それぞれの色を纏ったヒーロー。
ボクにとってヒーローは、みんなだった。
ボクにないものを持っていて、ボクができないことをやってのける姿は本当に憧れで。
妬ましくて、羨ましくて仕方なかった時もあったけど。
そのせいで喧嘩したこともあったけど、やっぱり、みんなといるのが楽しくて仕方なかった。
もちろん、ーーも、だよ?
ーーはいつだって優しくて、こんなボクの事も見捨てないでいてくれたんだから、解ると思うんだけどねぇ?
そう思うと、ボクのセカイは本当に”カラフル”だったんだなぁって、思ったんだ。
……”カラフル”、だったんだよねぇ。
今はもう、ボクには色なんて解らないんだけどさ。
カラフル
それは多分、紙一重の世界。
堕ちた先を知る者はいない。
そして、戻ることは許されない。
許されては、いるのだろう。
ただ、そこに至る道を、忘れているだけで。
それでも、紙一重であることに変わりはない。
”楽園”はいつだって地獄に変わることを、誰もが理解しながら忘れて憧れるのだから。
楽園
僕の友人は、少し、いや、かなり変わっていた。
ひょろりとした背と、細身だけれど、しなやかさに富んだ体つき。
切れ長の目は、見方によっては笑っているようで。
楽しげに弧を描いた口元は、心地いい声を紡ぎ出していた。
性格は、正直、解りにくかったっけ。
気紛れで、自由で、一度でも嫌いになったら容赦しない苛烈さもあって。
ーーーでも、何故か僕が困ることはしなかった。
からかったり、冗談を言ったりはしたけど、僕が本気で嫌がったらそれ以降はしなくて。
どんなに気が乗らない風でも、最終的には折れてくれたから、結構面倒見がいいのかもしれない。
そんな友人が、僕は大好きだったし、とても大切に思っていた。
……そんな友人が起こした、ある夜の奇跡。
いつもと変わらない、楽しげな笑みを浮かべて、夜の空に僕を誘った。
季節に似合わないヒンヤリとした手と、重さを無視した様な浮遊感。
目を見張る僕に、友人はからからと笑い声を上げた。
”風に乗って”空を飛ぶ、なんて、お話の世界にしかないはずなのに。
夢を見ているような、正直、夢だと思った事態を引き起こした友人は、悪戯が成功した子供の様に笑っていた。
風に乗って
目の前に広がった光景は、ずっと、ずっと、願っていたもので。
例えばそれが偽物だとしても、もう、どうでもよかったんだ。
口の端が、つり上がるのが解る。
あぁ、笑ってる。嬉しいんだなぁ。
そうだなぁ。嬉しいなぁ。
だって、ずっと見たかった光景が見られたから。
嬉しくて、嬉しくて、泣きながら笑った。
ずっと願っていた光景を焼き付けて、ボクはそのまま堕ちていく。
だって、ボクが一緒にいる訳にいかないからね。
その全てが”刹那”だとしても、その”刹那”こそがボクには永遠で。
でも、やっぱりそうなんだろう。
ーーが堕ちてくるまで、あと少し。
刹那
生きるために探していたのか、探すために生きていたのか。
どちらにしても、俺にはよく解らない。
突然開けた視界、なんて言うと、大袈裟かもしれない。
でも、視界=世界を広げてくれたことに変わりはない。
だから、大好きだったし、こうして話せるだけでよかった。
ーーーけど、そうも言っていられない。
だって、全てが嘘だって、作られた世界なんだって知ってしまったから。
それからは、どうしていいのか解らなくなった。
でも、あいつには絶対に知られたくなくて、必死で隠したっけ。
バレてる、とは思いたくない。でも、聞く勇気もない。
ただ、あいつが悲しい想いをしないように。後悔しないように。
全てに絶望する、なんて、それだけは絶対に避けたくて必死だった。
……あぁ、なんだ。俺にも、”生きる意味”があったんだ。
できたら、こんなことで理解したくなかったのに。
生きる意味