セルビア語でMerak(メラク)とは「日常の些細な喜びから幸せを感じること」を意味するそうです。
思えば私の日常はこのメラクで満たされている気もしています。例えば、皆さんがここに綴って下さる言葉のひとつ、私に送って下さる♡のひとつ。それは昨日と今日、明日ではまた違った顔をして訪れるものですから、毎日がSpecial daysということでお題回収でございます。つまらない文章で申し訳ない。
『Special day』
枝葉の格子窓を潜って降り立った光はどれも
角がとれて丸いかたち
スニーカーの先ですくい上げたひと粒
急な目眩にたたらを踏んで
誤魔化すように姿勢を正した
冷蔵庫を開けたときのような
陸橋の下や木陰の空気の冷たさは
何処か甘い香りがする
誰もいない所で木が揺れても
音はしないんだって
話してくれたのは誰だっけ
知らずに唇から歌がこぼれて
風が梢を鳴らしていく
神社の境内から響く風鈴の音
全てが無音になる空想
樹々のトンネルを抜ければ
削除していた蝉の声がかえってきて
現実は炎天下
笑い声を聞いた気がして
振り返れば木立が手を振る正午
『揺れる木陰』
病にかかって
何もできないことを言い訳に
心中をたくらんだ窓際の観葉植物達は
ますますたくましく覆い繁り
そうだわ
私ズボラだから強い子達ばかり集めていたわ
と
水をくみに起き上がる今日
乾き切った土が水を吸って
しゅわしゅわと音を立てる
ねえ、あと幾日まてば
願いは叶っただろうか?
しゅっ しゅっ と霧吹きを
浴びせかけながら
白昼に見た夢を思う
病の時に見る夢なんて
ロクなものではないね
『真昼の夢』
雪を待つ
美しくて 煩わしい
降って欲しいような 欲しくないような
大人になると色々むつかしい
嬉しい楽しいだけではいけないのに
みんなそれぞれ心の中の子供をずっと
抱えて行かなければならないから
色々複雑になってゆくのだ
雨のように涙を隠してはくれないけれど
まるごと埋葬されるつもりで
柔らかくはない雪の上に身をよこたえて
赤灰色の空をながめた
やがて体温でとかされた雪が服に染みて
熱をうばわれた肌が痛んでも
少し楽しいような 悲しいような
美しくて 煩わしい
雪を待つ
『雪を待つ』
秋がまぶしいね
西陽の射す街路に風が吹けば
赤や黄色 とりどりの葉が
扇をひるがえすように空を舞いながら
陽射しをあちこちへ照り返している
ツヤツヤとはしないオンコの実の優しい色と甘い香り
烏が胡桃を拾って来ては道路にほうっている
リスたちが忙しなく走りまわり
時々路上で干物になっている
お腹を膨らませた鮭たちが
ぼろぼろになりながら川を昇っている
いのちが駆け足でまわって まわって
誰もが実りを蓄えることにも
差しだすことにも余念がない
少しずつ厚着になって丸くなっていく君のシルエット
じんわりと冷えていく風がオンコ色に染めた君の頬
ひらひらとふりつもる落葉は桜と同じ美しさだ
冬が来るよ
指先から紅葉していく君の手のひらが差し出され
金色の光をひとひら照り返す
秋がまぶしいね
『秋🍁』