『星明かり』
星空を一緒に見上げたあなたは
今頃どうしていますか
丘の上で大の字になって
都会では見られないほどの星の数々と
初めて見た流星群に二人ではしゃいだよね
流れ星は速すぎて
願いが間に合わなかったけれど
それも楽しかった
きっとどこかで
幸せに暮らしているのでしょうね
たまには私のことも
思い出してくれてるのかな
『影絵』
昔見た影絵劇。
“パンを踏んだ娘”を思い出した。
ある高慢な娘が、お使いの途中に森の中を歩いていると、大きな水溜まりに出くわす。
娘はわがままなのでドレスを汚したくない。なので、水溜まりを越えるために、あろうことかお土産に持っていたパンを踏台にする。
すると、娘は水溜まりの中に引きずり込まれてしまうのだ。パンを踏んだまま。
細かくは覚えていないけれど、そんなお話だったと思う。引きずり込まれていく間、ずっと「パンを踏んだ娘」と不気味に連呼する歌が流れ続ける。
ひどく怖かったのを覚えている。
今思うと、あの劇が例えばアニメだったら、そこまで怖くなかったんじゃないかと思う。影絵だったからこその恐怖、というのはあったと思う。
『物語の始まり』
物語の始まりが幸せな場面からなら、それは悲劇の始まり。不穏な予感しかしない。
ただ、結末はハッピーエンドもバッドエンドもあり得る。
物語の始まりが悲劇的な場面からなら、だいたいハッピーエンドで終わる。気がする。
それがわかっていても不幸な始まりは読んでてつらい。
わかっていても読んでしまう。
やっぱり物語が大好き。
『静かな情熱』
お題とは微妙に違うけれど、ルリマツリという花の花言葉が“密やかな情熱”というものだそう。
瑠璃色のルリ、と、マツリカ、というジャスミンの別名から来ているとのこと。
画像を見てみたら、青くてとてもかわいらしい可憐な花。今度見つけたら飾ってみたいな。
『遠くの声』
ある日、家で本を読んでいると、どこかから声が聞こえた。
「おーい」
ん?と思い部屋の中を見渡すが誰もいない。
それはそうだ。今日は両親は親戚の家に行っていて、帰りは夜になると言っていたのだから。
気のせいか。外の音だったのかな。
するとまた聞こえた。
「おーーーい」
え、なに怖い。誰かいる?どこから?
もう一度部屋を見渡して、二度見した。押入れの襖が少し開いていて、そこから、たぶん10cmくらい?のおじさんが覗いていたのだ。
おじさんだ。マジか。小さいおじさんだ。
確実に目が合ったが、ついと目をそらしてしまった。するとおじさんは苛立ったように叫んだ。
「おい!こっち見ただろ!見なかったことにするんじゃねぇ!ちょっと助けてくれよ!」
うわ、やっぱりいるんだ。
目の前にいるのにいまいち信じられない。おそるおそる押入れのおじさんに近付いた。
「わりぃな!なんかわかんねぇけど動けねぇんだよ!これちょっとどかしてくれよぉ。」
見ると、押入れの座布団におじさんの足が挟まっている。座布団を少し手で押し上げると、押入れの床に小さなささくれのようなトゲが出ていて、おじさんのズボンに引っ掛かっていた。
ズボンをトゲから外してやると、おじさんは上機嫌になってお礼を言った。顔も赤く、どういうわけなのか、ちょっと酔っぱらってるみたいだった。
「あー助かった!ありがとなぁ!」
続けて、僕が飲んでいたペットボトルの水を指差して言った。
「ついでと言っちゃなんだが、そこの水を少しわけてくれねぇか?」
図々しいおじさんだ。
とは思ったが、言われるままにペットボトルのキャップに水を少し入れ、おじさんに手渡した。
おじさんは洗面器みたいにキャップを持ち、ごくごくと水を飲み干した。
「はー、生き返ったー!本当にありがとなぁ。親切な兄ちゃん、これから良いことあるぞぉ。」
そう言って、おじさんはまだ少し酔いが残った足取りで部屋から廊下へと出ていってしまった。
呆然としていた僕は、はっと我に返り、すぐに廊下を見てみたけれど、おじさんはもうどこにもいなかった。
夢?いや、でも確かに…
振り返ると、押入れのそばにはペットボトルのキャップ。確かにおじさんがいたことを感じさせた。
あれから1ヶ月、おじさんは現れない。おじさんの言った通り良いことはあった…のかどうか、正直僕にもわからない。
あのおじさん、酔っ払ってたしな。適当なこと言っただけだったのかも。
でも…また会ってみたいな。
「兄ちゃん、またなー」
遠くでおじさんの声が聞こえた気がした。