例えば、嘘を吐くこと。
例えば、物を盗むこと。
例えば、人を傷つけること。
一般的に悪と言われることではあるけれども。
それが全てそうかと言えば、そうとも言えない。
嘘を吐くことで、救われたことがある。
物を盗むことで、取り返せたものがある。
傷つけられたお返しの場合だってある。
負の連鎖は、どこかで止めなければならない。
けれど、その為に泣き寝入りしなければならないのは違うのではないか?
”善悪”
表裏であるそれのどちらを選ぶかなんて、きっと誰にもできやしない。
善悪
狡くても、ダメダメでも、ロクでもない奴でも、願うくらい、いいよね?
遠い、遠い、昔の話。僕の一族は、どっち付かずの半端者の烙印を押された。
原因は、戦争をしていたどちらの国にもいい顔をしていたから。
そのせいで、どちらの国でも厄介者扱いされて、身を隠すようにひっそりと暮らすようになった、らしい。
伝え聞いた話じゃ当然だと思ったし、何より、その伝承が現在(いま)の僕の一族を表している。
祖先が仕出かしたことは、確かに愚かなことだった。
その結果、僕らはどちらの国でも生きることが難しくなったんだから。
一族の証を隠して生きていくのは、本当に大変だった。
僕らの一族に限らず、それぞれの一族は目に見える証がある。
簡単に言えば、一目でどの一族か解るってことで。
だから、僕らの一族は身を隠して生きるしかなかった。
どうあっても、偏見や迫害からは逃げられなかったし、僕自身諦めてもいたんだ。
だけど、それでも、願ってた。
許されることじゃないし、願うことも、本当は悪いことなのかもしれない。
でも、僕はみんなと生きていきたい。
みんなと一緒に、みんなと同じ夢を、みんなと叶えていきたいって、思ったんだ。
それを、こっそりと願った。
”流れ星に願いを”なんて、堕ちた僕には不釣り合いかもしれないけど、ね。
流れ星に願いを
どんな世界にも、どんなことにも、決まり事はあるよね~。
それを無視したり、平気で破ったりしたらどうなるか、なんて、きっと誰もが知ってることで。
ーーーでも、ボクには関係ないんだよねぇ。
決まり事は、実は穴だらけって知ってる?
だからこうなったんだし、こうなることも想定できたはずなんだよね~。
それができなかった時点で、ボクはその”ルール”から外れてるって訳。
……間違ってはいないよ?
だって、ボクには過去と今しかないんだから、ねぇ?
ルール
正直、こうなるなんて思わなかった。
ずっと、ずっと、それこそ一方的に思い込んでいた分、こんなにも穏やかな日々が来るなんて思わなかった。
ーーーいや。穏やかじゃねぇな。
「アンタは!! いい加減に自覚しろ!!」
オレの怒号にあの人はへにょりと眉を下げて、「ごめん」なんて軽く謝るんだ。
まったく、自覚がないのは本当に厄介だ。
……それでも、オレが仕出かしたことから比べたら、大したことないわけで。
すぐに忘れるとは言え、あの人も一応は神妙に謝ってくれるから。
ため息と共に仕方ないなぁ、なんて甘くなる。
あの人と出会った時は、本当、こうなるなんて思わなかった。
あの人は、オレの大切な奴を奪ったとずっと思っていたから。
それ自体が嘘で、あの人はずっと負い目を抱えていたんだと知って。
絶望したオレを、あの人はそれでも受け入れてくれた。
ーーーだから、今度は間違えない。
そう、決意した。 ……したは、したんだが。
「なぁ。この状況、なに?」
「……今度は何やらかしたんだ、アンタ」
とにかく、色々めちゃくちゃなこの人についていくのがやっとで。
まったく、穏やかにも真っ当にもほど遠い。
”今日の心模様”は、晴れのち曇り、ところによってにわか雨が降るでしょう。
そんな毎日が、実は結構気に入ってたりするんだけどね。
今日の心模様
許せないこと、許したくないことは、確かにある。
それは、きっと当事者でなければ解らないこともあると思う。
事実、俺達もそうだった。
何度も「許してやれ」と言われたことか。
ーーーそれでも、許せるはず、ないだろう?
”たとえ間違いだったとしても”、許せるはず、ないだろう?
解っているよ、その先は。
だから、こうなったんだろう? ……って、もう意味なんて、ないんだけれどね。
たとえ間違いだったとしても