NoName

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5/1/2023, 1:34:48 PM

それぞれの色を纏ったヒーロー。
ボクにとってヒーローは、みんなだった。
ボクにないものを持っていて、ボクができないことをやってのける姿は本当に憧れで。
妬ましくて、羨ましくて仕方なかった時もあったけど。
そのせいで喧嘩したこともあったけど、やっぱり、みんなといるのが楽しくて仕方なかった。
もちろん、ーーも、だよ?
ーーはいつだって優しくて、こんなボクの事も見捨てないでいてくれたんだから、解ると思うんだけどねぇ?
そう思うと、ボクのセカイは本当に”カラフル”だったんだなぁって、思ったんだ。

……”カラフル”、だったんだよねぇ。

今はもう、ボクには色なんて解らないんだけどさ。


カラフル

4/30/2023, 1:25:29 PM

それは多分、紙一重の世界。
堕ちた先を知る者はいない。
そして、戻ることは許されない。
許されては、いるのだろう。
ただ、そこに至る道を、忘れているだけで。

それでも、紙一重であることに変わりはない。

”楽園”はいつだって地獄に変わることを、誰もが理解しながら忘れて憧れるのだから。



楽園

4/29/2023, 2:21:42 PM

僕の友人は、少し、いや、かなり変わっていた。

ひょろりとした背と、細身だけれど、しなやかさに富んだ体つき。
切れ長の目は、見方によっては笑っているようで。
楽しげに弧を描いた口元は、心地いい声を紡ぎ出していた。

性格は、正直、解りにくかったっけ。
気紛れで、自由で、一度でも嫌いになったら容赦しない苛烈さもあって。

ーーーでも、何故か僕が困ることはしなかった。

からかったり、冗談を言ったりはしたけど、僕が本気で嫌がったらそれ以降はしなくて。
どんなに気が乗らない風でも、最終的には折れてくれたから、結構面倒見がいいのかもしれない。

そんな友人が、僕は大好きだったし、とても大切に思っていた。

……そんな友人が起こした、ある夜の奇跡。

いつもと変わらない、楽しげな笑みを浮かべて、夜の空に僕を誘った。
季節に似合わないヒンヤリとした手と、重さを無視した様な浮遊感。
目を見張る僕に、友人はからからと笑い声を上げた。

”風に乗って”空を飛ぶ、なんて、お話の世界にしかないはずなのに。

夢を見ているような、正直、夢だと思った事態を引き起こした友人は、悪戯が成功した子供の様に笑っていた。



風に乗って

4/28/2023, 1:21:31 PM

目の前に広がった光景は、ずっと、ずっと、願っていたもので。
例えばそれが偽物だとしても、もう、どうでもよかったんだ。

口の端が、つり上がるのが解る。
あぁ、笑ってる。嬉しいんだなぁ。
そうだなぁ。嬉しいなぁ。
だって、ずっと見たかった光景が見られたから。
嬉しくて、嬉しくて、泣きながら笑った。

ずっと願っていた光景を焼き付けて、ボクはそのまま堕ちていく。
だって、ボクが一緒にいる訳にいかないからね。

その全てが”刹那”だとしても、その”刹那”こそがボクには永遠で。

でも、やっぱりそうなんだろう。

ーーが堕ちてくるまで、あと少し。



刹那

4/27/2023, 1:35:57 PM

生きるために探していたのか、探すために生きていたのか。
どちらにしても、俺にはよく解らない。

突然開けた視界、なんて言うと、大袈裟かもしれない。
でも、視界=世界を広げてくれたことに変わりはない。
だから、大好きだったし、こうして話せるだけでよかった。

ーーーけど、そうも言っていられない。

だって、全てが嘘だって、作られた世界なんだって知ってしまったから。

それからは、どうしていいのか解らなくなった。
でも、あいつには絶対に知られたくなくて、必死で隠したっけ。
バレてる、とは思いたくない。でも、聞く勇気もない。
ただ、あいつが悲しい想いをしないように。後悔しないように。
全てに絶望する、なんて、それだけは絶対に避けたくて必死だった。

……あぁ、なんだ。俺にも、”生きる意味”があったんだ。

できたら、こんなことで理解したくなかったのに。




生きる意味

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