『突然の君の訪問。』
忘れた頃にやってくる。
夢に出てきた君は
幼稚園の時から変わらず噂ばなしを振ってくる。
「〇〇らしいよ」
嬉しそうに僕のところに報告しに来る。
目を覚ました僕は
今までと違い、今見た夢を忘れるために
携帯に手を伸ばした。
インスタで君のプリクラが流れてくる。
それを眺めて、いつのまにか眠りにつく。
そして、目が覚めたら何故か泣いていた。
『向かい合わせ』
休み時間になっても僕は席を立たず
読書をしているような中学生時代だった。
君はいつも僕の前の席に座ってきては
向かい合わせに語りかけてくれて
2年間ずっと休み時間は同じように過ごした。
3年目も変わらぬ光景なんだと
どこかで思い込んでいた。
この風景が変わることはないと。
そして、君の言葉を信じて
高校生になっても大学生になってもその先も、、
ずっとずっと一緒にいるんだとそう信じていた。
どれだけ待てばまた向かい合わせに
君は語りかけてくれるのだろう。
『海へ』
中3の時に行った場所。
もう無理だと思ったらいつでも飛び込めて
人生を一瞬で棒に振れる場所。
きつかったら死のうって
1日だけ自分と向き合ってあげようって
受験期で追い詰められた僕は
携帯片手に朝から家出して
歩いて15キロ先の海へ向かった。
そんな過去も今は思い出で
大切な人にその場所と想いを共有して
今では生きてよかったって
過去の自分頑張ったなって思える
良い思い出の場所。
『さよならを言う前に』
酷いことをした。
迎え受ける言葉はさようならだと覚悟した。
だけど、あなたからの言葉は『信じるよ』だった。
その言葉が耳に届いた瞬間、
涙と後悔であふれていっぱいになった。
初めて生きる意味を痛いほどに感じた。
あなたを大切にすることができないなら
言葉通り僕に生きる価値はないだろう。
ギクシャクして喧嘩ばかりで
お互いがお互いを理解れていなかった1年半。
そしてこの先半世紀余り、
あなたのことを幸せにしようと心に決めた。
1年半越しの仲直りにまた涙がこぼれた。
『鏡』
目が綺麗。
初対面で一言目に言われるのはいつもその言葉。
鏡を見るたびに思っていた。
にんにくのように大きな鼻。
たらこのように分厚い唇。
そして、大きな目。
目が綺麗と言うのは、
他のパーツが見劣りするあまり
口先から出る相対的な形容詞だと
捻くれた考えをしていた時期があった。
だからよく高い襟の服を着て鼻まで隠していた。
ある日、君は私に聞いてきた。
「そうやってしているのが落ち着くの?」
「自分の鼻と口が好きじゃないからだよ、
目ばかり褒められて余計に気になってしまうんだ。」
私は素直に打ち明けた。
キョトンとして君は言った。
「へぇー、私は好きだけどなぁ」
それからも僕は高い襟で鼻まで隠した。
それをしながら君の言葉を思い出す。
今ではその癖をする意味が昔とは違っていた。