あまり

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枝葉の格子窓を潜って降り立った光はどれも
角がとれて丸いかたち
スニーカーの先ですくい上げたひと粒
急な目眩にたたらを踏んで
誤魔化すように姿勢を正した
冷蔵庫を開けたときのような
陸橋の下や木陰の空気の冷たさは
何処か甘い香りがする

誰もいない所で木が揺れても
音はしないんだって
話してくれたのは誰だっけ

知らずに唇から歌がこぼれて
風が梢を鳴らしていく
神社の境内から響く風鈴の音
全てが無音になる空想

樹々のトンネルを抜ければ
削除していた蝉の声がかえってきて
現実は炎天下
笑い声を聞いた気がして
振り返れば木立が手を振る正午


『揺れる木陰』

7/17/2025, 11:13:46 PM