NoName731

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きみは小さい頃から眠りにつく前に

いつもぼくを見る

予定があるとき嬉しそうな顔で

友達と喧嘩した時は怒った顔で

仕事のときはげっそりした顔で

きみは、ぼくを見ない日はなかった。


あるとき、知らない人を連れてきて、

ぼくを見て見ぬ振りをした。

それが間違いだった。

それから始まったのは、たった数年の幸せ。

そして、ぼくはきみの時を刻むものから、

きみを傷つける道具になった。

きみがうれしそうにすればぼくはきみを傷つけて

きみが泣いていれば、そのヒトは、誰が
傷つけたのだと言わんばかりに優しさで包み込む。

これが、あのヒトの罠。抜け出せない地獄。

ぼくは、知っている。あのヒトが、君のいないときは
別のヒトを連れてきていることを。

ああ、神様、どうか1度だけこのヒトを……

ゴン、と鈍い音が響く。神様が動かしてくれたのかな、

薄れゆく意識の中で、うずくまる、あのヒト達と、
仕事に行っていたはずのきみが泣いていた。

11/2/2024, 12:49:54 PM