NoName

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12/25/2023, 6:57:53 AM

大人になって、一人暮らしを始めてからイベントが他人事になった。
24時間テレビも、ハロウィンも、クリスマスも。
子どもの頃の思い出は、遠ざかるにつれてキラキラと胸を焼く。

昔、イブの夜はプレゼントを思って眠れなかった。
今は「明日は平日か」って仕事を思って眠れない。
目を閉じると、輝きの中から私を見る幼い私がいる。
「ねえ、サンタさんはまだ?」
来ることを疑わない純真な瞳。
こんなに綺麗なものを、無くしたことにも気づけなかった。

11/8/2023, 12:38:23 PM

この世に意味のないことなんてない
と、あなたは言う
たくさんの人に囲まれて、慕われて
仕事も活躍して、お金もいっぱい稼いで
趣味もたくさんあって
あなたはいわゆる成功した人間だからそう言えるのだ、と喉で押し殺した声はカエルが潰れたような音になって消えた
意味のないことなんてたくさんある
編みかけのマフラー、描きかけの絵、固まらなかったチョコレート、渡せなかったラブレター
全部全部意味を成さなかった

だって、あなたの隣を歩んでいるのは私ではないのだから

10/19/2023, 11:37:06 AM

来世で結ばれよう、と二人で川に身を投げた
川の水は冷たかったけれど、人の仕打ちに比べれば暖かかった
守れるかも分からない約束だけが、私たちの心を暖める種火だった

そんな夢を見る
前世ならなんともロマンチックだが、あいにくとそんなことを信じられる年齢ではなかった
「せめて使えるネタならなあ」
前世の約束なんてベタ、次回作に使えない

小説を書いていたPCを立ち上げては、スリープモードになるのをぼんやりと見つめる
書きたいことがない
仕方なく立ち上がり、ネタを探しがてら散歩に出ることにする

金木犀の香りがする
近くの公園まで歩いていたが、目的を変更し、匂いの元を探すことにした
家に来た編集からの連絡に気づかないまま、ふらふらと歩き始めた

10/19/2023, 8:30:50 AM

「秋晴れ」がよくわからない
秋に空気が澄んで晴れ渡っている様子だと、Googleは教えてくれるけど、出来の悪い私にとっては理解しがたいものだった

空気が澄むって何?
晴れ渡っている日は秋以外にもあるのに、なぜ春晴れとは言わないの?

昔は親に質問を浴びせかけて困らせていた
今は同じことをGoogleにしている
問いかける相手が人から機械に変わったことが、なんだかすごく寂しかった
もしかしたら、昔の人がそんな感情的な気持ちで作った言葉かもしれないな、なんて思った
秋よ行くな。まだ一緒にいてくれってね

10/18/2023, 3:00:33 AM

大事なものは、誰かに盗られないように、誰にも見つからない場所に隠すのが私の癖だ。

初めて彼氏ができたのは中学3年の夏だった。
明日から夏休みが始まる、浮足立った雰囲気の中、一人深刻そうな顔をして告白された。
「一ヶ月も顔を見れないなんて耐えられない」
すごく苦しそうな顔をしてるのに、悩んでるのは私にとって可愛らしいことで、そのギャップに思わず笑ってしまった。

そのお付き合いは、大学進学で遠距離になった時に自然消滅した。
いや、自然消滅というより、縁を切られたという印象が強い。
その頃には本当に大好きになっていたから、受け入れられなくて何度もLINEを送った。
既読すらつかなかったトークルームを、今でも削除できないままでいる。

そんな彼の話を数年ぶりに聞いた。
「当時お付き合いされていたんですよね? お話をお聞かせ願えますか?」
呆然とした頭に、眼の前の人が言った言葉が反響する。
「先日、山中で白骨遺体が発見されました」
見つからないように大事にしまったはずなのにな。

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