『鏡』
目が綺麗。
初対面で一言目に言われるのはいつもその言葉。
鏡を見るたびに思っていた。
にんにくのように大きな鼻。
たらこのように分厚い唇。
そして、大きな目。
目が綺麗と言うのは、
他のパーツが見劣りするあまり
口先から出る相対的な形容詞だと
捻くれた考えをしていた時期があった。
だからよく高い襟の服を着て鼻まで隠していた。
ある日、君は私に聞いてきた。
「そうやってしているのが落ち着くの?」
「自分の鼻と口が好きじゃないからだよ、
目ばかり褒められて余計に気になってしまうんだ。」
私は素直に打ち明けた。
キョトンとして君は言った。
「へぇー、私は好きだけどなぁ」
それからも僕は高い襟で鼻まで隠した。
それをしながら君の言葉を思い出す。
今ではその癖をする意味が昔とは違っていた。
8/18/2024, 12:07:23 PM