NoName

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来世で結ばれよう、と二人で川に身を投げた
川の水は冷たかったけれど、人の仕打ちに比べれば暖かかった
守れるかも分からない約束だけが、私たちの心を暖める種火だった

そんな夢を見る
前世ならなんともロマンチックだが、あいにくとそんなことを信じられる年齢ではなかった
「せめて使えるネタならなあ」
前世の約束なんてベタ、次回作に使えない

小説を書いていたPCを立ち上げては、スリープモードになるのをぼんやりと見つめる
書きたいことがない
仕方なく立ち上がり、ネタを探しがてら散歩に出ることにする

金木犀の香りがする
近くの公園まで歩いていたが、目的を変更し、匂いの元を探すことにした
家に来た編集からの連絡に気づかないまま、ふらふらと歩き始めた

10/19/2023, 11:37:06 AM