きみは小さい頃から眠りにつく前に
いつもぼくを見る
予定があるとき嬉しそうな顔で
友達と喧嘩した時は怒った顔で
仕事のときはげっそりした顔で
きみは、ぼくを見ない日はなかった。
あるとき、知らない人を連れてきて、
ぼくを見て見ぬ振りをした。
それが間違いだった。
それから始まったのは、たった数年の幸せ。
そして、ぼくはきみの時を刻むものから、
きみを傷つける道具になった。
きみがうれしそうにすればぼくはきみを傷つけて
きみが泣いていれば、そのヒトは、誰が
傷つけたのだと言わんばかりに優しさで包み込む。
これが、あのヒトの罠。抜け出せない地獄。
ぼくは、知っている。あのヒトが、君のいないときは
別のヒトを連れてきていることを。
ああ、神様、どうか1度だけこのヒトを……
ゴン、と鈍い音が響く。神様が動かしてくれたのかな、
薄れゆく意識の中で、うずくまる、あのヒト達と、
仕事に行っていたはずのきみが泣いていた。
カラオケで親友と声が枯れるまで歌い続けて
変な声になって笑いあったり恋の話をしたり
俗に言う青春を送りたかった。
誰に課せられたわけでもないのに
大人から良い子に見えるように
迷惑かけないように
やりたいことにバカバカしいと蓋をして、
門限も、言われたことを馬鹿みたいに守ろうとする。
自分を正当化して、やりたいことができても
言われたことすらできないこんな自分は
やりたいことをやれる価値なんてない。
今思えばあの時私は苦しかったんだ。
苦しさから目を背けて大丈夫だと思い込んでいたんだ。
青春はあの時しか無かったのに。
同級生が輝いて見えていたのかな。
もう、覚えてもないけれど、
あの時バカにしてたのは、
本当は心の奥底で羨ましかったからなのだろう。
私を射抜くような鋭い眼差し。
なにが、あなたをそうまでさせるのか。
ああ、無駄だったのですか?
楽しい思い出も、悲しい思い出も
その女からの言葉だけを信じて
全て上書きされる程度のものだったのですか?
その女から吐き出される嘘はとどまるところを知らず
私を底へ、底へと落としていく。暗い絶望の底へ。
きっと明日もいい日になるよね!
このセリフで脳裏にオレンジ色の小動物を
浮かべるのはわたしだけではないはず。
君がいなくなって、静寂に包まれた部屋。
あれほどうるさい、鬱陶しいと思っていたけど
居なくなったら居なくなったで寂しくなる。
あんなに小さかった君が、もう社会人なんて。
私は、君をちゃんと育てあげられたかな?
周りに迷惑をかけていない?ちゃんと食べてる?
聞きたいことや言いたいことも山ほどあるけど
言わない。大切なことだけは伝えるよ。
あなたの帰る場所はここにある。
つらい、くるしい、やめたい、しにたい
なんて思ったりするだろう。
大人の世界はたくさん嫌なことがあるけど
わたしが安心できる家で待っててあげるから
安心して羽ばたきなさい。
もし飛べなくなっても、安心できるところで休んで
また羽ばたけばいいの。