あまり

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12/15/2024, 11:36:26 AM

雪を待つ
美しくて 煩わしい
降って欲しいような 欲しくないような
大人になると色々むつかしい
嬉しい楽しいだけではいけないのに
みんなそれぞれ心の中の子供をずっと
抱えて行かなければならないから
色々複雑になってゆくのだ

雨のように涙を隠してはくれないけれど
まるごと埋葬されるつもりで
柔らかくはない雪の上に身をよこたえて
赤灰色の空をながめた
やがて体温でとかされた雪が服に染みて
熱をうばわれた肌が痛んでも
少し楽しいような 悲しいような
美しくて 煩わしい
雪を待つ


『雪を待つ』

9/26/2024, 12:52:48 PM

秋がまぶしいね
西陽の射す街路に風が吹けば
赤や黄色 とりどりの葉が
扇をひるがえすように空を舞いながら
陽射しをあちこちへ照り返している
ツヤツヤとはしないオンコの実の優しい色と甘い香り
烏が胡桃を拾って来ては道路にほうっている
リスたちが忙しなく走りまわり
時々路上で干物になっている
お腹を膨らませた鮭たちが
ぼろぼろになりながら川を昇っている
いのちが駆け足でまわって まわって
誰もが実りを蓄えることにも
差しだすことにも余念がない
少しずつ厚着になって丸くなっていく君のシルエット
じんわりと冷えていく風がオンコ色に染めた君の頬
ひらひらとふりつもる落葉は桜と同じ美しさだ
冬が来るよ
指先から紅葉していく君の手のひらが差し出され
金色の光をひとひら照り返す
秋がまぶしいね


『秋🍁』

8/12/2024, 5:53:22 AM

海から吹く風 入道雲 ヒマワリの花
クラフトバンドを編みながら
麦わら帽子が連れてくる夏の景色を思う
ずっと憧れがあった
カントリードールの女の子がかぶっていた帽子
ウルスラがキキを訪ねた時にかぶっていた帽子

セージ ミント シナモン オレガノ
乾燥させたラベンダーといくつかのハーブ
シトラスの精油を少々
オーガンジーでつくった巾着に包んで
小さな麦わら帽子に詰めた
本物の藁で作れたら良かった

お気に入りの布をリボンにして縫い付けたら完成
窓際に吊るしてしばしながめる
少しは供養になったかな
陽炎の中に手をふる子供の影が見えた気がした


『麦わら帽子』

8/11/2024, 6:39:15 AM

聖火だの 方舟だの
私の身体をめぐりあたためている血の流れ
ふえるのか ふえないのか
私の細胞という細胞をふるわせている命

日ごとに伸びてゆく朝顔のつるに螺旋のつぼみ
畑を覆う黄金色の亡骸
硝子窓に打ちつけては無数に弾け散る雨粒

夏ごとにいくつの船が川を流ていったのか
ひとつの枝を手折っても 野山は茂り
ひとつの糸が尽きても
連綿と編まれてゆくタペストリー
えいえんに織り込まれたひとつの命

灯されたことに意味があるなら
消えることにも意味は生まれるのだ
始まりに意味などないなら
終えることにも意味などいらないのだ
燃えうつることなく風の中に消えた火の粉
神様が間引いた麦のひと粒
続くのか 続けないのか
ながいながい旅のひとつの終点


『終点』

8/6/2024, 12:48:19 PM

曇り続きの空の下
ひょろりと伸びた首の上に
真黒なかんばせをのせて
ぼうと立ちつくす
ヒマワリの群れたちが
ゆうら ゆうら と揺れている

どうか そろそろ 照っておあげよ


『太陽』

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