きみは小さい頃から眠りにつく前に
いつもぼくを見る
予定があるとき嬉しそうな顔で
友達と喧嘩した時は怒った顔で
仕事のときはげっそりした顔で
きみは、ぼくを見ない日はなかった。
あるとき、知らない人を連れてきて、
ぼくを見て見ぬ振りをした。
それが間違いだった。
それから始まったのは、たった数年の幸せ。
そして、ぼくはきみの時を刻むものから、
きみを傷つける道具になった。
きみがうれしそうにすればぼくはきみを傷つけて
きみが泣いていれば、そのヒトは、誰が
傷つけたのだと言わんばかりに優しさで包み込む。
これが、あのヒトの罠。抜け出せない地獄。
ぼくは、知っている。あのヒトが、君のいないときは
別のヒトを連れてきていることを。
ああ、神様、どうか1度だけこのヒトを……
ゴン、と鈍い音が響く。神様が動かしてくれたのかな、
薄れゆく意識の中で、うずくまる、あのヒト達と、
仕事に行っていたはずのきみが泣いていた。
11/2/2024, 12:49:54 PM