t「叶わぬ夢」
「あのさ何でそんな無茶な目標ばかりたてんの?」
「え?」
「いつも思うんだけどさ、絶対に達成出来ない目標ばっかり立てるよな」
「あぁ...だって簡単に叶う夢なんてつまらないだろ?」
「はぁ?」
「手を伸ばしたら届くような物に憧れないし、そのためにわざわざ動けないだろ?届かない、欲しいって思えるようなわわくわくするような物のほうが燃えるんだよな」
「ふ〜ん。それに付き合わされてるこっちの身にもなって欲しいけどな」
「悪いな!でも叶わぬ夢って言葉にすると叶えてやろう!って燃えない!?」
「...まあ、それはなんとなく」
「だろ!やっぱり持つべきものは親友だな!」
「そうだな...」
t「花の香りと共に」
てふてふてふてふ、黄色い声が華やぐ場所は強かな女性たちのころころした音色が響く。
華やかな声を散々堪能したら、落ち着いた場所へと惹かれるように移動する。そこには無邪気な桃色の声がきゃきゃと遊んでいる。風が吹くとひらひらとピンク色が揺れる。
てふてふてふてふ、囲われたこのハコの中では、どこにいっても花が咲く。風にのって花の香りと共に様々な音色が咲いては散っていく。
t「心のざわめき」
絶対なんて言葉、存在しないんだと思った。
離ればなれになった君からもらった最後の言葉をずっと心の中で抱きしめている。
親の事情で君が迎えにくる、と言った場所から離れなければいけなくなった。名残惜しくも君との思い出がたくさん詰まったこの街とはお別れしなければならない。
君との約束を守る事が出来ないのはとても悲しいけど、もしかしたら君なら、自分がどこにいても見つけてくれるんじゃないかと淡い期待がどこかにあった。
大人になって、故郷から離れてあの頃からたくさんの事が変わった。幼い頃の気持ちは今でも大切な箱の中にしまい込んでいる。君とは当たり前だけど出会えない。
君がどこで何をしているのか、そもそも自分の事を覚えているのかすらわからない。
自分の心をざわめきさせるのは、いつもしまい込んだきみへの気持ちを取り出した時だけだ。
t「君を探して」
「絶対に君を迎えに行くから待っててほしい」
夢の中で過去に交わした約束が現れる。
懐かしい。幼い頃に大好きだった君とお別れする時に交わした約束。あんな誓いを交わすくらい、過去の自分はすましてたんだろう。大人なら出来ないとわかっていても、子どもの時は出来ると思っていた。
そうだった、あの約束があったから自分は周りをみる癖がついたんだ…。
自分でどこにでも行けるようになった時に確か一度訪れた事がある。懐かしい気持ちとちょっとした期待と不安を込めて君の家の前まで行った事がある。表札を見て驚いた。けど、やっぱりという気持ちもどこかにあった。
君はそこにいなくて、君がいた家には知らない人がいた。
もう交わした約束を守る事はできない。けれど、過去の自分への小さな罪悪感がいつも君を探させる。
新しい場所に行くたびにもしかしたら…なんて奇跡を求めて君を探してる。いつかまた会えたらいいなと思って。
t「透明」
透明な液体が顔の輪郭に沿って落ちていく頃には君を忘れられているだろうか。
初めて会った桜の季節。風にのって花びらの風がなびく朝に君と出会った。
真夏の暑さがじりじりと迫る頃、自分の気持ちを自覚した。どうしようもないこの気持ちは汗と一緒に流れてしまえばいいのに…。
紅葉で彩られる秋。君と笑い合えるのもあと少し。こちらの気も知らないで君の隣で秋を楽しむ。
雪と光のコントラストを見せる冬。寒い中今年最後の挨拶をして来年の約束をする。顔が赤くてもバレないし、泣いても誤魔化せるかな。君といれるのはあともう少し。
桜の蕾が見え始めた頃。君と出会った季節は別れの季節になる。君のために何度も溢した言葉と涙はどこかに消えた。
最後は笑顔でお別れしよう。何度も吐露した気持ちは涙と共に地面に落ちた。