/15/2023, 12:16:19 PM

黄昏に 夜が息吹く
波のよせるように
暗やみが そらを 満たし
あふれる

星がふる

いやおうなく こぼれ落ちる
いくつもの光のすじが
黒い 海へしたたかに
叩きつけられては
薄氷のきしむ 音をたてた

星がふりやむ頃
波はうすく光り
浮かびあがったなき骸を
白い砂上へいざなう
硝子色からひょうはくされていくかがやきは
砕かれ ひと匙の砂に変わる

君は 黒と白の境界を
透ける 白いドレスのすそを濡らしながら歩いている

夜ごとひろがりつづける浜辺に
まだ息のあるものをさがしている


『星が溢れる』

3/14/2023, 11:16:32 AM

うちのお婆さん
天気の良い日は
庭に椅子を置き
まるで植物になったかのように
日向ぼっこをしていた
風が心地良くてうとうと
そんなときのお婆さんの目は
ラムネ瓶の底にたまった光の色
どこか遠い街の海を見ているような
どこまでもしずかで透明な瞳
またあるときは
山の稜線にたまった夕日の色
とりどりの落ち葉が陽を照り返し踊っているような

歳を重ねればいずれ
あのような瞳をもてるのだろうか
もてたら良いと
日向ぼっこをしながら思い出している


『安らかな瞳』

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